意図的にテレワーカーを採用する企業も
「週5出社」を従業員に強いると顕在化する“あのリスク”の怖さ
従業員に出社を求める企業の動きが広がる一方、一部の企業は出社義務化に伴うリスクを回避するために、意図的にテレワーカーを採用している。どのようなリスクが考えられるのか。
企業が従業員に出社を義務付ける動きが広がっている。Amazon.comは2025年1月から従業員に週5日の出社を求める方針だ。同社のCEO、アンディ・ジャシー氏は従業員に宛てた声明の中で、オフィスでの業務遂行が「企業文化を強化し、コラボレーションの改善につながる」と伝えた。一方、“出社義務化によるリスク”を回避するために意図的にテレワーカーを採用している企業もある。どのようなリスクがあるのか。
「週5出社」が招く“あのリスク”の怖さ
2024年に米フロリダ州を襲ったハリケーン「ヘレーネ」と「ミルトン」は、数十億ドル規模の被害をもたらした。「そのような自然災害の被害を受けやすい地域にある企業が、従業員にフルタイムのオフィス勤務を促すことはリスクだ」とボストンカレッジ(Boston College)のキャロル経営大学院でアシスタントプロフェッサーを務めるセバスチャン・ステッフェン氏は指摘する。
給与管理ツールを提供するDeelは「リモートファースト」を戦略に掲げ、全世界に従業員を抱える企業だ。ミルトンの被害を受けたフロリダ州にも、テレワークを実施している従業員がいる。
Deelがテレワークを導入するのは、事業の継続性を重視しているためだ。給与管理など特定のシステムを担当する従業員が特定の地域に集中し過ぎていると判断した場合、Deelは他の地域で意図的に人材を採用している。
Deelのナディア・アラエ氏(人事プログラムおよび戦略担当のHRビジネスパートナー兼シニアディレクター)は「大部分の職種は場所によらず採用可能だ。テレワークの導入によって幅広い人材を集められる」と説明する。
サンフランシスコに本社を置く同社は、紛争や自然災害が発生しやすい地域で働く従業員を支援した経験を持つ。状況に応じた柔軟な働き方を認めた他、移動手段や衛星インターネットサービス、コワーキングスペースなどを提供した。
「自然災害の深刻さが増す中で、オフィス勤務の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈している」とステッフェン氏は述べる。「災害が発生しやすい時期に従業員をオフィスに回帰させることは、彼らを危険にさらすだけではなく、事業の継続性を脅かすことになる」(同氏)
テレワークで成果が上がる研究結果も
ステッフェン氏やマサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)のワン・ジン氏、スタンフォード大学(Stanford University)のエリック・ブリニョルフソン氏らの研究チームは2021年、テレワークに関する論文「Digital Resilience: How Work-From-Home Readiness Affects Firm Performance」を発表した。2億件以上の米国の求人情報を基に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以前の企業のテレワーク準備体制の状況を指標化した。その結果、指標が高い企業はそうではない企業と比べて売上高と純利益が高いことが明らかになった。
全ての業種や職種でテレワークを導入できるわけではない。「対面の会議はイノベーションや効果的なコミュニケーションのためには不可欠だ」とステッフェン氏らは指摘する。しかしデジタルツールの改善が進めば、対面でのコミュニケーションの必要性は薄れる可能性があると付け加える。
Deelのアラエ氏は、同社のテレワークの方針が「従業員のエンゲージメントと生産性を高めると確信している」と述べる。同氏は「通勤を強制されず、プライベートのための時間が増えると、従業員のモチベーションは高まる可能性がある」と主張する。
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