大学のIT導入を成功させる5つの方法【後編】
大学のIT部門は「1つのIT製品で全てをまかなう」にこだわり過ぎてはいけない
学生と教職員のニーズを同時に満たし、規模に応じたシステムの運用や構築をするために、大学のT部門は何をすればよいのか。テネシー大学の事例を基に、そのヒントを探る。
大学がIT製品の導入を検討するとき、学生や教職員といったさまざまなエンドユーザーのニーズを考慮する必要がある。前編「大学のIT部門が『学生や学部からの反感』を買わないIT調達のこつとは?」は、大学のIT部門がIT製品導入を成功させるために考えるべき5つのポイントのうち、2つを紹介した。後編は残る3つを紹介する。前編に引き続き、後編もテネシー大学(University of Tennessee)の取り組みを参考にした。
- 学内のニーズに耳を傾ける(前編で紹介)
- 学内組織との信頼関係を構築する(前編で紹介)
- 単一製品にこだわり過ぎない
- 研修とサポートを手厚くする
- セキュリティに配慮する
方法3.単一製品にこだわり過ぎない
IT部門は基幹システムを基盤と見なし、それを拡張する機能の候補としてIT製品を評価するとよい。その際の選定条件は「基幹システムと連携できること」だ。目的を達成するために、単一のベンダーやスイートの製品ではなく、各分野で最適な選択肢を組み合わせることを「ベストオブブリード」と呼ぶ。
例えばテネシー大学は、卒業生が講義を聴講するのを支援するために、基幹システムが備える機能を利用するのではなく、複数の製品を採用することにした。卒業生のさまざまなニーズに応えやすくするためだ。
レポートやデータ分析に関しては、データのサイロ化(データが部門や業務ごとに特化し、他部門や用途で利用しづらくなること)が問題となることがある。テネシー大学は、データリポジトリにデータを集めて標準化し、そのデータを分析する仕組みを取る。データを単一の分析システムに特化させるのではなく、各部門や学部・学科がそれぞれのニーズに適したレポーティングシステムや分析システムを選べるようにしている。
方法4.研修とサポートを手厚くする
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)は、大学の学生や教職員が自宅待機せざるを得ない事態を引き起こした。この事態に対する準備が万全だったといえる大学は多くなかっただろう。
テネシー大学の学習管理システムは、COVID-19のパンデミック以前に既に確立済みで、Web会議やオンライン講義にWeb会議ツール「Zoom」を使用していた。オンライン講義で利用するツールを全てのエンドユーザーが使えるようにするのは、さほど大変ではなかったという。ただし、そうしたツールになじみのないエンドユーザーには研修を実施する必要があった。
COVID-19のパンデミックのような未曽有の状況下や新しいIT製品の導入時は、研修とサポートが担う役割が大きい。サポートチームは学生と教職員を迅速にサポートするために、問い合わせにすぐ応答できるようにするとともに、疑問を解消するためにIT製品に精通して十分な情報を持っておく必要がある。
テネシー大学はサポートチームに1回問い合わせると70%の確率で解決できるサービスレベルを保持している。同大学はエンドユーザーの研修が完了してサポートチームが問い合わせに応対できるようになるまで、新しいIT製品を導入しないようにしているという。
オンライン講義にはWebカメラ、マイク、セキュリティを確保した教材など、ITに関するサポートが必要だ。テネシー大学は専任スタッフが学生と教職員からの問い合わせに応対する時間を拡大し、オンライン講義の品質向上に取り組んでいる。
方法5.セキュリティに配慮する
一元管理する基幹システムと特定用途のシステムを併用する上で、IT部門はセキュリティに目を配らなければならない。テネシー大学はシングルサインオン(SSO)と多層構造のアクセス許可を実現するために、二要素認証を採用している。テネシー大学は「家庭教育の権利とプライバシーに関する法」(FERPA)などの法令を順守するために、個人情報保護に関する研修を強化した。
大学のIT部門には、ベストオブブリードのシステム構築に関して先入観を持たずに聞く耳を持つことをお勧めする。少数ベンダーのシステムを使用することにこだわる必要はない。重要なのは基幹システムとの相互運用性に関する指針と、法令順守のためのセキュリティ対策にこだわることだ。その考え方は、大学がITでさまざまなニーズを実現する上で役立つだろう。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー