IBMに聞く「量子コンピュータ」の今【後編】
なぜ「量子コンピュータ」について知らないとまずいのか
「量子コンピュータ」の知識はなぜ必要なのか。IBMが量子コンピュータのクラウドサービス「IBM Quantum Experience」を提供する理由とは。同社の量子コンピュータ部門責任者に聞く。
量子力学の原理を利用した「量子コンピュータ」の性能は向上を続けており、金融機関のリスク予測や分子の化学反応のモデリング(数式化)など、用途が広がりつつある。量子コンピュータの専門家であるボブ・スーター氏はこれを受け、2019年11月に量子コンピュータの解説書『Dancing with Qubits: How quantum computing works and how it can change the world』(以下、Dancing with Qubits)を出版した。スーター氏は研究機関IBM Researchの量子エコシステム開発部門でバイスプレジデントを務める。
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量子コンピュータで何ができるのか
「量子コンピュータ」実用化への道筋
前編「『量子コンピュータ』はなぜ必要か? 従来型との比較で考える」と中編「『量子コンピュータ』はクラウドとオンプレミスのどちらが現実的か?」に続く本稿は、スーター氏に量子コンピュータの現状と、自身の著書について話を聞く。
―― 量子コンピュータの知識を深めることは、なぜ重要なのでしょうか。
スーター氏 量子コンピュータ技術はできるだけ多くの人が利用できるようにすべきだと考えているからだ。IBMは現在、15台の量子コンピュータをクラウドサービスの「IBM Quantum Experience」として利用可能にしている。一方で量子コンピュータへの理解を深めるには知識を伝えることの他、人々のソフトウェアの開発方法や物事の考え方を量子コンピュータに適した形に変えることが重要だ。
私は40年以上コードを書いてきて、古典コンピュータ(従来のコンピュータ)のプログラミングの方法を知っている。量子コンピュータについて学び始めたとき、それらが完全に古典コンピュータの手法と違っていることが分かり、また一から勉強を始める必要があった。
量子コンピュータ実用化への取り組みは、古典コンピュータ活用の単なる延長ではない。量子力学の観点からは筋の通ることも、古典コンピュータの技術や開発手法の観点からは奇妙に見える。
IBMは「量子コンピュータは、今世紀で最も重要なコンピューティング技術の一つになる可能性が極めて高い」と考えている。だからこそ、多くの人に知ってもらいたい。
―― 著書Dancing with Qubitsについて教えてください。
スーター氏 Dancing with Qubitsを執筆しているとき、友人が、表面的なことのみ説明する簡潔な本にするのか、それとも詳しくて複雑で難解な本にするのかと聞いてきた。私はどちらでもないと答えた。
量子コンピュータに関する本は、読者の多大な予備知識を前提としていることが少なくなく、そうした知識がなければどこかで調べる必要がある。この本では数学についても書いているが、話し掛けるような文章で読者を導くように心掛けた。この本を読み終えるころには、量子コンピュータを理解するのに必要な、量子計算の最小単位である量子ビットという概念が分かるようになるはずだ。
―― この本を通して読者に望むことは何ですか。
スーター氏 この本を始めに読めば十分な基礎知識を得られるだろう。その後は、関心や重要度に応じて量子コンピュータの現状についてさらに知識を広げてほしい。
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