このまま“オフィス回帰”が進んでいいのか
「テレワーク廃止論」に大多数が賛同――その危険な現実
かねて議論されてきた「テレワーク継続かオフィス回帰か」に関して、大多数の企業がある決断を下そうとしている兆候がある。テレワークを希望する働き手が少なくない中、何が変わろうとしているのか。
テレワークを継続するのかオフィス回帰を進めるのか――。働き方に関する方針は企業それぞれの判断によるものだ。だがある時期をめどに、大多数の企業がオフィス回帰の計画を進めようとしている兆候がある。一方では、その動きをとどまらせようとする議論も浮上している。働き方は今、どう変わろうとしているのか。
「テレワーク廃止論」に大多数が賛同――この現実が危ない理由とは
履歴書作成ツールを提供するWebサイト「ResumeBuilder.com」を運営するBOLDが2023年8月に公開した調査結果によると、84%の企業が、2024年末をめどとしたオフィス回帰に向けて活動している。調査時点で、既に36%の企業は週5日のオフィス勤務を義務付けていた。ただし労働者は依然としてテレワークを好む傾向にある。同調査は2023年8月、ResumeBuilder.comの委託で調査会社Pollfishがオンラインで調査し、世帯年収7万5000ドル以上の労働者1000人が回答した。
企業がオフィス回帰を求めるのは、さまざまな面で会社が改善するという期待に基づいている。同調査では回答者の81%が「収益が向上する」と答え、81%が「企業文化が良くなる」と答え、83%が「従業員の生産性が向上する」と答えた。
一方でこうしたオフィス回帰の判断において、企業が忘れてはいけない判断要因がある。企業がオフィス回帰を進めれば、オフィスの滞在時間や通勤時間に発生するエネルギー使用量が増え、温室効果ガスの排出量も増加する可能性があることだ。
コーネル大学(Cornell University)とMicrosoftの研究者らによる論文「Climate mitigation potentials of teleworking are sensitive to changes in lifestyle and workplace rather than ICT usage」は、テレワーカーやオフィスワーカー、ハイブリッドワーカーが排出する温室効果ガスの量について以下の事実を明らかにした。
- テレワーカーが排出する二酸化炭素量は、オフィスワーカーが排出する量の54%
- ハイブリッドワーカーが週に2~4日在宅勤務をした場合、温室効果ガス排出量の削減率は11%から29%
論文によると、週1日のテレワークで削減できる温室効果ガスの排出量は2%にしかならない。一方で、テレワーク中に業務とは関係のない目的での移動や、自宅でのその他のエネルギー使用量が増加すれば、テレワークで削減できる温室効果ガスは減少してしまうことに注意が要る。
人事調査会社Global Workplace Analyticsでプレジデントを務めるケイト・リスター氏は、テレワークやハイブリッドワークと環境負荷の関係について次のように指摘する。「環境負荷の軽減に貢献するというメリットが、テレワークやハイブリッドワークの実施に関する企業の意思決定に大きく影響しているわけではない」。環境面でいかにメリットがあるとしても、それはテレワークやハイブリッドワークを推進する上での“おまけ程度”の動機にしかならないということだ。
ただしリスター氏は、環境負荷がテレワークやハイブリッドワークの推進と無関係だとはみていない。論文の調査内容はオフィス回帰を推進しようとしている企業がテレワークを再検討するきっかけになり得るものだと同氏は指摘する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「AIっぽい広告」の山に埋もれさせない AIマーケで着実に成果をだす秘訣とは? -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「広告投資」調査レポート2026:勝ち組企業は何に投資しているのか? -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 「問い合わせの渋滞」を解消、情シスの負担を軽減する“次世代型AI”活用方法 -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 対話型AIエージェント×RAGで社内情報の検索/問い合わせを効率化するには? -
技術文書・技術解説
[株式会社クレスコ] ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「コンテナ型データセンターの検討状況と課題」に関するアンケート
-
4
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
5
Azure Red Hat OpenShiftは脱VMware問題の救世主になるか? 技術資料で解説
-
6
技術力だけでは「上に行けない」 シヤチハタCDOが語る、情シスが次の役割をつかむ条件
-
7
「ネットワークインフラの現状と課題」に関するアンケート
-
8
「ERP(統合基幹業務システム)の導入・活用」に関するアンケート
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー