Microsoftは、トポロジカル量子ビットを応用した量子コンピュータの実現に自信を見せる。同社の量子コンピュータへの取り組み、そしてその展望を紹介する。
Microsoftは量子コンピュータに取り組んでいる。5年後には、これが「Microsoft Azure」の一部となるかもしれない。
同社は、「トポロジカル量子ビット」と呼ばれる量子コンピューティングでこの分野をリードしていると主張する。この方式は、競合する他の量子ビットシステムよりもエラーが発生しにくいという。
「われわれはトポロジカル量子ビットの仕組みをかなり解明している。われわれは、制御に必要な極低温プロセスや、3次元ナノプリンティングに取り組んでいる」と説明するのは、Microsoftの量子コンピューティング担当バイスプレジデント、トッド・ホルムダール氏だ。
「競合他社は、量子ビットを100万個接続する必要があるが、われわれの量子コンピュータならば1000個で済む。われわれは質を重視している」
ホルムダール氏によると、量子コンピュータの利点は、従来のコンピュータよりも演算が桁違いに速いことだという。
「RSA-2048の暗号を解読するチャレンジで考えよう」と同氏は語る。「2つの素因数に分解できる、桁数の非常に大きい数字があるとする。従来のコンピュータで素因数分解を実行すると10億年かかるが、量子コンピュータならばRSA-2408(617桁、2048bitの暗号)も100秒で解読できる」(訳注)
訳注:原文は「RSA-2408」だが、「RSA-2048」の誤入力と解釈した。
演算性能が段違いに高いのは、量子コンピュータの情報格納方法が従来のコンピュータとは全く違うためだ。「過去4500年間、情報を保管する方法にはあまり大きな変化はなかった。トランジスタは、0か1のどちらか1つの値を格納する。ところが量子コンピュータは、0と1を同時に保持することができる」とホルムダール氏は説明する。
古典的なバイナリ4bitコンピュータは、0000から1111までの16通りが可能な2進数(10進数では0~15)の値を1つ保持できるのに対して、4量子ビットの量子コンピュータは2進数(0000から1111までの16通り)全ての組み合わせを同時に保持できるとホルムダール氏は説明を続ける。量子コンピュータが従来のバイナリコンピュータより段違いに高速なアルゴリズムを実行できるのは、量子ビットに複数の数値を同時に保持できるからだ。
ホルムダール氏によると、この能力は新しい分野の研究を前進させるという。量子化学を例に取ると、地球大気中の温室効果ガスを分解する触媒や窒素循環を促進する触媒の特定に活用でき、人工肥料をより早く、よりエネルギー効率の良い方法で生産することにつながる。
「量子コンピュータは、われわれの世代の技術だ」と同氏は抱負を語る。「これは世界を変えるだろう。あらゆる分野に活路がある」。線形代数に精通している人は量子コンピュータのプログラミングを容易に習得できる可能性が高いとホルムダール氏は主張する。「機械学習に熱心に取り組んでいる人も量子コンピュータのプログラミングにはなじみやすいだろう。数学の知識は共通しているからだ」と同氏は付け加える。
Microsoftが量子コンピューティングで優位にあるとホルムダール氏が信じているのは、トポロジカル量子ビットと呼ばれているものの解明に近づいているからだ。
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