ストレージパフォーマンスの比較にとって重要な5つの指標ストレージ選びの基本

多彩なストレージの中からどれを選ぶべきか。選定の要件は複雑化する一方だが、パフォーマンスに関しては5つの指標に集約できる。

2021年08月13日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 ストレージへの投資はコスト、パフォーマンス、容量のバランスの問題になる。だがSSDとクラウドストレージサービスの進化に伴って評価方法は複雑化している。それでも、ストレージパフォーマンスには重要な指標と定義があり、それを使えば技術とメーカーの比較はシンプルになる。

 本稿では、ストレージパフォーマンスの有用な指標として容量、スループット、1秒当たりのI/O操作とレイテンシ、故障の平均修復時間と総書き込み回数、フォームファクターと接続性について考えてみる。これらの中には、主にオンプレミスの評価に利用するものもあればクラウドに適用するものもある。

1.ストレージ容量

 全てのストレージには容量の測定値がある。現在のストレージは主にギガバイト単位またはテラバイト単位で測定される。キャッシュメモリなどはメガバイトが使われている。

 1GBは1000MB、1TBは1000GBに相当する。1PBは1000TBに相当し、大容量ストレージは「ペタバイトクラス」と称されることも多い。1PBのストレージがあれば、2000年間再生されるMP3ファイルを保存できる。

 大半のストレージメーカーは容量を1000単位に丸めている。ただし2のべき乗で単位を表す製品もあるので注意が必要だ。キビバイト(kiB)は1024バイト、つまり2の10乗バイトを表し、メビバイト(MiB)は1024の2乗バイト、ギビバイト(GiB)は1024の3乗バイトを表す。幸い、テラバイト以上では10進数のみが使われ、10のべき乗が適用される。

 ストレージ容量はドライブやアレイ、ボリューム、SAN(ストレージエリアネットワーク)などのシステム全体やクラウドインスタンスのプロビジョニング済みストレージにも適用される。

2.スループット

 ストレージだけではほとんど役に立たない。CPUなどの処理機構とデータを入出力できなければならない。

 スループットは1秒間に読み取り/書き込みできるビット数だ。SSDの場合は読み取りと書き込みの速度が異なり、通常は書き込み速度の方が遅い。

 読み取り速度と書き込み速度の重要性は用途によって決まる。産業用カメラなどは書き込みが速いストレージを必要とするのに対し、アーカイブデータベースは読み取り速度を重視する。

 ただし、メーカーは平均ブロックサイズに基づいてスループットを計算している。これは誤解を招きかねない。スループット(またはIOPS、後述)は「平均」サイズベースと小さなブロックサイズベースで値に差が生じる。実際のワークロードでは、これが大きな違いになる恐れがある。

 メーカーは、読み取り速度と書き込み速度をランダムアクセスとシーケンシャルアクセスでも区別している。

 シーケンシャルアクセス速度は、連続するデータブロックの読み取り/書き込み速度を表す。シーケンシャルアクセスは動画ストリームやバックアップデータなど、サイズが大きいファイルおよび連続データに有用な測定方法だ。

 ランダムアクセス速度は、実際のパフォーマンスのより現実的なガイドになることが多い。特にローカルストレージの場合はそうだ。ランダムアクセスの場合、SSDの方がHDDよりもパフォーマンスが優れている。

3.IOPSとレイテンシ

 もう一つの「速度」の測定方法として1秒当たりのI/O操作数(IOPS)がある。IOPS値が高いほどパフォーマンスが優れている。一般的なHDDのIOPSは50〜200だが、RAIDやキャッシュメモリを使えばこれを大幅に向上させることができる。SSDは1000倍以上高速になる。ただし、IOPS値が高いほど価格も高くなる。

 IOPSの測定値はスループットと同様、読み書きするデータの量によって変動する。

 レイテンシは、I/O要求がどの程度迅速に実行されるかを表す。実際のアプリケーションパフォーマンスとして最も重要な指標はレイテンシだとアドバイスするアナリストもいる。SNIA(Storage Networking Industry Association)はレイテンシを「SSDのハートビート」と表現している。

 HDDのレイテンシは10ミリ〜20ミリ秒だ。SSDの場合は数ミリ秒だが、実際のアプリケーションでは約1ミリ秒を想定することになる。

4.MTBFとTBW

 平均故障間隔(MTBF)は多くの業界で信頼性を表す重要な指標になる。

 ストレージの場合、通常は電源をオンにしてから故障が発生するまでの動作時間を表す。ドライブは修理できないため、障害時はドライブを交換してデータを修復することになる。RAIDなどのストレージサブシステムはMTBFも異なる。

 HDDの一般的なMTBFは約30万時間だが、技術が新しいほどこの時間も長くなる。120万時間から120年に及ぶものもある。

 MTBFを使わないメーカーもある。Seagate TechnologyはAFR(Annualized Failure Rate)を指標にしている。AFRは、顧客側の問題(停電による損傷など)を除き、「メーカー側の原因」で1年間に現場で故障するドライブの割合を予測する。

 SSDは物理特性が異なるため耐久性で測定される。時間経過によるTBW(Tera Byte Written)はSSDの有効期間を表す。DWPD(Drive Writes Per Day)はドライブ全体をその有効期間内に何回再書き込みできるかに基づく。メーカーはハードウェアの保証として、通常こうした指標を記載している。

 フラッシュの世代によって耐久性は異なる。一般にSLC(シングルレベルセル)が最も耐久性に優れ、MLC(マルチレベルセル)、TLC(トリプルレベルセル)、QLC(クアッドレベルセル)と小さなセルに多くのアクティビティーを詰め込んで容量を増やすほど耐久性が低下する。ただし、eMLC(enterprise Multi-Level Cell)などの技術によって耐久性は全タイプで向上している。

5.フォームファクターと接続性

 パフォーマンスの指標ではないが、ストレージをシステムに接続する方法も検討する必要がある。

 ノートPCの代表的なフォームファクターは2.5インチSSDで、ストレージアレイでもこれが一般的だ。3.5インチドライブベイは引き続きHDDで利用可能だ。これらのドライブはインタフェースにSATAを使用し、エンタープライズアプリケーションの場合はSASを利用する。U.2コネクターは2.5インチSSDで使用される場合が多く、M.2とは異なりホットスワップできる。M.2はインタフェースにPCI Express Mini Cardを使用する。

 NVMeはストレージ(通常はNANDフラッシュ)とホストをPCIeバスで接続するインタフェースで、U.2機器はNVMeインタフェースも使うことができる。

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