バックアップでランサムウェア攻撃を乗り越える【前編】
ランサムウェア被害のCIOが明かす「わが郡はランサムウェアにこう攻撃された」
ランサムウェア攻撃を受けた米カリフォルニア州のユバ郡。同郡はランサムウェアに何がどう攻撃されたのか。同郡のCIOがつまびらかにする。
IT管理者にとって真夜中にかかってくる電話は悪夢だ。米カリフォルニア州ユバ郡のIT部門は、保安官事務所から「システムを利用できない」との連絡を受けた。2021年2月のある日、午前2時30分ごろのことだ。同郡を襲い、システムをロックしたのは、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)「DoppelPaymer」だった。
攻撃の前日にユーザー認証の問題、管理者アカウントが不正作成
バックアップベンダーのRubrikが2021年5月にオンラインで開催したユーザー向けカンファレンス「Rubrik Forward」で、ユバ郡の最高情報責任者(CIO)であるポール・ラバレー氏はこのランサムウェア攻撃について語り、「バックアップしていたデータは100%復旧できた」と説明した。
世の中には、ランサムウェア攻撃を受けても、さまざまな理由でそれをオープンにしない組織がある。ラバレー氏は、自らの体験をあえて共有することを決心した。「将来のランサムウェア攻撃を防ぎ、切り抜ける助けになりたい」という思いからだ。
カリフォルニア州都サクラメントの北に位置するユバ郡は、7万人以上の人口を有する。同郡のIT部門には16人の職員が勤務。同郡の全部門のシステムを管理している。最も重要なのは、保安官事務所や救急サービス、保健所など、公共の安全を支える部門だ。これらは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行の中、特に重要な役割を果たしている。
ユバ郡が受けたランサムウェア攻撃の始まりは、2021年1月のこと。最初に感染したのは、同郡の建築部門のPCだった。ラバレー氏は、感染源はメールではなく、ファイルだった可能性が高いとみる。建築部門では日々、さまざまな関係者との間で膨大なファイルをやりとりしており、感染したファイルが混ざっていた可能性がある。
ランサムウェア攻撃が見つかる前日、ユバ郡ではMicrosoftのディレクトリサーバ/ID・アクセス管理製品群「Active Directory」でユーザー認証の問題が起きていた。だがラバレー氏は「その時点では攻撃の一端だとは認識していなかった」と語る。
攻撃者は不正な管理者アカウントを作成し、ユバ郡の50台のPCと100台のサーバを暗号化した。ユバ郡IT部門のスタッフはランサムウェア攻撃を受け、全てのサーバを直ちにLANから切断。マルウェアからの修復プロセスを開始した。サーバの約95%が仮想マシンだったため、切断は比較的容易だったという。その後、IT部門はまず、攻撃より2週間前のバックアップからActive Directoryのデータを復旧した。
次は、不正に作成されていた管理者アカウントを無効化した。ユバ郡の取引先の企業や市民にランサムウェア攻撃についての通知を送り、米連邦捜査局(FBI)といった政府機関へ情報を提供した。同時に米国外と接続する全てのネットワークからシステムを遮断した。復旧プロセスの中には、攻撃の手口や経緯を分析するための証拠も集めた。
中編は、ユバ郡のランサムウェア対策の要となったバックアップ製品の効果を紹介する。
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