新型コロナに耐えるインターネット【後編】
新型コロナでトラフィックが激増してもインターネットが落ちない4つの理由
新型コロナウイルス感染症対策でテレワークが広がり、インターネットのトラフィックが急増しても、全面的なインターネット停止には至らなかった。どのような対策が講じられているのだろうか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が拡大し、企業の間で在宅勤務などのテレワークの実施が広がったことで、インターネットのトラフィック(通信量)は急増した。仮にネットワークインフラが10年前のままだったなら、今回のようなトラフィックの変動に耐えることはできなかっただろう。
インターネットサービスプロバイダー(ISP)や通信事業者はトラフィック変動に対処するためにネットワークインフラを継続的に強化している。ISP事業を手掛けるCenturyLinkで、CTO(最高技術責任者)を務めるアンドリュー・デュガン氏は、今回のような事態になってもインターネットが持ちこたえることができた要因は主に4つあると説明する。
要因1.トラフィックのピークの分散
勤務者がテレワークを実施したり、学習者がオンライン授業を受けたりする動きが広がったことがトラフィック急増の要因だが、これらの用途によるインターネット利用の時間帯は昼間が中心だ。デュガン氏によれば、これまでインターネット利用のピークは昼間ではなく、仕事や学校から帰宅した人がゲームや動画をストリーミング視聴する夜だった。そのためインターネット利用のピークの時間帯は分散する結果となった。
ISP事業を手掛けるComcastでネットワークエンジニアを務めるノーム・ラファエッリ氏によると、同社のネットワークインフラにおいてもトラフィック変動のパターンの変化が見られた。以前は21時ごろがピークだったが、新型コロナウイルス感染症が拡大してからは下り(エンドユーザーがデータを受信する)トラフィックのピークが19時半前後、上り(エンドユーザーがデータを送信する)トラフィックは18時から20時の間にピークが来るようになったという。
要因2.耐障害性の確保
CenturyLinkもComcastも、ネットワークインフラに障害が発生してもインターネット接続を途切れさせることのないように十分な回線容量(帯域幅)を確保することで、高いレジリエンシー(回復性)を持たせている。デュガン氏は「回線が物理的に切断したり、機器が故障したりするケースは少なくない。こうした問題が発生してもいいようにアーキテクチャを設計している」と語る。
要因3.ネットワークインフラの計画的な増強
障害に備えるだけでなく、将来的な需要に基づいて帯域幅に余力を持たせておくことも重要だ。デュガン氏は「ネットワークインフラがデータの伝送能力の限界に達しないように、数カ月先のニーズを予測する必要がある」と語る。ラファエッリ氏は「当社は12~24カ月先のニーズを予測して長期的なネットワークインフラの増強計画を立てている」と説明する。
要因4.輻輳対策の整備
ISPや通信事業者各社は災害に備えたネットワークインフラの運用ポリシーと対策の手順を用意している。通信が混雑する輻輳(ふくそう)を回避する対策もその一つだ。「新型コロナウイルス感染症の流行が拡大を始めた際は、まさに輻輳の対策を強化した」とデュガン氏は語る。
パンデミック時のインターネット接続の問題
ネットワークインフラの増強などISP側で実施できる対策はこうして講じられているが、一方では対策が難しい問題もある。エンドユーザーがインターネットに接続するために利用する回線はさまざまだ。銅線によるアナログの電話回線を利用するADSLなどのDSL(Digital Subscriber Line)方式で接続している場合は、問題の原因になりやすいという。
デュガン氏によると、光ファイバーによるIPネットワークならば大規模にネットワークを制御することが可能だ。物理的な回線の中をアナログの信号が流れるDSLのインフラは「簡単にデータ伝送の効率性を高めることはできない」と同氏は説明する。
DSL方式でインターネットに接続する場合は、下りと上りの帯域幅の制約を考慮する必要がある。オンラインゲームや動画のストリーミング視聴でインターネットを利用する場合は特に注意が必要だ。DSL方式によるインターネット接続サービスの場合、帯域幅は上りと下りそれぞれに割り当てられ、通常は下りにより大きな帯域幅が設定されている。こうした特徴を考慮して「上りと下りの双方向の通信に問題が発生しないように注意する必要がある」とデュガン氏は語る。
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