幅広いマルウェアの挙動を検知
「機械学習」を使ったAIセキュリティ製品が注目する “3つの挙動”
AI(人工知能)技術のうち、特に機械学習をセキュリティ製品に実装する取り組みが進んでいる。本稿では、機械学習ベースのセキュリティ製品の仕組みと、製品選定時の注意点を説明する。
「機械学習」をはじめとする「AI」(人工知能)技術は、セキュリティベンダーが製品の差異化のためによく使用しているキーワードだ。セキュリティ製品におけるAI技術、特に機械学習は、企業のセキュリティチームがマルウェアなどの脅威を特定する方法として、実際に利用している。
新しいマルウェア、古いマルウェアの亜種などの攻撃手法の数が大幅に増加したことが、セキュリティにおける機械学習の必要性が高まった理由の一つだ。機械学習を実装したセキュリティ製品は、あらゆる種類の脅威を短時間で検出、識別、処理、修復する機能を備えている。「脅威が見つかったらIT部門に連絡して対処を依頼する」という従来の考え方とは全く異なる。
セキュリティ製品に機械学習を利用する価値は、あらゆる形態の脅威を可能な限り前もって発見できる能力にある。非常に多様な脅威に対して、機械学習はどのように機能するのだろうか。その答えは、一言でいえば「挙動への着目」だ。
併せて読みたいお薦め記事
AIを活用したセキュリティ製品の特性
攻撃者もAIを悪用する
不審な挙動を検出するのに機械学習が有効
これまでのマルウェア対策の主流は「パターンマッチング」だった。まずエンドポイントで、新しいプログラムを検出する。次にシグネチャベースのパターンマッチングにより、そのプログラムがマルウェアかどうかを判断し、マルウェアであれば削除する。この手法を出発点として、マルウェア対策が製品分野として成立した。
今日のサイバー犯罪者は、検出を回避するために、セキュリティ製品の先回りをして「挙動を変化させる方法」を模索している。これに対して、機械学習を用いたセキュリティ製品で多くの挙動を監視するのは有効だ。
機械学習ベースのセキュリティ製品は、以下の挙動を検知するのに役立つ。
1.エンドポイントの挙動
マルウェアを使った攻撃では、攻撃者はマルウェアをエンドポイントで実行させなければならない。ファイルへの書き込み(メモリへの直接的な書き込みを除く)、プロセスの起動、リソースへのアクセスが必要なためだ。これらのどの挙動も、「Microsoft Word」やWebブラウザといった正規アプリケーションの典型的な挙動とは異なる特徴を見せるため、発見の手掛かりになる。
ファイルにアクセスしないタイプの攻撃によって、正常なプロセスが危険にさらされた場合、機械学習ベースのセキュリティ製品は、メモ帳が子プロセスを起動するなどの異常な動作を検出する。
2.ネットワークの挙動
ネットワークのトラフィックは予測困難だ。エンドポイントの通信では、一般にWebサイトや他のエンドポイントと同じポートを介して通信し、同じ暗号化技術を使用してデータを送受信する。機械学習ベースのセキュリティ製品は、攻撃用サーバであるコマンド&コントロール(C&C)サーバや通常とは異なるポートの使用、異常な量のデータの転送、暗号化の使用増加などを攻撃の挙動として検出する。
3.エンドユーザーの挙動
エンドユーザーは職場で自分の仕事をする。通常、この行動は予測可能であり、反復性のある有限数のタスクといえる。ほぼ同じ曜日のほぼ同じ時間にログインし、同じアプリケーションを使用し、同じ種類のデータにアクセスして操作し、同様のトピックについて同じ人々とやりとりする。
機械学習ベースのセキュリティ製品は、エンドポイントとユーザー認証情報を侵害する攻撃について、異常なログイン時間、複数のシステムへの接続、アプリケーションの異常な使用、クラウドへのデータの大量コピーなどを検出する。攻撃者がエンドポイントに侵入した際によく使用するアプリケーションの使用を検出した場合も、不審な挙動と見なす。
注意が必要なのは、単に「AI技術を使用している」とうたうセキュリティ製品の導入を検討する場合だ。この場合、そのセキュリティ製品がどのような挙動に注目しているかが重要となる。侵入やデータ流出といった攻撃の疑いがある挙動を監視できることが必要だ。
機械学習をはじめとするAI技術はもはや単なる販促用のキーワードではない。人間よりもはるかに短い時間で異常な行動を発見する、非常に実用的な技術だ。セキュリティにおけるAI技術の将来がどうなるかは興味深い。脅威とセキュリティの戦いにおいて、両者が進化を遂げる中で、AI技術がサイバー攻撃に完全勝利することができるか、あるいは一部の勝利にとどまるか、結果は時が経てば分かる。サイバー攻撃との戦いを諦めるのでなければ、挙動に注目するAI技術をセキュリティ戦略に取り込むとよい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] Drupalサイト運用のリスク解消 潜在的なセキュリティ問題を迅速に発見する方法 -
製品資料
[株式会社ソースポッド] SCS評価制度への対応で工数が増大? 取得後の管理・運用をどう進めるべきか
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
4
「法人向けPCおよび周辺機器の利用状況」に関するアンケート
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
「データ活用とAI活用の実態」に関するアンケート
-
10
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー