「ハイブリッドクラウド」の8大用途【前編】
「ハイブリッドクラウド」はなぜ必要か? DXとクラウド移行の観点で考える
企業がハイブリッドクラウドのメリットを引き出すには、どのような用途で構築するのかを明確にしておく必要がある。ハイブリッドクラウドの主な用途と、構築前に確認しなければならないことを説明する。
オンプレミスとクラウドサービスのITインフラを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」の構築を検討する企業は、構築前に入念な評価をしなければならない。各企業の事情はさまざまで、持っているスキルやITインフラの導入目的も違う。IT部門にハイブリッドクラウドを扱えるだけのスキルがあるとしても、ITインフラを利用する他の部門のスタッフは、ITインフラの運用方法やセキュリティを維持する方法、ツールの使い方について、複数のITインフラでそれぞれ別の方法を習得するのは難しい可能性がある。
企業はハイブリッドクラウドを構築する場合、慎重に構築作業を進め、異なるITインフラをいかにして効率的に運用するかといった課題に対処する必要がある。慎重に作業を進めたとしても、ハイブリッドクラウドが企業に良い影響をもたらすとは限らない。
ハイブリッドクラウドで生じる一般的な課題を緩和する方法の一つは、自社がハイブリッドクラウドを必要とするそもそもの理由を明確にすることだ。前中後編にわたってハイブリッドクラウドの主要な8つの用途を取り上げ、それぞれの用途におけるハイブリッドクラウドのメリットと課題を確認する。自社がハイブリッドクラウドから期待するメリットを得られるかどうかを判断してほしい。
用途1.デジタルトランスフォーメーション(DX)
併せて読みたいお薦め記事
クラウドベンダーのハイブリッドクラウド製品を解説
ハイブリッドクラウドの構築について詳しく
企業は、デジタル時代に適応するために、ビジネスや企業風土を変革する「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に向けた取り組みの一環として、ITインフラのモダナイゼーション(最新化)を実現する手段がクラウドサービスだと考えることがある。単にクラウドサービスに移行するだけではなく、ビジネスの他の全ての大きな決定と同様、移行することが適切かどうかを詳しく検証しなければならない。
例えば米国の電気工事請負大手のRosendin Electric(以下Rosendin)は、災害対策用データベース管理システム(DBMS)や製造システムを、オンプレミスのITインフラからクラウドサービスに移行する作業に着手した。RosendinはAmazon Web Services(AWS)の「VMware Cloud on AWS」を使い、クラウドサービスへの移行プロセスの効率を高めた。VMware Cloud on AWSは、AWSのITインフラでVMwareの仮想化製品を利用可能にするクラウドサービスだ。
最大の課題は、実際のデータ移行に加えて、移行規模の計画と要件の妥当さを確認する作業だった。「クラウドサービスへ移行するデータの量を計算するときに、幾つか問題が判明した」と語るのは、Rosendinでサイバーセキュリティおよびコンプライアンス部門のシニアディレクターを務めるジェームズ・マクギブニー氏だ。社内の代表的なDBMSの一つでは、ログファイルなどのデータを処理するときに余計な負荷(オーバーヘッド)がかかることが分かった。
Rosendinでは、アプリケーションの処理効率を高めるためにはデータを移行する前に、自社で利用可能な回線容量(帯域幅)を増やさなければならないことが判明した。「ハイブリッドクラウドへの移行を検討している企業には、帯域幅やデータのバックアップ方法、パブリッククラウドのライセンス体系など、ありとあらゆるコストを考慮に入れ、投資対効果を確実に予測することを勧める」とマクギブニー氏は述べる。
用途2.クラウドサービスへの部分的な移行
企業はハイブリッドクラウドを構築することで、レガシーアプリケーションの運用を維持できるオンプレミスのITインフラを利用しながら、クラウドサービスによって新しいシステムを容易に導入できるようになる。「自社の業務アプリケーションのITインフラをクラウドサービスに切り替えることを決定した企業が、全てのアプリケーションを完全には移行できない場合に、ハイブリッドクラウドを検討することが多い」と語るのは、調査会社Nucleus Researchのアンドリュー・マクミラン氏だ。
マクミラン氏によると、企業はハイブリッドクラウドを構築する前に、次のような疑問点の幾つかに対処しておく必要がある。
- クラウドサービスへの移行は自社の課題をどのように解決するか
- クラウドサービスに移行するシステムは幾つあるか
- クラウドサービスとオンプレミスのITインフラ間のデータの接続とシステム連携が自社に悪影響を及ぼす可能性はあるかどうか
中編は、ハイブリッドクラウドの主要な用途を3つ説明する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
6
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
7
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
8
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
9
VBAマクロ“原則ブロック”後に「Office」でマクロを実行する方法
-
10
Qlik Senseを使った教育機関の予測分析は現場に何をもたらしたか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー