フラッシュストレージ全盛の今でもHDD市場は話題に事欠かない。注目のニアライン市場の動向とは。16TBから18TB、18TBから20TBへと移行するHDD大容量化の動きは。専門家に2021年の予測を聞く。
HDD市場における今後の注目は何だろうか。大規模データセンターを運営するハイパースケーラーやクラウドサービスベンダーが、データセンターの容量増強のために採用する「ニアライン」が注目点の一つだと専門家は予測する。
1万〜1万5000RPM(RPM:ディスクの1分間当たりの回転数)のデータ読み書きが高速なHDDの用途が、フラッシュストレージに取って代わられた。その後、Seagate Technologyや東芝デバイス&ストレージ、Western DigitalらHDDベンダーの主戦場は、7200RPMの3.5型HDDになった。こうしたHDDは、利用頻度が高いデータを扱う「オンライン」HDDと、長期保存を目的とした「オフライン」HDDの中間的な役割として、ニアラインHDDと呼ばれる。
2021年のHDDに関する主なトレンドは、16TBから18TBへの移行になると業界アナリストは予測する。既に容量20TBのHDDが市販されているが、20TBのHDDが量産されて市場に本格的に流入するのは2022年か2023年ごろになるとみられる。大容量のHDDへの移行が遅れる分、容量単価が下がるのも遅くなると、同じアナリストは予測する。
業界の各専門家による、HDD市場における注目点を紹介する。
調査会社TRENDFOCUSのバイスプレジデント、ジョン・チェン氏 2021年前半には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進むことで、経済活動は平常に戻り始めるだろう。企業の支出も回復し、サーバやストレージなどの企業向け製品に加え、PCやコンシューマー向けストレージの需要も復活すると期待している。そうした動きに合わせ、7200RPMの中規模容量のニアラインHDD市場も回復する。ただしSSD(ソリッドステートドライブ)の採用拡大の影響で1万RPMや1万5000RPMのHDDは長期的に出荷が減少傾向にあるため、HDDの出荷がCOVID-19のパンデミック(世界的大流行)発生前の水準まで回復することはないだろう。
ハイパースケールのデータセンターを運営する事業者の大半は、COVID-19が流行する中でも高い成長率を維持している。こうした事業者は、2021年第2四半期(2021年4月〜2021年6月)も成長を続け、HDDとSSDの両方の需要拡大をけん引する。2021年上半期にそうした事業者向けに出荷されるHDDは16TBが中心となる見込みで、下半期には18TBへの移行が進むだろう。
16TBのHDD製品はプラッタ(円盤状の記録媒体)を9枚搭載するモデルが一般的となっており、18TBの製品も基本的にはこれを引き継ぐ。ハイパースケールのデータセンターを運営する事業者の関心は、16TBと18TBのHDDを併用するのか、それとも完全に18TBに移行するのかという点にある。18TBの製品が広く採用されれば、2022年までHDDベンダーは20TBのHDDを積極的に量産することはないだろう。
ニアラインHDD製品の価格が上がれば、HDDの容量単価を下げることはなかなか実現しない。ニアラインHDDの数世代先のモデルとして、どのHDDベンダーも10枚のプラッタと20本の磁気ヘッド(データを書き込むための装置)を採用することを視野に入れている。プラッタの記録密度を高めることに加え、新しい内部構造を採用すればコストも上がる。記録密度を高めるためにエネルギーアシスト技術(外部から何らかのエネルギーを加えることでデータの読み書きを支援する技術)を全面的に採用すれば、コストはさらに上がる。それを踏まえれば、2021年から数年はそうした大容量化の新たな技術を採用したHDDが量産されることはない。
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