「HDD」の需要と技術進化【中編】
クラウドベンダーは「SMR」HDDを積極採用か オンプレミスのHDD導入傾向は?
クラウドベンダーは、今後も大量のHDDをデータセンターに導入する見込みだ。一方、ユーザー企業の間ではオンプレミスのインフラをサービスとして利用する動きが広がり、これがHDDの需要を押し上げる可能性がある。
前編「『20TBのHDD』の量産は遅れる? 『ニアラインHDD』拡大の訳は? HDD市場予測」に続き、業界の専門家によるHDD市場の注目点を紹介する。
「SMR」に関心のクラウドベンダー オンプレミスの動向は
調査会社IDCのリサーチディレクター、エドワード・バーンズ氏 企業のクラウドサービスへの移行が進み、ペタバイト規模のデータを保存するためのHDDの需要も一段と高まる。パンデミック(感染症の世界的大流行)の中で生き残るために、企業はデジタル技術を活用して自らの在り方を変える、DX(デジタルトランスフォーメーション)を優先的な課題に据えなければならなくなった。
クラウドサービスを利用すれば、リソースの拡張性や必要に応じたサービスの利用開始と停止、コスト効率の向上を実現できる。クラウドベンダーは自社サービスに新しい技術を迅速に採用する傾向があるため、利用する技術の陳腐化を防ぐことも可能だ。事業継続計画(BCP)とリスク管理の解決策としてクラウドサービスの利用が検討されることもある。こうしてクラウドサービスの利用を後押しするさまざまな要因がある中で、クラウドベンダーが導入するHDD容量の増加率は2021年に30%台半ばまで高まると予測している。
クラウドベンダーは、容量単価がより安い「SMR」(Shingled Magnetic Recording:シングル磁気記録)方式のHDDを中心に導入するだろう。これはHDD市場におけるSMR方式のHDD採用数を押し上げる要因になる。クラウドベンダーはデータ保存のコスト効率を高めるとともに、データ読み書き速度の低下をできるだけ抑制して、顧客が求めるサービスレベルを満たす必要がある。
SMR方式のHDDは、「CMR」(Conventional Magnetic Recording:従来型磁気記録)方式のHDDよりもデータ読み書きに時間がかかる傾向にある。SMR方式のHDDを増やすのであれば、クラウドベンダーはどのようなデータの保存をSMR方式に割り当てるのかを検討する必要がある。2021年は、まず20TBのSMR方式のHDDが出荷される見込みだ。プラッタ(円盤状の記録媒体)1枚当たりの容量を増やす新たな技術をHDDベンダーが開発すれば、SMR方式のHDDはさらに大容量化するだろう。
24時間365日、映像を撮り続ける監視カメラ用のHDDは2020年上半期には低迷した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外出が制限され、従業員が企業拠点に出社する機会も減少した。このため監視カメラシステムの導入に対する関心も下がった。COVID-19の感染状況が収束すれば、監視カメラ用のHDDは大きく成長する可能性がある。
TechTargetのシニアアナリスト、スコット・シンクレア氏 2021年は、オンプレミスのインフラをサービスとして導入する大きな流れが起こるだろう。ベンダーは旧型の製品の集約など、コスト効率の高いストレージの構築に着手する。
かつてはデータ読み書き速度の向上と運用管理の簡素化を求めて、フラッシュストレージに移行する大きな流れが生じた。ストレージの主流がHDDからフラッシュストレージに移行した主な理由は、ユーザー企業は「何が必要か分からないが、全てフラッシュストレージにしておけば足りるだろう」と考えるからだ。だがインフラを購入するのではなくサービスとして利用するようになり、自社のストレージに求める要件が厳しくないのであれば、状況は変わる。
Dell TechnologiesやHewlett Packard Enterprise(HPE)のようなベンダーが、「安価に要件を満たすために、HDDやテープを採用する」と言うのを、ユーザー企業は止める理由があるだろうか。ユーザー企業は、ハードウェアとして何を使用するかを気にしない。インフラをサービスとして調達することになれば、利用料金さえ支払えばユーザー企業は何も管理する必要はない。
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