医療CIOが語る、2020年の技術動向【前編】
「DX」に「セルフサービスBI」――医療機関のCIOが注目するトレンドは?
医療業界で2019年に課題に挙がっていたことは一定の解決を見せたのだろうか。米国の医療グループSCL Health、Boston Medical Center、Northwell HealthのCIOはそれぞれどのような見解を持っているのか。
医療業界のCIO(最高情報責任者)は、2019年とは異なり2020年における医療技術の動向には、大きな期待と課題があると考えている。
2020年には、デジタル化に焦点を当てた医療システムの構築がさらに進む可能性がある。人工知能(AI)技術、遠隔医療サービス、データへのアクセスの改善により、継続的な患者モニタリングと予測分析が可能になり、患者の満足度向上(エクスペリエンスの改善)に今まで以上に焦点が当てられるようになる。
だがこれは簡単ではない。Boston Medical CenterのCIO、アーサー・ハーベイ氏は「医療システム全体でデータを連携することが課題の一つだ」と考えている。
下記3つの医療グループのCIOに話を聞き、前後編にわたって各テーマについての見解をまとめる。前編となる本稿は、2019年に解決できなかった事項と、2020年以降も継続して注目する新しいトレンドや技術についての意見を紹介する。
- Sisters of Charity of Leavenworth Health System(「SCL Health」の名称で事業展開)
- Boston Medical Center
- Northwell Health
―― 2019年最大の未解決課題は何か。
ハーベイ氏 私はCIOとして、単なる技術ではなく、ビジネスに集中しビジネスの問題を解決する技術を探す必要があると考えている。医療データを、一連の医療サービスで協力する医療機関と継続的に共有する必要性が急速に高まっていることが、最大の課題だ。
私は協力施設のコントロールはしていない。さまざまな規模の医療機関が利用でき、一連の医療サービスに関わる施設がデータを共有するための手法と技術を考え出す必要がある。私にできることを、地域の小さな医療センターが実行してくれるという期待はできない。私が2019年に多くの時間を費やしてきたのは、そういう仕事だった。
―― 2019年に登場し、2020年も注目する新しいトレンドや技術は何か。
クレイグ・リチャードビル氏(Sisters of Charity of Leavenworth Health System) 私の視点では画期的な新しい技術はなかったが、幾つかの領域で実用的な事例への関心が高まり、進歩が見られた。例えばまず
- デジタルトランスフォーメーション(DX)
- 音声サービス(データ入力メカニズムと自然言語処理)
- AI技術(セルフサービスやソフトウェアロボットによる自動化の機能を実現)
の3つは全て、2020年に具体的な取り組みが進むだろう。
ハーベイ氏 データ分析の民主化、つまりセルフサービス化だ。IT部門以外の医療従事者が、ビジネス上の判断をするために使用できるデータとツールを提供することを指す。これは画期的な話ではない。近年は「Tableau」のようなセルフサービスBI(BI:ビジネスインテリジェンス)製品を持っている組織は珍しくなくなった。2020年にはこれが医療機関にまで普及すると考えている。医療スタッフがデータを使用するのは望ましいことだ。どのように医療を提供するか、どのように医療を管理するかについての意思決定に役立つ。
ジョン・ボスコ氏(Northwell Health) 継続的な患者モニタリングに関しては、変革は始まったばかりだ。患者が病室に入ったときにセンサーを装着できるようになったことは非常に重要な意義がある。この試みはまだ初期段階だ。当グループ傘下の病院には、さまざまな目的でさまざまなセンサーを使用するパイロットスタディー(初期段階の研究)に協力してくれている患者が4~6人いる。機械学習などのAI技術を実装しているセンサーは、医療に大きな影響を与えるだろう。
後編は、前編に引き続き3人のCIOが2020年に取り組むべきと考えている課題、2020年に最も楽しみにしていることを紹介する。
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