いまさら聞けない「インフラ自動化」【後編】
便利なはずの「インフラ自動化」でむしろ大変になる理由とツール選びのヒント
インフラ自動化によって効率化や標準化を実現したい企業にとって、自動化ツール選びは重要だ。自動化ツール導入時の課題、主要な自動化ツールについて解説する。
インフラ自動化の目的は、ツールを使って各種タスクを実行し、管理者の関与を最小限にすることだ。サーバプロビジョニング、ソフトウェアの更新、アプリケーションのデプロイ(展開)、ネットワーク監視など、さまざまな業務を自動化できる。
インフラ自動化にはさまざまなメリットがある一方で、課題も存在する。本稿は、インフラ自動化のメリットと課題について解説する。
インフラ自動化の主な利点
併せて読みたいお薦め記事
連載:いまさら聞けない「インフラ自動化」
システム運用管理を効率化
インフラ自動化で得られるメリットは以下の通りだ。
- 効率性
- 人手の作業が減るため、少人数のITチームでもより多くの業務を処理できるようになる
- 一貫性
- 自動化ツールは、あらかじめ定義された一定の手順で処理を実行するため、構成のばらつきを防ぎ、標準化されたインフラ運用を可能にする
- セキュリティ向上
- 設定ミスや重要なアクセス制御の漏れといったヒューマンエラーを防ぎ、セキュリティリスクを低減できる
- 再現性とスケーラビリティ
- インフラ自動化では、サーバ構成をファイルに記録して保存する。この構成情報を再利用することで、サーバやネットワークといったリソースの追加が容易になり、大規模システムも展開しやすくなる
こうした利点から、インフラ自動化は現代企業においてますます重要な役割を果たしている。
インフラ自動化の課題
インフラ自動化にはさまざまな利点がある一方で、幾つかの課題も存在する。
- 異種システムの存在
- 企業はさまざまなサーバやPCを併用しており、それぞれに異なる構成が必要な場合、自動化は複雑になる
- 対象外OSの存在
- 自動化ツールが全てのOSで稼働するわけではない
- 例えば、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」はOSとして主に「Linux」を搭載するサーバクラスタで機能するため、「Windows」搭載サーバでは制限がある
- 設定ミス
- 自動化ツールは設定通りに動作する。不適切なポリシーや見落としがあると、誤った設定が広範囲に適用されてしまうリスクがある
- スキルギャップと学習コスト
- 自動化ツールを習得するには時間がかかる。自動化ツール「Chef」を使い慣れた管理者でも、同じ自動化ツールである「Puppet」を新たに学ぶには時間が必要だ
- ツールの複雑さ
- 自動化ツールそのものが新たな管理対象となる。効果を上げるには管理負荷に見合うメリットが必要だ
- 問題の見落とし
- 管理者が自動化ツールに依存し過ぎると、プロビジョニングの失敗やアップデートの不具合などの通知を見逃す恐れがある
代表的なインフラ自動化ツール
以下、自動化に関する代表的なツールをカテゴリーごとに紹介する。
構成管理
- Puppet
- リソースの望ましい状態を定義すれば、それに沿ってツールが自動的に必要な処理を実行する「宣言型アプローチ」を採用している
- スケーラブルだが、複雑な処理には向かない
- Chef
- 明示的に構成手順を記述すれば、それに沿ってツールが処理を実行する「命令型アプローチ」を採用している
- 複雑な処理も実行できるよう設定可能だが、記述内容が煩雑になりやすい
- Ansible
- 主に宣言型アプローチで動作し、小規模なITインフラに向いている
- プログラミング言語「Python」で記述したプログラムによって操作でき、シンプルな構文が特徴だ
インフラプロビジョニング
- Terraform
- オンプレミスサーバ、クラウドサービスを問わず幅広く利用できるツールだ。宣言型の構成ファイルを使用して、ITインフラを自動でプロビジョニングする
- AWS CloudFormation
- クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)に特化したプロビジョニングツールだ。AWSで稼働するITインフラの定義を「JSON」または「YAML」形式で記述し、ITインフラを自動的に構築、管理する
- Azure Resource Manager(ARM)
- クラウドサービス群「Microsoft Azure」向けのプロビジョニングツールだ。Microsoft Azureのリソース定義をJSON形式で記述することで、ITインフラを自動的に構築、管理できる
アプリケーションデプロイ
- Docker
- アプリケーションをコンテナとしてパッケージする。コンテナは、アプリケーションとその実行に必要な機能群もまとめて含んでいるため、稼働するシステム構成に依存せず、異なるサーバに移動しても同じ動作を再現できる。これによって、アプリケーションのデプロイ自動化や運用効率化が実現しやすくなる
- Kubernetes
- コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、管理、スケーリングをサーバクラスタ全体で自動化する。大規模かつ複雑なシステム運用に適しており、自己修復や自動スケーリングなどの高度な機能を備える
インフラ監視
- Prometheus
- CPUやメモリ使用率などのメトリクス(指標)を収集する。アラートも生成できるが、通知の管理には別のツールと連携させる必要がある
- Grafana
- メトリクスやログを可視化する。ITインフラの状況の把握に有効だ
これらの監視ツールは単体で自動化を実現するわけではないが、Prometheusが「仮想サーバのメモリ不足」を検出し、それに基づいて自動的にリソースを割り当てるといった形で、自動化プロセスの一部を担うことができる
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー