ツールを並べるだけでは防げない
アラート疲れと手動対応を解消 EDR、SIEM、SOAR統合で注意すべきポイント4選
ランサムウェアや内部不正、クラウド環境への攻撃など、企業が対処すべき脅威は複雑化している。EDR、SIEM、SOARを連携し、「検知→分析→対応」の流れを一貫させるには何が必要なのか。
ランサムウェアや内部不正、クラウド環境への攻撃など、企業が対処すべきセキュリティ脅威は複雑化している。こうした脅威への対策として、「EDR」(Endpoint Detection and Response)や「SIEM」(Security Information and Event Management)を導入する企業は少なくない。
ただし、それぞれの製品を個別に導入するだけでは、十分な効果を引き出せるとは限らない。検知した脅威を素早く分析し、必要な対処までつなげるには、EDR、SIEM、「SOAR」(Security Orchestration, Automation and Response)を連携させることが重要になる。
3つのセキュリティツールは、どのような役割を担い、どう連携させればいいのか。導入時に情シスやセキュリティ担当者が注意すべきポイントを整理する。
SOAR活用とEDR・SIEM連携を成功させるアプローチ
まず、それぞれの役割を整理する。EDRは、サーバやPCなどのエンドポイントを監視し、不審な挙動を検知、調査、対処するための仕組みだ。端末にエージェントを導入し、プロセスを監視したり、感染した端末を隔離したり、不審なファイルを隔離したりする。
SIEMは、エンドポイント、ネットワーク機器、アプリケーション、IDプロバイダーなどからログやイベントを収集し、それらを一元的に分析する。オンプレミスとクラウドの双方からセキュリティデータを集め、アラートの相関分析、調査、脅威ハンティング、コンプライアンス対応などに利用する。
SOARは、SIEMやEDR、チケット管理システムなどを連携させ、インシデント対応を自動化する。事前に定義した「プレイブック」に従って、IPアドレスのブロック、アカウントの無効化、チケット発行、アラートへの追加情報付与などを実行する。
つまり、3製品を連携させる際の基本的な流れは、「EDRから情報を収集する」「SIEMが複数のイベントを関連付けて状況を把握するための情報を整理する」「SOARが対応を自動化する」と考えると分かりやすい。
EDRとSIEMだけでは不十分? SOARを組み合わせる理由
3つのツールを統合する大きな目的は、セキュリティ担当者が脅威を発見してから対応するまでの時間を短縮することにある。
例えばランサムウェア対策では、SIEMが複数のログを相関分析して攻撃の可能性を検出し、その結果を受けてSOARのプレイブックを動かすことで、EDRを通じて対象端末を自動的にネットワークから隔離できる。担当者がアラートを確認して手動で操作するよりも、初動を迅速化できる。
統合によって得られるのは、対応速度だけではない。エンドポイント、ネットワーク、クラウドを横断した可視性を高め、脅威や脆弱性を把握しやすくなる。
複数のアラートを関連付けることは、誤検知やアラート疲れの削減にもつながる。こうした統合による効果として、リスク低減、レジリエンス向上、コンプライアンス強化、運用効率向上がある。
3製品をつなげるだけでは駄目、設計時の4つのポイント
では、EDR、SIEM、SOARを導入し、APIで接続すれば統合は完了するのか。実は、そう単純ではない。
まず重要になるのが、「データの正規化」だ。製品ごとにログの形式やフィールドが異なる状態では、SIEMで正確に分析することが難しい。異なるデータを一貫した形式で扱えるようにする必要がある。
次に、APIを利用した相互運用性を確認する。EDR、SIEM、SOARだけでなく、今後追加するセキュリティ製品や業務システムとの連携も考慮し、豊富な連携機能を持つ製品を選ぶことが重要だ。
3つ目は、スケーラビリティとストレージだ。ログの対象が増えれば、SIEMが扱うデータ量も増える。将来オンプレミスやクラウドのシステムが増加することを想定し、処理能力や保存容量、通信遅延を考慮して設計する必要がある。
4つ目は、ガバナンスとアクセス制御だ。統合環境では、コンプライアンス要件を踏まえ、認証や認可の仕組みを整備する必要がある。
いきなり全面自動化しない 導入時に必要な運用設計
SOARを導入したからといって、最初から全てのインシデント対応を自動化する必要はない。まずは効果が見込める一部の自動化処理や高リスクなエンドポイントに対象を絞って段階的に導入し、その後も検知ルールやプレイブックを継続的に調整することが重要だ。
プレイブックも、作成したら終わりではない。定期的に見直し、不要な処理が含まれていないか、逆に必要な処理が抜け落ちていないかを確認する必要がある。
導入効果を測る指標も決めておきたい。例えばインシデント対応時間がどれだけ短縮したか、自動化できた処理がどれだけ増えたか、セキュリティ担当者の作業効率がどの程度向上したかといった指標だ。複数チームで利用できるドキュメントを整備し、最新状態を維持することも重要になる。
EDR、SIEM、SOAR統合で情シスが注意すべき落とし穴
統合には課題もある。導入初期に問題になりやすいのが、アラートの増加だ。チューニングが十分ではない段階では大量のアラートが発生する可能性がある。そのため、IT運用部門とセキュリティ運用部門の役割を整理し、必要なスキルや教育内容も事前に確認しておく必要がある。
ベンダーロックインにも注意したい。独自のデータ形式を採用していたり、他社製品との通信や連携に制限があったりすると、将来製品を変更する際の障壁になる。
個別製品にも課題がある。EDRでは監視範囲の空白やエージェントの乱立、チューニングが十分になるまでの誤検知などが問題になり得る。SIEMではログ量の増加に伴うコストやアラート過多、SOARでは異なる製品間の連携やワークフロー設計の複雑さが課題になる。
EDR、SIEM、SOARの統合は、単なるセキュリティ製品の追加ではない。「どの情報を収集し、どの条件で脅威と判断し、何をどこまで自動化するのか」というセキュリティ運用そのものの再設計だ。
重要なのは、製品を3つそろえることではなく、「検知→分析→対応」の流れをどこまで一貫させられるかだ。継続的なチューニングとガバナンスを前提に統合を進めることが、対応速度の向上やリスク低減、レジリエンス強化につながる。
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