細かい制御や連携に強み
人工知能を使う「AIOps」ツールと従来の運用管理ツールとの違いは?
従来のIT監視ツールは限られた範囲の情報しか得られず、見落としなどのミスを生みやすい。人工知能(AI)技術によって運用を自動化する「AIOps」ツールを使えば、こうした監視範囲の制限を克服できる。
ローカル、エッジ、データセンターなど、あらゆる場所で数多くのハードウェアとアプリケーションが運用されている。その数は膨大なために、狭い範囲にポイントを絞ったツールで監視するのは難しい。運用管理ツールを複数使うと、情報の断片化が生まれることもある。こうした断片化は、IT運用の見落としやミス、インフラとアプリケーションのパフォーマンス低下、セキュリティとコンプライアンスの潜在的なリスクの原因になり得る。
人工知能(AI)技術によって運用を自動化する「AIOps」のツールを使えば、こうした制限を克服できる。AIOpsツールは、運用中のITツールやデバイスから情報を収集して分析し、その結果を使って、環境に潜む問題を特定して修正する。
AIOpsツールを導入する際、どのような特徴や機能に着目すればいいのだろうか。AI技術を利用しない運用管理ツールとの違いは何だろうか。
AIOpsツールが実現すること
ざっくり言うと、AIOpsツールはITスタッフがより適切な判断を下す手助けをする。AIOpsツールは、イベントとアラートを関連付ける。その目的はアプリケーションとインフラの関係を認識して、通常時と異常時のシステムの動作を区別することだ。この仕組みによりIT管理者は、その問題とイベントが深刻なのか軽微なのかを切り分けることができる。その結果、静的または手動設定の監視しきい値を使った従来の方法と比べて受け取るアラートが少なくなる。これはノイズ低減機能とも呼ばれる。
AIOpsツールは特定の問題に関するアラートを、その対処に最も適したIT管理者またはチームに送ることで、汎用(はんよう)的な流れで出されるアラートよりも適切なワークフローを実現する。例えばパッチやアップデートの適用後に発生したアプリケーションのパフォーマンス警告は、開発チームに送るのが適切だろう。一方、アプリケーションサーバの警告の適切な送り先はインフラチームだ。
機械学習と相関分析により、AIOpsツールは根本原因の解析といったトラブルシューティングタスクにも対処できる。IT運用時にインシデントやアラートが発生すると、AIOpsツールは根本原因に関する詳細な提案をする。問題が再発した場合は既存の提案内容をアップデートして改善する。
細かいところでは、AIOpsツールを使えばログデータの収集方法と使用方法を綿密に制御できる。IT管理者は、特定のログイベントが発生したときに通知を受け取ることも可能だ。
AIOpsツールとAPM/IPMツールの違い
AIOpsツールと、「アプリケーションパフォーマンス監視」(APM)ツールや「インフラパフォーマンス監視」(IPM)ツールの主な違いは、分類ではなく、監視の範囲だ。APMツールとIPMツールは、特定の監視機能を提供し、限られたソフトウェアとハードウェアリソースについて詳細な助言を提示する。このようなポイントを絞ったツールは有効だが、同じ環境内にある監視対象外のリソースに関するデータや動作を評価することはない。
例えばAPMツールが、ストレージで大きな遅延が発生していることを報告したとしよう。IT管理者はアプリケーションのパフォーマンス問題とストレージシステムとの相関関係を特定するために、APMツールのログデータを確認し、インフラ管理ツールやシステム管理ツールなど他のツールのログと付き合わせなければならない。アプリケーション、ネットワーク、ストレージシステム、特定のディスクのどこに問題の原因があるのかを判断する任務を負うのは、APMツールではなくIT管理者だ。
AIOpsツールは、相関分析により運用の全体像を生成することで、この因果関係の不透明さを克服する。
前述の例に戻ろう。AIOpsツールは、APMやIPMといった他のツールのログを取り込み、アプリケーションのストレージで発生した遅延の根本原因を明らかにする。あるディスクが、ストレージシステムにエラーを報告し、それが今にも問題を引き起こそうとしていたことが分かったとしよう。AIOpsツールは、ディスクのリビルド(復元)を推奨するか、ディスクを自動的にリビルドすることで、サポートチームの介入を最小限に抑えて、簡単にストレージ障害を回避できる。
ITとビジネスの間を取り持つAIOps監視ツール
どのAIOpsツールも、ポイントを絞ったツールより広範で詳細なIT環境のビューを提供する。中にはビジネスについて同様の効果をもたらすものもある。インフラとソフトウェアのパフォーマンスを収益の生成といったビジネス成果と結び付けたり、ハードウェアやソフトウェアの変更が業績にもたらす影響を予測したりする。
AIOpsツールの具体例を紹介しよう。StackStateの同名ツールは、ITイベントをビジネスイベントに関連付けられる。例えばサーバの中断が売り上げにもたらす影響を特定できる。Cisco Systems傘下のAppDynamicsが提供する「Business iQ」は、ビジネスプロセス関連の洞察を監視する。同社の「Cognition Engine」はデータの関係を監視して自動化することで、AIOpsを実現する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー