複雑な計算問題を解くのに優れている量子コンピュータは、企業の課題解決にも役立つ可能性がある。量子コンピュータベンダーD-WaveのCEOに、量子コンピュータの用途と開発状況を聞く。
量子コンピュータはまだ研究が始まったばかりだが、急速に進化している。こうした中、さまざまな業界に役立つ量子コンピュータの大きな潜在能力が判明し始めている。
マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)の技術誌MIT Technology Reviewが2019年12月に開催したカンファレンス「Future Compute」で、カナダの量子コンピュータベンダーD-Wave Systemsの最高経営責任者(CEO)、アラン・バラツ氏が登壇。MIT Technology Reviewとの議論を通じて、量子コンピュータの開発状況と、そのビジネス用途を紹介した。前後編にわたり、その内容を紹介する。
―― 最高情報責任者(CIO)が、ビジネスへの量子コンピュータの活用を考えるべき理由は何でしょうか。
アラン・バラツ氏 量子コンピュータは難しい問題を解決するまでの時間を短くできる。例えば物流事業であれば梱包と輸送、車両スケジュールの改善、航空業界であれば乗員や便のスケジュールの改善などが挙げられる。今までこのような大掛かりな問題を解決するための計算には、膨大な時間がかかっていた。量子コンピュータは、問題の解決策を出すまでの時間を大幅に短縮し、今までよりもさらに良い解決策を出せる可能性がある。
―― 計算の速さは量子コンピュータの最も重要な要素なのでしょうか。
バラツ氏 企業が量子コンピュータに求める性能は処理スピードのこともあれば、解決策の品質のこともある。解決策の多様性の場合もある。量子コンピュータは最適な解決策に加え、最適に近い複数の解決策を提示することにも優れている。
―― 量子コンピュータの制約は何でしょうか。D-Waveはその制約にどう対処しているのでしょうか。
バラツ氏 これまでのところ、D-Waveの場合、制約はシステムの大きさとネットワークの構成だった。D-Waveのハードウェアは現在約2000量子ビットほどであり、複雑な問題を解決することは難しい。次世代システム「Advantage」では、5000量子ビット以上を利用できるようにする。これにより、はるかに大きな問題を解決できるようになる。
技術的な制約を超えるための、もう一つの方法も研究している。量子コンピュータと従来型の古典コンピュータを組み合わせる新しいアルゴリズムの開発だ。従来の「量子古典ハイブリッドアルゴリズム」といえば、問題を古典コンピュータでの計算が適している箇所と、量子コンピュータでの計算が適している箇所に分割して解決しようとする手法だ。
D-Waveが開発中の量子古典ハイブリッドアルゴリズムは、古典コンピュータを使って問題の核心を発見し、その核心を量子コンピュータで解決する。これにより5000量子ビットシステムであっても大きな問題を解決できる可能性がある。5000量子ビットシステムのAdvantageと新しい量子古典ハイブリッドアルゴリズムを利用すれば、もっと多くの企業が生産性に関わる問題を解決できると考えている。
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