一気におさらい AIはじめて物語【第4回】
画像生成AIで裁判沙汰も 2022年からAIの歴史はこう変わった
2022年11月に「ChatGPT」が公開された。ChatGPTはさまざまな人工知能(AI)技術を礎としている。他にはどのような技術が登場したのか。その歴史をおさらいする。
AI(人工知能)技術は社会のさまざまな分野で革新をもたらしている。AIチャットbot「ChatGPT」が登場した2022年は、他にも特筆すべきさまざまなAI技術が従来型の業務手法に影響を与えた。
2022年以降、AI技術はどう変化した?
併せて読みたいお薦め記事
連載:一気におさらい AIはじめて物語
- 第1回:人間の知性を模倣した最初の一歩は何だったのか 知られざるAI技術革命史
- 第2回:ここがAI進化の分水嶺 1970~2000年代を貫く技術革命の全貌
- 第3回:問題発言で暴走したあのAIチャットbot誕生が2016年 AI技術の歴史をおさらい
AIの歴史を振り返る
2022年(画像生成AI、マルチモーダルAI、AIチャットbot)
OpenAIは、2021年に発表したAIモデル「Dall-E」よりもより少ないメモリや処理能力で動作する画像生成AIモデル「Dall-E 2」を発表した。
NVIDIAは写真などの2D(2次元)画像を素早く3D(3次元)画像やコンテンツに変換する技術「NGP Instant NeRF」を開発した。
AI研究開発機関Google DeepMindは、汎用(はんよう)マルチモーダルAI「Gato」に関する論文を発表した。それによると、同AIはテキストのキャプション付け、ロボットへの指示生成、ビデオゲームのプレイ、環境内のナビゲーションなど、600以上のタスクを実行できる。
クリエイター向けAIツールを提供するRunway AI、画像生成AIサービスを開発するStability AI、ミュンヘン大学(Ludwig-Maximilians-Universitaet Muenchen)のComputer Vision & Learning research group の研究者らは、入力したテキスト(プロンプト)から自動的に画像を生成できる「Stable Diffusion」をオープンソース化した。オートエンコーダでデータを圧縮し、その中間形式を拡散モデルが利用することで、データの生成や処理を効率化し、より少ないメモリや処理能力で高品質な画像やコンテンツを生成できる。
OpenAIは11月、ChatGPTを公開した。同社の大規模言語モデル(LLM)「GPT 3.5」を使ったチャットベースのインターフェースだ。公開から2カ月間で1億人以上のユーザーを獲得した。
2023年(AIチャットbot、マルチモーダルAI、NeRF)
画像サービスを提供するGetty Imagesは複数のアーティストらとともに、Stable Diffusionを実装した複数の企業を著作権侵害で提訴した。Stability AI、Midjourney、DeviantArtなどが同意なくGetty Imagesのコンテンツをスクレイピング(Webサイトからデータを収集して使いやすく加工すること)したと主張した。
Microsoftは同社の検索エンジン「Bing」をChatGPTに統合したと発表した。Googleはその動きに追随し、LLMである「LaMDA」(Language Model for Dialogue Applications)を基盤としたAIチャットbot「Bard」をリリースする計画を発表した。
OpenAIは、テキストや音声などの数種類のデータを組み合わせて処理できるAI技術「GPT-4」を公開した。これを受け、米国の非営利団体Future of Life Instituteは、GPT-4を上回る能力を持つAIシステムの開発や運用を少なくとも半年間停止するよう求める署名活動を実施し、実業家のイーロン・マスク氏やAppleの共同設立者スティーブ・ウォズニアック氏ら約3万3700人が署名した。
フランスとドイツの研究チームは 3D画像生成技術「NeRF」(Neural Radiance Fields)の技術を改良し、データをガウス分布で表現する新しい方法を開発した。これにより、より迅速かつ効率的な3D画像の生成や表示が可能となった。
OpenAIの取締役会はCEOのサム・アルトマンを、社内コミュニケーションにおいて一貫性を欠いていたことを理由に解任したが、従業員らの反発もあり、最終的にはCEOに復帰した。
Googleは、AIチャットbotや、テキスト、画像、音声生成、エンタープライズ向けおよびコンシューマー向けAIサービスを統合したブランドとして、生成AIモデル「Gemini」(旧Bard)を公開した。
2024年(AIエージェント、Embodied AI、オープンソースLLM、動画生成AI)
Salesforceが、同社のCRM(顧客関係管理)システム「Salesforce」においてAIエージェント機能「Agentforce」の提供を開始した。Microsoft、Workday、Oracle、ServiceNowなど他の主要エンタープライズベンダーも独自のエージェント型AIインフラの構築に乗り出した。しかし、これらプラットフォーム間での相互連携は進んでいない。
「Embodied AI」は、AI技術をロボットや自動運転車などに組み込むことで、現実世界と相互作用しながら学習するAIだ。文章や単語からパターンを理解して学習するLLMと比べ、Embodied AIは「ロボットが荷物を持ち上げる」「自動運転車が道路を走行する」といった現実世界における動きやそのシミュレーションから学習する。Embodied AIは以下の技術で構成されている。
- 大規模アクションモデル(LAM:Large Action Model)
- 人間の意図を理解し、業務や意思決定を自動遂行できるモデル
- 大規模行動モデル(LBM:Large Behavior Models)
- 人間の行動パターンを学習し、予測するモデル
- 世界基盤モデル(WFM:World Foundation Models)
- 現実世界の環境を再現し、テキスト、画像、動画の入力に基づいて結果を予測する技術
欧州連合(EU)は、2024年8月に欧州でのAIモデルの利用を制限する法律「AI法」(Artificial Intelligence Act)を施行した。オープンソースのAIシステムには特別条項が設けられた。米政府は、一部の国々へのAIチップ販売を制限する輸出規制を導入した。
AIチップを開発するCerebras Systemsは、4兆のトランジスタと90万のAI最適化コアを持つウェハースケールAIチップ「WSE-3」を発表。個別のGPUを使用する場合と比べて、多くの生成AIのトレーニングと推論プロセスを10~20倍高速に実行できると同社は主張している。
中国のAIスタートアップDeepSeekがLLM「DeepSeek V3」を発表した。DeepSeekは、中国の投資会社High-Flyerの支援を受けている。DeepSeek V3は、OpenAIの最新モデルに匹敵する性能を低コストで実現したとされている。V3はオープンソースとして公開されているため、OpenAIやAnthropicなどが提供する独自モデルのメリットと、モデルの仕組みや潜在的な課題を可視化できるオープンソースのメリットを比較検討する動きが広がっている。
OpenAIはユーザーのプロンプトに基づいて短い動画を生成する動画生成AI「Sora」を発表。初期のデモでは、山道を走る車、短いアニメーション、シミュレーションされた都市を歩く人々など、リアルな動画を生成できることを示した。SoraはOpenAIのChatGPTサービスのアドオン(拡張機能)としてリリースされ、短い動画の生成が可能になったが、それによってアーティスト、俳優、作家などクリエイティブ業界における将来への懸念が高まっている。
イーロン・マスク氏が創業したAI技術の会社「xAI」は、米テネシー州に10万台の高性能GPU「NVIDIA H100」を接続した大規模AIスーパーコンピュータを構築した。マスク氏は「史上最大のスーパーコンピュータ」と主張している。建設期間は最短19日、最長でも122日と推定されており、大規模AIインフラとしては最速クラスの構築例とされている。
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
4
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
5
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の運用管理と統制機能を徹底比較
-
6
見落としが多発、AI普及&データ急増に伴うネットワーク課題の意外な原因とは?
-
7
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
8
【専門家に聞く】シャドーAIや過剰共有のリスクを防ぎ、安全に生成AIを活用するポイントとは?
-
9
【コスト分析】事例が示す中堅・中小向けERPの最適コスト構造
-
10
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー