オンライン教育の普及は、教育機関の間で「データマネジメント」や「データ分析」に関する取り組みの差を拡大させている。教育機関が直面する課題と、取り組むべき対策とは。
教育現場にはさまざまなデータが存在する。全ての教育機関が、それらのデータを有効活用できているとは限らない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を受けてオンライン教育が急速に広がった結果、データを活用するために維持管理する「データマネジメント」に関する教育機関や学区ごとの差がさらに浮き彫りになった。
「小さな学区で働く人は概して過労気味で、教育に必要なITやデータに関する取り組みに時間を費やすことができない」。調査会社Gartnerのバイスプレジデントアナリストであるケリー・J・カルホーン・ウィリアムズ氏はそう説明する。
パンデミックの中で、小規模な学区も多数のデータポイント(データの発生源)を管理することを余儀なくされている。この状況は、学区管理者からのデータ分析に対する需要の高まりを受けて発生した。そうした小規模な地区は、適切なデータマネジメントとデータ分析の実践はおろか、パンデミック前のレベルに戻るためにリソースを投入することさえままならない。
これらの地区は、経済への影響のために「今後2、3年で未曽有の資金危機に陥るだろう」とウィリアム氏は語る。「彼らはこの状況において、自らの手でなんとか全てをまかなおうとしている」(同氏)
大規模な学区も、パンデミックとそれに伴うデータポイントの急増による危機感を感じているが、人的リソースに余裕があるため比較的恵まれている。ウィリアムズ氏によると、大規模な学区には通常、ITリーダー、CIO(最高情報責任者)、テクニカルディレクターがいる。彼らは通常、データマネジメントを地区レベルで任されている。
特定の個人または部門にデータマネジメントを任せることができれば、他の従業員は自分のタスクに集中できるようになる。その結果、教育の改善に時間を費やせるようになり、そのことは学区にとっての利益につながる。学習者のデータを収集、分析するために十分な人的リソースを投入できる地区であれば、教育活動に対する理解を深める機会を増やすことが可能だ。
教員はオンライン教育という“未知の世界”で効果を出すだけではなく、新しい教育手法を実行する必要もある。全ての教育活動をオンライン教育に移行させるとなると、ここにプライバシーの問題が加わる。「オンライン教育は、学習者と保護者に新しいデータプライバシーの懸念をもたらした」と、ビデオ会議ベンダーLifesizeのCOO(最高執行責任者)であるマイケル・ヘルムブレヒト氏は述べる。
データ活用に取り組んでいる学区の場合、適切な分析によって学習者の体験の質を大幅に向上させることができる。現場レベルでの具体例として、教員が特定のテキストや授業法によって学習者個人の成績がどのように影響を受けるのかを追跡する。その上で、データ分析担当者は異なる教育手段と教員の組み合わせを調べて、学習者に対する効果を測定できる。
「教育データ」と聞くと、教育履歴や成績など、入学申請書にあるようなデータを想像する人がほとんどだろう。教育機関が入学試験のためにこれらのデータを使用することは当然だ。だが「学習者の特性や要望に合わせて教育プログラムを調整して、学習者のエクスペリエンスを向上させる方がはるかに有益だ」と、オンライン教育支援サービスベンダーAll CampusのCEO兼高等教育マーケティング担当であるジョー・ダイヤモンド氏は語る。
学習者個別のニーズを理解することは、データマネジメントやデータ分析に時間を割く余裕のある学区にとって優先事項でなければならない。「学校、教員、データマネジメント担当者は、リアルタイムと非リアルタイムの両方で教育の質を向上させるために、複数のデータポイントから得られた学習者のデータをうまく統合することが重要だ」(アンダーソン氏)
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