「Zoom」は信頼できるのか【前編】
Zoomが訴訟に追い込まれた「エンドツーエンド暗号化」の意味とは?
Web会議ツールはテレワークの実施には欠かせない。その一つとしてZoomをさまざまな企業が導入する一方、セキュリティとプライバシーの問題があるとして複数の訴訟を起こされた。その詳細は。
Web会議ツール「Zoom」を提供するZoom Video Communicationsが、同社のビデオ暗号化方法について誤解を招く主張をしていたとして、2020年4月上旬に集団訴訟を起こされた。問題となったのは同社がマーケティング資料および米国証券取引委員会(SEC)への提出書類に記載した内容だ。加えて同年3月から4月にかけて報道で明らかになったセキュリティおよびプライバシーに関する他の不備も追及されている。
Zoomに関するこうした問題の表面化に伴い、一部の企業や政府機関、学校はZoomの使用を禁止した。具体的にはGoogle、宇宙開発事業を手掛けるSpace Exploration Technologies(SpaceX)、米国航空宇宙局(NASA)、台湾政府、米ニューヨーク市の公立学校などだ。
投資家による2件の訴訟は、「Zoom Video Communicationsが米国連邦証券法に違反して株主を欺いた」という内容だ。申し立てでは、当局への提出書類に記載された「Zoomは『エンドツーエンドの暗号化』を使用している」という内容が法律に違反していると主張する。
焦点となった「エンドツーエンドの暗号化」の意味
「エンドツーエンドの暗号化」は一般的に、エンドポイントから他のエンドポイントまでの通信を暗号化する方法を指す。この方法では、データ復号のための暗号鍵はエンドユーザーのみが管理する。ところがZoomの標準設定では、暗号鍵をZoomが扱えるようになっていた。さらに、その暗号鍵を用いて音声テキスト変換のような有料サービスのために映像を復号していたという。
オンラインメディアThe Interceptは、2020年3月31日付けの記事でZoom Video Communicationsの「エンドツーエンドの暗号化」という用語の使い方について疑問を投げ掛けた。Zoom Video Communicationsはそのすぐ後に、「『Zoomはエンドツーエンドの暗号化を利用する』という記載は不正確だった」と謝罪した。
「われわれはZoomの利用者を欺くつもりは全くなかった。『エンドツーエンドの暗号化』の一般的な定義とわれわれの定義には、違いがあることを認識している」。Zoom Video Communicationsの最高製品責任者オーデル・ガル氏は、同年4月1日付けのブログ記事でそう述べた。
Web会議ツールの利用者がエンドツーエンドの暗号化を重視する主な理由は、法執行機関による動画データ閲覧をWeb会議ツールベンダーに許可してほしくないからだ。攻撃者による会議の傍受を防ぐことができる点もポイントになる。
Zoom Video Communicationsは、政府機関の「データ、記録、コンテンツに関する要請」にどう対処してきたのかを説明するレポートの準備を進めている。同社の主張では「傍受のためにリアルタイムでビデオ通話を復号する方法は決して開発していない」という。
拡大するZoomの法的トラブル
一部の米国連邦議員も、この問題を取り上げている。米国上院のシャーロッド・ブラウン議員とリチャード・ブルーメンソール議員は、米国連邦取引委員会(FTC)にZoom Video Communicationsのプライバシーおよびセキュリティに関する調査を求めた。
Zoom Video Communicationsは2020年3月にも2件の集団訴訟を起こされている。これらの訴訟は、Zoomの「iOS」用クライアントアプリケーションがデバイスに関するデータをFacebookと共有していたことをエンドユーザーに知らせていなかったというものだ。これを受け、同社はそのようなデータ共有をしないようにするアップデートを同月末に公開した。
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