日本企業の業務アプリ数「急伸するも世界の約半分にとどまる」 Okta調査最も使われている業務アプリは

Oktaは、業務アプリケーションの利用動向調査結果を年次レポート「Businesses at Work 2025」で発表。セキュリティやコラボレーション分野の利用が伸びている状況が明らかになった。

2025年03月17日 07時15分 公開
[渡邉利和]

 アイデンティティー(ID)管理サービスを提供するOktaの日本法人Okta Japanは2025年3月13日、業務アプリケーションの利用動向を調査した年次レポート「Businesses at Work 2025」の結果を発表した。OktaはIDaaS(Identity as a Service)としてクラウドベースのシングルサインオン機能などのID管理サービスを提供しており、同社のサービスを経由してどのようなアプリケーションが実行されているのかを毎年調査し、公表している。この調査は2015年に開始されたといい、今回はこの10年間でのトレンドの変遷(図1)についても紹介された。

画像 図1 最も利用されているアプリケーションの変化(提供:Okta Japan)《クリックで拡大》

使われている業務アプリケーションに変化――Okta調査

写真 oktaのローリー・イソラ氏

 調査結果を説明したOktaのコンテンツリード、ローリー・イソラ氏は本調査について、中立的な立場で広範なアプリケーションやサービスをサポートし、幅広い業種業態の大小さまざまな規模の企業を顧客として抱える同社だからこそ実施できるものだとした上で、今回の結果を紹介した。

 今回の調査は2023年11月1日〜2024年10月31日の1年間のデータを分析したもの。10年を振り返って(図1)の特徴的なデータとして、同氏は以下4つの変化を挙げた。

一貫して上位にランクインするアプリケーション

 2016年以降は、以下4つのアプリケーションやサービスが常に上位5位以内に入っている。

  • サブスクリプション型のオフィススイート「Microsoft 365」
  • サブスクリプション型のオフィススイート「Google Workspace」
  • Amazon Web Servicesの同名クラウドサービス群
  • CRM(顧客関係管理)ツール「Salesforce」

コラボレーションツール

 2015年以降はコラボレーションアプリケーションも人気が高く、ランキング上位に位置している。ただし時期に応じて上位に入るアプリケーションは入れ替わっている。例えば、2015年には「GoTo Meeting」が最も利用されているアプリケーション上位15位に入っていたが、今はその地位は「Zoom」に置き換わっている。

セキュリティアプリケーション

 2020年以降はセキュリティアプリケーションの人気が高まっている。2024年は上位15位に入るアプリケーションのうち20%をセキュリティアプリケーションが占める。

開発者向けアプリケーション

 2016年以降はAtlassianの開発者向けプロジェクト管理・コラボレーションツールや、ソースコード管理・共有サービス「GitHub」といった開発者向けアプリケーションの人気が高まっており、年々ランクを上げている。

 ランキング全体では前回発表の内容と大きな変動はないものの、ネットワークセキュリティベンダーとして知られるPalo Alto Networksが新たに14位にランクインしたことが注目される。ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)などのサイバー攻撃が激化しているといった動向が背景にあると考えられる。

日本国内では利用アプリケーション数が大幅に増加

 一方、日本国内に絞ったランキングでは、グローバルの上位15位にはランクインしていないクラウドストレージ「Box」とクラウドセキュリティツール「Netskope」が10位以内に入るなど独自の傾向が見られる(図2)。それと同時に、GitHubが前年の9位からワンランクアップして8位になっているなど、グローバルのトレンドに連動する動きも見られている。国内のアプリケーション別の成長率ではGitHubがトップだといい、アプリケーション開発に注力する企業が増加していることがうかがえる。

画像 図2 日本国内で最も利用されているアプリケーション(提供:Okta Japan)《クリックで拡大》

 国別の比較では、ユーザー企業1社当たりの平均導入アプリケーション数の全世界平均が101個のところ、トップの米国は114個、日本は46個で、日本では他国に比べてまだアプリケーション導入が進んでいない傾向にある(図3)。ただし、前回調査では日本企業の平均アプリケーション数は35個で調査対象国の中で最小だったが、今回の調査では31%増という大幅な伸びを示し、デジタル化が徐々に進展していることも間違いなさそうだ。

画像 図3 国別の平均アプリケーション利用数(提供:Okta Japan)《クリックで拡大》

 この他の興味深い結果としては、「Microsoft 365ユーザーが併用するベストオブブリードアプリの導入率」が増加傾向にあるという指摘もあった。これは、Microsoft 365に含まれるものと同ジャンルの別アプリケーションを導入している比率であり、追加のコストを払ってでももっと使いやすいツールを導入したいと望むユーザーがどのくらいいるかという目安になる。イソラ氏はこの傾向について、「単一のソフトウェアスイートにロックインされるのではなく、特定の作業向けに最も適したツールを導入することで選択の柔軟性や作業の効率性を確保したいと考える企業が増えている」と語った。

 セキュリティ面では、“フィッシング耐性のあるパスワードレス認証”としてOktaが提供する「Okta FastPass」の利用が順調に伸びていることも示された。国別で見ると日本はOkta FastPassの利用率ではフランス、米国についで3位だが、生体認証の利用率に関してはまだ低いことも分かっている。この点についてイソラ氏は「生体認証をサポートするハードウェアの普及率が低い」ことを指摘した。

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