医療機関はデータ品質を高められるのか【後編】
医療機関が「データ品質」問題を放置してはいけない深刻な理由
医療機関にとってデータ品質の問題は、患者の生命に関わる問題に発展するリスクがある。医療業界に特有の課題について、データ分析の専門家は何を問題視しているのか。
組織がデータ品質を優先しなければ、組織だけではなく、その組織が提供する製品・サービスのユーザーも不利益を被る。これは特に医療業界でよくある問題だ。前編「医療機関を困らせる『データ品質の低下』はこうして起こる」で説明した通り、医療機関はデータ品質の維持に課題を抱えている。
医療機関はデータに基づいて重要な決定を下している。これらの決定の材料となるデータに不正確または誤解を招く情報が含まれている場合、余計な時間と費用がかかり、人命を危険にさらす可能性がある。「医療業界の場合、データの品質によって生死の道が分かれる」。スケジュール管理ツール「Skedulo」を提供するSkedulo Holdingsの技術および革新担当エグゼクティブバイスプレジデントであるポール・シュルツ氏はこう言い切る。
データ品質の低さが医療に及ぼす深刻な影響
ほとんどの医療データは、大勢の患者の一人一人から集計した臨床情報や生体情報を含む。「医療業界の場合はデータに伴うリスクが高く、不十分なデータを扱うと最悪の場合は死に至る可能性さえある」と、ITコンサルティング企業SPRのプリンシパルデータアーキテクトであるレイ・ドノフリオ氏は話す。
信頼性の低いデータは、組織の効率だけでなく、患者の信頼を損なう。質の低いデータに起因する望ましくない結果は医療業界に悪影響を及ぼし、業界全体が信用を失うことにもなりかねない。
医療業界ではデータが多数のソースから取得される傾向がある。ただし長期間にわたるデータ管理は広く普及していない。ITコンサルティング企業West Monroe Partnersのヘルスケアおよびライフサイエンス担当シニアディレクターであるムンゾー・シェイク氏は「データクレンジングの習慣は医療機関ではほとんどない」と話す。
往々にして文化は変化を受け入れにくいため、問題は残存する。医療機関の組織に多様性があること、そしてデータ量が多いことは、高品質のデータを維持する上で大きな障害となる。米国には3億人以上、世界中には何十億人もの人々がいる。「ほぼ無限に近い種類の医療データが、数千個、数百個もの異なる医療ITシステムから発生している」とドノフリオ氏は指摘する。この問題に取り組み続けるには、専念するための時間と専門知識が必要だ。
改善に向けた積極的なステップ
適切なデータを適切に使用するためのガバナンスやセキュリティを整備しながら、データクレンジング、構造化、正規化に関する最新技術を使ってデータを最新の状態に保つことで、医療機関のデータ品質は大幅に改善できる。データ品質改善の取り組みは、データ収集プロセスの初期に実施すべきだ。データ収集の価値を確認する待ち時間があまりにも長いと、時間と費用がかかり、組織の不満につながりかねない。
ビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーGoodDataの創設者兼CEOのローマン・スタネック氏は、データウェアハウス(DWH)を構築した後ではなく構築する前に、データの品質を確認すべきだと指摘する。「これは多くの企業がしていることと同じだ」(スタネック氏)
医療機関は大量のデータを取り扱っている。そのためデータ収集方法と、データ収集のために設定する質問が適切かつ有用であることが重要だ。満足度改善ツールベンダーInMomentで医療および患者エクスペリエンス担当バイスプレジデントを務めるジェイソン・マケドニア氏によると、従来のデータ収集ベンダーと提携している医療機関は、高品質のデータを収集するための手順が進歩していることを認識しておらず、その技術も活用していないことがある。
データの品質が低くなれば、医療ミスにつながりかねない。医療機関が正しい決定を下し、正しいデータを使用していることを確認するには、患者への質問から部門(診療科)間のコミュニケーションに至るまでの途切れのない取り組みが必要だ。
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