2020年06月17日 08時00分 公開
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マルチクラウドストレージがとてもオススメな理由失敗しないための注意点は?

複数のクラウドサービスを組み合わせた「マルチクラウドストレージ」には多くのメリットがある。そのユースケースと失敗しないための注意点を解説する。

[Rene Millman,Computer Weekly]
iStock.com/Alessandro2802

 企業は、何が起こっても業務を継続できるようにする必要がある。そのため何十年にもわたって冗長性を取り入れ、1つのプロバイダーに依存しないようにしてきた。この原則はクラウドにも当てはまる。

 マルチクラウドストレージを使うことで、世界中のクラウドの優れた点のみ取り入れ、複数の環境がもたらす機会を活用できる。

 マルチクラウドストレージはその名が示す通り、複数のクラウドを使ってデータを保存する方法を指す。この定義を理解するのは簡単だ。だがそこには複雑さも潜んでいる。多数のクラウドにデータを分散させて管理するプロセスを導入しなければならない。

 マルチクラウドは、全てをパブリッククラウドにすることも、全てをプライベートクラウドにすることも、その両方を混在させることも可能だ。インフラ、ソフトウェア、データなど、業務のさまざまな分野で異なるクラウドプロバイダーを利用できる。ユーザーは個別のプロバイダーに分散してデータを保存できる。各プロバイダーから個別に得られるメリットもあれば、全てを接続することで得られるメリットもある。

 エンドユーザーが関係する場合、データの保存先が問題になってはならない。ユーザーは、それがローカルファイルなのかAmazon Web Services(AWS)の「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)オブジェクトなのか、Microsoftの「Azure Blob Storage」なのかを知る必要はない。認証、シングルサインオン、ポリシー適用、検索などの実行方法を意識する必要があってもならない。

 クラウドベースアプリケーションについても同じことが言える。データの保存先が同じパブリッククラウドでも別のパブリッククラウドでもオンプレミスでも、保存先に関係なくデータにアクセスできる必要がある。オンプレミスアプリケーションにも同じ理屈が当てはまる。

 AWSがクラウドインフラサービスをリードしているのは疑いようがない。Gartnerによると、AWSは2018年に47%という広大な市場シェアを獲得しているという。ただしMicrosoftとAlibaba Cloudがこのリードを徐々に詰めている。

 「Microsoft Azure」は、リスクを嫌ってクラウドの導入を控えていた企業がクラウドに移行するにつれ、そのシェアを拡大している。HPEやDell EMCなど、従来のハードウェアサプライヤーの多くもサービスを提供している。

マルチクラウドのメリットと落とし穴

 マルチクラウドストレージは、企業に多種多様なメリットをもたらす。企業は、さまざまなパブリッククラウドプロバイダーから最善のクラウドサービスを厳選できる。データを移動しやすいため、サプライヤーへのロックインに対する不安も解消できる。

 マルチクラウドストレージは、サプライヤーリスクも軽減する可能性がある。あるクラウドプロバイダーで地域規模の障害が発生しても、別のクラウドプロバイダーは稼働し続けている可能性がある。最初のプロバイダーが停止している間も、速度こそ低下するものの顧客は業務を継続できる。

 ただし、マルチクラウドストレージを扱う際に企業がよく経験する課題も幾つか存在する。最初の一つは、設計ではなく成り行き任せに計画を立てることだ。

 マルチクラウドストレージ戦略を用意しなければ、企業全体の要件ではなく個々の意思決定者の好みに基づいてクラウドストレージを選択することになり、すぐに立ち行かなくなるだろう。その結果、ITチームがデータの場所やその所有者を把握していなかったり、アクセス制御や暗号化ポリシーに対する制御がなかったりする事態になりかねない。

 成り行き任せにマルチクラウドを導入すると、ストレージ管理業務が無駄に重複する恐れがある。データが適切にバックアップされなかったり保護されなかったりするような、ずさんなデータ管理につながることもあり得る。

 管理面では、複数のクラウドストレージサービス共通のデータ管理ツールを使用する必要がある。特定のサービスでしか機能しないツールは使うべきでない。各アプリケーションのパフォーマンスも把握しておく必要がある。それを怠れば、不要なストレージに費やすコストが増える結果になりかねない。

 マルチクラウドストレージのセキュリティ障害もまた、財務面でも評判の面でも企業にとって損失になることがある。いつ、どこに、どんなデータが存在していて、それにどのようなアクセス制御を行っているかを把握できるように、ポリシーと制御を含む適切なセキュリティ戦略が必要だ。

ストレージのユースケース

 複数のクラウドを使うことでストレージインフラを改善できる。これには次の方法がある。

バックアップとアーカイブ

 マルチクラウドストレージの主な用途はバックアップとアーカイブだ。このユースケースでは、コストの低減、信頼性の向上、簡略化が進む。データはオフサイトにレプリケートされるため、テープストレージよりも低コストになる。同時に、保持期間と復旧時点が改善する。

回復性

 データを複数の場所に保管すると、データの保存に伴うリスクの軽減に大いに役立つ可能性がある。あるクラウドストレージサービスで障害が発生しても、他の場所に保存しているデータには影響しない。

コンプライアンス

 厳格なデータプライバシー規則が増えている今、規制要件を満たすには特定の地域にデータを保存する必要がある。大半のデータは1つのクラウドストレージサービスプロバイダーを使って1つの国に保存できるが、そうしたデータの一部は別の国にある別のクラウドに保持しないとその地域の規制に準拠できない場合がある。

さまざまなストレージアプローチ

 マルチクラウドストレージには、コスト管理やデータ移行など、多くの課題がある。つまり、適切な戦略を実現するアプローチは複数存在する。

 Teradataでクラウドマーケティング部門のディレクターを務めるブライアン・ウッド氏によると、全体の作業を切り分けることで、作業ごとにマルチクラウドストレージの長所とコスト効率を生かせるようになるという。これは環境内にも環境間にも当てはまる。

 「Amazon S3、Azure Blob Storage、『Google Cloud Storage』などの低コストのオブジェクトストアは、価値が低いデータや価値が未知のデータを保存するのに理想的だ。一方、『Amazon Elastic Block Store』(Amazon EBS)や『Azure Premium Storage』など、パフォーマンスもコストも高いブロックストレージは頻繁にクエリを実行する価値が高いデータに最適となる」(ウッド氏)

 Panzuraの最高製品責任者を務めるリッチ・ウェバー氏は、企業で新しい重要なベストプラクティスが確認されていると話す。それは、ファイラーを物理的な作業場に配置するというものだ。それによって、そのファイラーからコンピューティングクラウドと同じデータにアクセスできるようになる。

 「アプリケーションやコンピューティングワークフローをコンピューティングクラウドに移行し始めると、どのプロバイダーを利用していても、そうしたコンピューティングクラウドはハイブリッドなオンプレミスサイトと何ら変わらなくなる」と同氏は説明する。

 クラウド間でデータを読み取るたびに、そうしたデータをインターネット経由で読み取っているのと実質的に同じになる。つまり、エグレス料金(データセンターから出ていくデータに発生する料金)が発生する。そうしたデータに頻繁にアクセスする場合、そのネットワークコストが実際のストレージコストを超えることもある。

 「ファイラーの役割は全てをローカルにキャッシュすることだ。それによってこれらのコストと遅延が削減される。平均すると、企業はリモートクラウドからの読み取り時間の95%を不要にできることを確認している。結果として、それらのエグレス料金が節約される」(ウェバー氏)

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