量子テクノロジーはビジネスに何をもたらすのか製品に応用される量子論

量子コンピュータが実用化されるのはまだ先の話になるが、1〜2年で実現する技術分野もある。これを好機と捉えて生かすか、様子を見るか。いずれにせよ、これから何が起こるのか知っておく必要がある。

2018年07月23日 08時00分 公開
[Paul MartinComputer Weekly]

 現在の企業は、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、サイバーが目まぐるしいペースで発展する世界を追い掛けるのに必死で、ハイテク疲れを感じるのも無理はない状況にある。しかし、今から注目しておく価値がある画期的な新技術はこれら以外にもある。それは量子テクノロジーだ。量子は、以下の技術を著しく向上させると期待されている。

  • より信頼性が高く、改ざんが困難なナビゲーションシステムとタイミングシステム
  • データが傍受されると通知する、より安全な通信
  • 脳スキャナーやコーナーの周辺を監視する自動車用自律型センサーなど、より正確なイメージング
  • より多くのデータをより迅速に処理する強力な演算能力

 量子コンピューティングのように、実用化にはかなり時間のかかりそうな応用例もある。その一方で、あと1〜2年で実用化しそうな技術もある。こうした量子テクノロジーの応用は、単純に進化と呼べるし、ディスラプティブ(破壊的)と言ってもいい。

 だからこそ今、量子テクノロジーとは何か、それがどのような影響を及ぼす可能性があるのか、またどのような機会が得られるのかを知っておく必要がある。すぐにでもチャンスを生かしたいと考える人もいるだろうし、しばらく様子見だと考える人もいるだろう。調査の上、量子テクノロジーは自分の業界にはあまり影響しないという結論に達する人もいるだろう。ただし、全く無視するという選択肢はない。

 「量子」という言葉を聞くと、スティーブン・ホーキングやアルバート・アインシュタインを思い浮かべる人もいるだろう。そう確かに、それは素粒子物理学に関するものだ。けれども、その分野の科学研究に本格的に取り組む必要はない。スマートフォンの将来性を理解するのに、半導体の働きを詳しく知る必要がないのと同じだ。原子の内部で起こっている動きを利用していることが分かれば十分だ。

 量子力学に基づく技術は、原子力あるいはコンピュータや携帯電話に使われている半導体など、50年以上前からわれわれの日常生活に取り入れられている。今と昔と違いは、科学者が原子の内部の働きをより細かく理解し、制御できることだ。また今の科学者は、ビジネスへの応用が可能な方法でそうしたことを実行できる。

 科学者たちが現在取り組んでいる二大分野が(ここで科学が登場する)「量子もつれ」と「量子の重ね合わせ」だ。

量子もつれ

 これは、2つの原子が分離されている状態からでも連結したり絡み合ったりできるという原理である。一方を変更すると、両方のプロパティに影響するというものだ。

 この事象が開く可能性の一つに、より安全な通信を可能にする新種の暗号化キーが挙げられる。ジャムの瓶のふたが開けられていないことを示すシールのように、その暗号化キーはデータの送信後に傍受があったかどうかを明確に示す。

量子の重ね合わせ




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