オンライン教育をより良くするデータ分析【中編】
学校がオンライン教育中の成績評価に「データ分析」を活用 評価方法は?
初等中等教育機関にとっても新型コロナウイルス感染症対策としてのオンライン教育が急務となる中、その成果をどう評価し、改善につなげるべきか。データ分析でこれらの課題解決に挑む米学区の取り組みを紹介する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、世界中の教育機関でオンライン教育の実践が広がった。特にこれまでオンライン教育の経験が比較的少なかった幼稚園から高等学校までの初等中等教育機関でも、オンライン教育を強いられていることが問題になっている。オンライン教育に関するノウハウを蓄積できていない教育機関が少なくない中、各国の教育機関はさまざまな取り組みを進めている。前編「学生数2万人の大学が『データ分析』でオンライン教育を評価 その中身とは?」に引き続き、こうした教育機関の事例を紹介する。
多様なデータで成績を評価
米バージニア州のラウドン郡公立学区(LCPS:Loudoun County Public Schools)は、学習者に主眼を置いた初等中等教育機関における教育活動のデータ分析に取り組んでいる。LCPSはオンライン教育の実践に伴い、学区内の家庭からデータを集めるためにQlik Technologiesのビジネスインテリジェンス(BI)製品を導入した。インターネットを利用できない家庭には、通信事業者が提供するモバイル無線LANルーターをLCPSが契約して家庭に支給し、学習者がオンライン教育を受けられるようにした。
LCPSのレイチェル・ジョンソン氏によると、同学区は新型コロナウイルス感染症が流行する以前から、データ分析の活用について知見を持っていた。ただし「抜けている点もあった」とジョンソン氏は語る。感染症の拡大によって、さまざまな分野でのデータ分析活用が爆発的に普及したからだ。新型コロナウイルス感染症の流行以前、LCPSが教育分野でデータ分析に使用していたのは、主に教員免許や学習者の成績、在籍者数などの基本的なデータだ。ジョンソン氏によると、現在は非常食の供給や無線LANルーター管理に注力している。
教育機関が分析対象にするデータの代表例が、学習者の成績だ。学校が休校になっているとき、成績をどのように評価するのだろうか。
LCPSは最終的な成績評価に使用する3つの選択肢を保護者と学習者に提示した。LCPSはQlik TechnologiesのBI製品のダッシュボードを使用して、ロックダウン(都市封鎖)による休校以前の履修内容に基づき、学習者の成績を算出するシステムを開発した。
「保護者、スクールカウンセラー、教員がそれぞれ違った視点からデータを閲覧できるようにするためには、創意工夫を凝らす必要があった」とジョンソン氏は話す。LCPSは学習者のエンゲージメント(学びに対する主体的な取り組み)を評価する取り組みとして、学習管理システム(LMS)やソーシャルメディアなど複数の情報源からデータを収集している。
ジョンソン氏によると、エンゲージメント評価に向けたデータ分析は難航している。現時点ではオンライン教育のエンゲージメント成果指標を設定できていないことが背景にある。「教育による成長を判定できる基準がない段階で、エンゲージメントを評価するのは容易ではない」(同氏)
初等中等教育機関がオンライン教育を進める上で考慮すべき事項に、障害のある学習者一人一人に合わせた個別教育計画「Individual Education Programs」(IEP)の作成と、その順守がある。「全ての学習者を対象としたLMSで作成するレポートでは、障害のある学習者に合わせた評価が困難だからだ」とジョンソン氏は説明する。LCPSはLMSとは別の分析ツールを使用して、障害のある学習者のエンゲージメント評価を実現しようとしている。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
7
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
-
8
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
9
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
10
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー