量子コンピュータの魅力とは何か。コスト問題にどう対処すべきなのか。量子コンピュータベンダーD-WaveのCEOに聞く。
マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)の技術誌MIT Technology Reviewが開催したカンファレンス「Future Compute」に、カナダの量子コンピュータベンダーD-Wave Systemsの最高経営責任者(CEO)、アラン・バラツ氏が登壇した。前編「D-Waveが直面した『量子コンピュータ』の“限界”とは? どう乗り越えるのか」に引き続き、バラツ氏とMIT Technology Reviewの議論の内容を紹介する。後編で取り上げるのは量子コンピュータの魅力やコスト問題に関する議論だ。
―― ユーザー企業は競って量子コンピュータを導入するのでしょうか。
バラツ氏 そうはならないだろう。問題は、量子コンピュータの分野で大きな成果を上げたと発表している大手ベンダーのシステムでも、ユーザー企業が実際に活用できるようになるまでに何年もの年月がかかる点にある。そしてユーザー企業は、こうした大手ベンダーの大々的な発表しか把握しておらず、量子コンピュータで何ができるかを理解していない可能性がある。当社もメッセージを届けているが、まだ先は長い。
―― 量子コンピュータで最も魅力に感じることは。
バラツ氏 他の方法では解決できない問題を解決する能力だ。私がMITの博士課程でコンピューティング理論を研究していた頃、1つの種類のコンピュータでは解決できない問題が存在するという考え方を持っていた。量子コンピュータは、全ての課題を解決するとまでは言わないまでも、解決できない課題を少なくすることができる。
量子コンピュータを構築するための技術群はさらに魅力的だ。現在当社は新しい超電導集積回路技術を開発している他、冷却技術と、冷却装置から汚染物質を取り除く技術を進化させている。量子コンピュータの調整には6週間かかることもある。もし冷却装置に汚染物質があり、システムの温度を上げてその汚染物質を除去しなければならないとすれば、調整にかかる期間はさらに長くなる。
―― 量子コンピュータの主な懸念材料の一つはコストの増大だと言われています。
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