学校がオンライン教育中の成績評価に「データ分析」を活用 評価方法は?オンライン教育をより良くするデータ分析【中編】

初等中等教育機関にとっても新型コロナウイルス感染症対策としてのオンライン教育が急務となる中、その成果をどう評価し、改善につなげるべきか。データ分析でこれらの課題解決に挑む米学区の取り組みを紹介する。

2020年08月26日 05時00分 公開
[Kara E. JoyceTechTarget]

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教育IT | データ分析


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、世界中の教育機関でオンライン教育の実践が広がった。特にこれまでオンライン教育の経験が比較的少なかった幼稚園から高等学校までの初等中等教育機関でも、オンライン教育を強いられていることが問題になっている。オンライン教育に関するノウハウを蓄積できていない教育機関が少なくない中、各国の教育機関はさまざまな取り組みを進めている。前編「学生数2万人の大学が『データ分析』でオンライン教育を評価 その中身とは?」に引き続き、こうした教育機関の事例を紹介する。

多様なデータで成績を評価

 米バージニア州のラウドン郡公立学区(LCPS:Loudoun County Public Schools)は、学習者に主眼を置いた初等中等教育機関における教育活動のデータ分析に取り組んでいる。LCPSはオンライン教育の実践に伴い、学区内の家庭からデータを集めるためにQlik Technologiesのビジネスインテリジェンス(BI)製品を導入した。インターネットを利用できない家庭には、通信事業者が提供するモバイル無線LANルーターをLCPSが契約して家庭に支給し、学習者がオンライン教育を受けられるようにした。

 LCPSのレイチェル・ジョンソン氏によると、同学区は新型コロナウイルス感染症が流行する以前から、データ分析の活用について知見を持っていた。ただし「抜けている点もあった」とジョンソン氏は語る。感染症の拡大によって、さまざまな分野でのデータ分析活用が爆発的に普及したからだ。新型コロナウイルス感染症の流行以前、LCPSが教育分野でデータ分析に使用していたのは、主に教員免許や学習者の成績、在籍者数などの基本的なデータだ。ジョンソン氏によると、現在は非常食の供給や無線LANルーター管理に注力している。

 教育機関が分析対象にするデータの代表例が、学習者の成績だ。学校が休校になっているとき、成績をどのように評価するのだろうか。

 LCPSは最終的な成績評価に使用する3つの選択肢を保護者と学習者に提示した。LCPSはQlik TechnologiesのBI製品のダッシュボードを使用して、ロックダウン(都市封鎖)による休校以前の履修内容に基づき、学習者の成績を算出するシステムを開発した。

 「保護者、スクールカウンセラー、教員がそれぞれ違った視点からデータを閲覧できるようにするためには、創意工夫を凝らす必要があった」とジョンソン氏は話す。LCPSは学習者のエンゲージメント(学びに対する主体的な取り組み)を評価する取り組みとして、学習管理システム(LMS)やソーシャルメディアなど複数の情報源からデータを収集している。

 ジョンソン氏によると、エンゲージメント評価に向けたデータ分析は難航している。現時点ではオンライン教育のエンゲージメント成果指標を設定できていないことが背景にある。「教育による成長を判定できる基準がない段階で、エンゲージメントを評価するのは容易ではない」(同氏)

 初等中等教育機関がオンライン教育を進める上で考慮すべき事項に、障害のある学習者一人一人に合わせた個別教育計画「Individual Education Programs」(IEP)の作成と、その順守がある。「全ての学習者を対象としたLMSで作成するレポートでは、障害のある学習者に合わせた評価が困難だからだ」とジョンソン氏は説明する。LCPSはLMSとは別の分析ツールを使用して、障害のある学習者のエンゲージメント評価を実現しようとしている。

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