戦時下においても事業を継続しているEdTech企業が、ウクライナのKeikiだ。同社のIT幹部は「戦争は技術的な面では事業に影響しなかった」と語る。その理由は何か。
前編「戦渦で従業員が疎開――ウクライナのEdTech企業は事業をどう継続したか」に続き本稿も、ウクライナのEdTech(教育とITの融合)ベンダーKeikiの取り組みを基に、有事でも企業がレジリエンス(回復力)を持って事業を継続する方法を探る。同社は、幼児や未就学児を対象としたスマートフォン向け教育ゲームアプリケーションを開発する企業だ。
「戦争は、当社の技術的な決定に影響を与えなかった」。Keikiでテクニカルリーダーを務めるオレクサンドル・シトニク氏は、こう言い切る。全ての事業に必要なシステムをクラウドサービスで運用しているためだ。同社は事業用のインフラに、Amazon Web Service(AWS)が提供するクラウドサービスを利用している。「インフラにかかるコストを抑えつつ、スケーラビリティを高められる」とシトニク氏は説明する。
KeikiはUnity Technologiesが提供するゲームの開発環境「Unity」を使った、スマートフォン向けゲームアプリケーションの開発を手掛ける。Keikiはゲームアプリケーションで活用するデジタルコンテンツをUnityのアーカイブファイル「AssetBundle」に格納し、AWSのクラウドストレージサービス「Amazon S3」にアップロードしている。エンドユーザーがKeikiのゲームアプリケーションをインストールすると、ゲームアプリケーションはAssetBundleに保管されているデジタルコンテンツの一部をダウンロードする。
デジタルコンテンツの更新は、リモート設定で継続している。オープンソースのCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ツール「Jenkins」やオープンソースのスマートフォンアプリケーション向けデプロイ支援ツール「Fastlane」を利用して、「アプリケーション開発とテストを最適化している」と、KeikiのUnity責任者セルギー・ポタポフ氏は説明する。
Keikiは独自のスマートフォンアプリケーション用バックエンドシステムを持っており、これを使ってエンドユーザーのアクセス分析をしている。「当社はロシアからアクセスする全てのエンドユーザーを数時間でブロックし、ウクライナからアクセスするエンドユーザーは無料で利用できるように設定した」(ポタポフ氏)
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