遠隔医療への投資計画を考える【後編】
「遠隔診療」が普及しても「対面診療」をおろそかにできない“シンプルな理由
遠隔医療サービスを提供する医療機関では、遠隔診療と対面による診療が混在することになる。遠隔診療で生じる課題とその解決策について、2つの医療機関の事例を基に考える。
Penn State Healthは、米国のペンシルバニア州に拠点を置き、複数の医療機関を運営する医療法人だ。125カ所の医療施設を運営し、2300人を超える医療従事者が在籍する。同法人は遠隔診療などの遠隔医療を実現するため、Zoom Video Communicationsが提供するWeb会議アプリケーション「Zoom」の医療機関向けプランとAmerican Well(Amwell)が提供する遠隔医療システムを利用している。
電子健康記録とのデータ連携が課題に
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遠隔医療を導入した医療機関の事例
電子健康記録(EHR)を使うべき理由
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する前、Penn State Healthは緊急治療が必要な患者や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者向けの限定的な遠隔医療サービスにAmwellの遠隔医療システムを使用していた。同院はCOVID-19のパンデミックをきっかけとして、一般的な患者を対象とした遠隔医療サービスにもAmwellの遠隔医療システムを組み込むと同時に、Zoomを導入した。いずれの遠隔医療システムもHIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)に準拠している。
Penn State Healthの運営部門でバイスプレジデントを務めるクリス・ラコー氏によると、同法人は2020年、過去の3~4年よりも多くの遠隔医療サービスを実施した。同法人の遠隔医療サービスの登録者数は10万人を超えたという。
遠隔医療サービスに関連して、Penn State Healthは患者が抱える技術的問題のトラブルシューティングを支援することを2021年の事業計画に組み込んでいる。さらに2つの遠隔医療システムをCernerの電子健康記録(EHR)システム「Millennium」とデータ連携させ、遠隔医療で得られる患者データの記録を容易にすることも計画している。ラコー氏は、こうした計画が遠隔医療サービスを持続する鍵になると考える。
ラコー氏によると、遠隔医療サービスを提供するために複数ベンダーのEHRシステムを利用していることが同法人の課題だ。「ベンダーと協力し、どうすれば業務の効率が上がり、効果的な治療を患者に提供できるどうかかを模索している」(同氏)
遠隔診療と対面診療のバランス
遠隔診療を導入した医療機関では、遠隔診療と対面の診療が混在することになる。米国テキサス州に拠点を置く医療機関のUT Health Austinで最高情報責任者(CIO)を務めるアーロン・ミリ氏は「遠隔診療と対面診療のバランスを取ることが、2021年の最も重要な課題になる」と話す。
ミリ氏によると、遠隔診療は診療内容によっては、迅速に診療行為ができる点や患者がどこにいても診療できる点でメリットが大きい。ただし婦人科をはじめ複雑かつ機密度の高い診療項目を頻繁に扱う分野では、遠隔診療が最善の選択肢にならないこともあるという。
遠隔医療の導入が進むことで、医療の現場は病院外へと広がり続ける。「適切な診療場所と適切な診療タイミング、適切な治療方法を選択することは依然として必要となる」とミリ氏は強調する。
慢性疾患を抱える患者や日常的な治療が必要な患者が遠隔医療の主な対象になると、調査会社のForrester Researchでアナリストを務めるアリエル・トルツィンスキー氏は見解を述べる。「これがヘルスケアのニューノーマル(新常態)になる」(トルツィンスキー氏)。同氏によると、遠隔医療が適している場合は、遠隔医療の実施が最優先になる。遠隔医療が適していない場合は、医療機関は患者に来院してもらう方法を考える必要がある。
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