クラウドストレージ選びの基本
クラウドストレージサービス選びにとって重要な指標
クラウドストレージサービスの比較にストレージのスペックを単純に適用することはできない。クラウドならではの複雑性を理解し、重視するポイントを絞る必要がある。
クラウドストレージは柔軟性が高く費用対効果も優れている。「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Cloud Platform」(GCP)、「Microsoft Azure」のようなハイパースケーラーだけでなく、多くのクラウドプロバイダーが選択肢に入る。
クラウドストレージサービスのパフォーマンスはどのように測ればよいのか。オンプレミスの場合、ストレージのパフォーマンスを追跡できるさまざまな指標が確立されている。クラウドではそれらが明確にならないことがある。
クラウドストレージの比較と監視はオンプレミスのそれよりも難しくなる可能性がある。IT担当者は、ストレージパフォーマンスの従来の指標であるIOPSやスループットなどに加えて、コスト、サービスの可用性、セキュリティなども考慮する必要がある。
従来のストレージ指標
ストレージの従来の指標(訳注)はクラウドにも当てはまる。
訳注:詳しくは「ストレージパフォーマンスの比較にとって重要な5つの指標」を参照。
ストレージの「速度」については、スループットとIOPSという2つの主な測定値がある。スループットはデータ転送速度のことで、1秒当たりのバイト数で測定される。IOPSでは1秒当たりの読み書き数、つまり入出力(I/O)操作回数を測定する。
ハードウェアメーカーは読み取り速度と書き込み速度を区別しており、通常は読み取り速度の方が速い。加えてシーケンシャル/ランダムも区別する。
これらの指標はディスクの読み取り/書き込みヘッドの動き、フラッシュストレージにおける既存データの削除の必要性などの影響を受ける。実パフォーマンスの最善の指針はランダム読み取り/書き込みのパフォーマンスだ。
HDDメーカーは、1分間当たりのディスク回転数(rpm)をスペックとして提示する。メインストリームのストレージには7200rpm、高品質のエンタープライズシステムには1万2000rpm、低パフォーマンスのハードウェアには5400rpmのHDDが使われる。この測定値はSSDには当てはまらない。
IOPSは、HDDならば50~200の範囲になる。SSDはパフォーマンスが大幅に高くなる。ハイパフォーマンスのSSDは理論上、2万5000以上のIOPSを実現する可能性がある。ただしストレージコントローラーやネットワーク、RAIDやキャッシュメモリなどのオーバーヘッドを考慮に入れると、実際の差は少なくなる。
考慮すべきもう一つの重要な測定値がレイテンシだ。レイテンシは各I/O要求が実行される速さを表す。HDDの場合、レイテンシは10~20ミリ秒になる。SSDの場合、レイテンシは数ミリ秒だ。レイテンシはストレージがアプリケーションをサポートできるかどうかを判断する重要な指標になることが多い。
クラウドの指標
ストレージの従来の指標をクラウドに単純に適用できることはほとんどない。
クラウドストレージユーザーは、利用する容量がどのようにプロビジョニングされるかを正確に把握することはないだろう。フラッシュ、HDD、テープ、光メディアをどのように混在させるかはクラウドプロバイダー次第であり、サービスレベルによっても異なる。
大規模クラウドプロバイダーの多くは、ストレージ、キャッシュ、負荷分散などの技術を組み合わせて運用する。そのためハードウェア自体のパフォーマンスデータはほとんど役に立たない。また、ブロック、ファイル、オブジェクトという異なるストレージフォーマットが測定値の比較をさらに難しくする。
バックアップ/リカバリーとアーカイブに重点を置くサービスもある。こうしたサービスにはROT(目標復旧時点)や取得時間などの独自の指標がある。
大規模クラウドプロバイダー同士なら、ブロックストレージを比較するのが最も簡単だ。
GCPはブロックストレージ(https://cloud.google.com/compute/docs/disks/performance)について、最大持続IOPSと最大持続スループット(MBps単位)を示している。この2つの指標は、
- 1GB当たりの読み取りIOPSと書き込みIOPS
- 1GB当たりの読み取りスループットと書き込みスループット
- 1インスタンス当たりの読み取りIOPSと書き込みIOPS
- 1インスタンス当たりの読み取りスループットと書き込みスループット
に細分化される。だが、Googleは「永続ディスクのIOPSとスループットパフォーマンスはディスクサイズ、インスタンスvCPU数、I/Oブロックサイズなどの要因によって決まる」としている。
Googleは7200rpmの物理ディスクを基準にしてパフォーマンスを比べた便利な比較表も提示している。
Microsoftは「Azure Blob Storage」の監視を希望するITユーザーを対象としたガイダンス(https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/blobs/monitor-blob-storage)を公開している。このガイダンスはAzureでストレージパフォーマンスを測定(https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/blobs/monitor-blob-storage-reference)する際の便利な入門書になる。
AWSも「Amazon Elastic Block Store」に関して同様のガイダンス(https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/AWSEC2/latest/UserGuide/EBSPerformance.html)を提供している。
コスト、サービスの可用性などの有用な測定値
クラウドストレージは従量制サービスなのでコストは常に重要な指標になる。
主要クラウドプロバイダーはコストとパフォーマンスに基づく階層を用意している。AWSは、汎用(はんよう)SSDボリュームには「gp2」と「gp3」を、パフォーマンス最適化ボリュームには「io1」と「io2」を、「大規模シーケンシャルワークロード」を目的とするスループット重視のHDDボリュームには「st1」を用意している。ユーザーは、類似サービスを比較するためにコストとパフォーマンスについて独自の分析をまとめたいと考えるだろう。
だが、クラウドストレージの指標となるのはコストとパフォーマンスだけではない。1GB当たりまたは1インスタンス当たりのコストを考える場合、データイングレスコストとデータエグレスコスト、つまりデータを取り出すコストなども考慮する必要がある。非常に安価で長期間利用できるストレージサービスの中には、データをクラウドから取り出す際に非常に高額を請求されるサービスもある。
使用可能な容量も指標の一つだ。実際にクライアントアプリケーションで使える量はどの程度か、使用率がどこまで高まったらパフォーマンスに影響し始めるかなどが重要だ。繰り返しになるが、この数値はオンプレミスでの数値とは異なる可能性がある。
CIO(最高情報責任者)は、サービスの可用性にも着目すべきだ。ストレージコンポーネントとサブシステムの信頼性は、これまでMTBF(平均故障間隔)で測定されてきた。SSDの場合は時間経過によるTBW(Total Bytes Written)で測定される。
大規模クラウドプロビジョニングの場合、可用性はもっと一般的で有用な測定値になる。データセンター形式や電気通信形式の可用性や稼働時間の測定値を利用するクラウドプロバイダーが増えており、多くの場合は99.999%が最善かつ最高額のSLAだ。
とはいえ、考慮すべき要素はこれらの指標だけではない。クラウドストレージユーザーは地理的位置、冗長性、データ保護とコンプライアンス、セキュリティ、クラウドプロバイダーの財務の堅牢(けんろう)性も考慮すべきだろう。
こうした要素は、従来の感覚ではパフォーマンスの指標ではない。だが、こうした要素のいずれかがプロバイダーに欠けていると、そのプロバイダーのサービスを利用する上で障害になる恐れがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
7
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
8
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー