ハードウェアの運用管理や保守、システムの拡張などにかかる手間を解消することを目的に、社内や組織内にあるシステムのほぼ全てをクラウドに移行することは、今では珍しい選択肢ではなくなってきた。学校法人片柳学園が運営する東京工科大学は、そのような選択肢をいち早く取った組織の一つだ。同大学は、2015年に業務システムのほぼ全てをMicrosoftのパブリッククラウド「Microsoft Azure」(Azure)に構築した中核データベースと、各種SaaS(Software as a Service)を組み合わせたクラウド環境に移行した。「IT担当者がゼロ人になった」のはこのクラウド移行の成果の一つだ。同大学はどのようなシステムを構築し、5年間どのように運用し、どのような成果を得たのか。
東京工科大学は現在、Oracleのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の「Oracle Database」で構築した中核データベースを、Azureの仮想マシン環境で運用している。この中核データベースで在籍学生の情報を管理し、SaaSで運用する各種業務システムを連携させる構成だ。リコーの図書館用システム「LIMEDIO」や、日鉄ソリューションズの学校事務システム「NSAppBASE for CampusSquare」などの各種SaaSが中核データベースとデータ連携する(図)。
コンピュータサイエンス学部教授の田胡和哉氏はAzureを選択した理由の一つとして、長きにわたり業務に利用してきたオフィススイート「Microsoft Office」との親和性が高いことを挙げる。例えばMicrosoft OfficeのSaaS版である「Office 365」は、AzureのID管理サービス「Azure Active Directory」でアカウントを管理できる。これに加えて「ベンダーの歴史が長く、クラウドサービス自体も長い間存続すると考えられるため、中核データベースを安定して運用できそうだと考えたことも採用を後押しした」という。
クラウド移行の検討を開始したのは2012年ごろだった。当時利用していたソフトウェアのライセンス契約が終了することや、ハードウェアの故障が頻発していることなどがきっかけとなった。数年置きにリプレースの手間が発生することも悩みだった。
当時のシステムはモノリシック(一枚岩)で、業務改善につながる新しい機能を盛り込むためには大掛かりな改修が必要だった。「業務システムをSaaSに移行することで、より業務に適したアプリケーションを追加したり、入れ替えやすくしたりする狙いもあった」と田胡氏は話す。
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