第三者保守が切り開く生存戦略
VMware更新の異変 「使わないVCF 9」に課金しつつ旧環境を維持する企業の狙い
Broadcom傘下になってライセンス体系が激変したVMware。VCF 9を契約しながらあえて導入せず、旧環境を維持する企業が急増している。ベンダー主導の移行計画にあらがい、主導権を奪還するための合理的な防衛策を明かす。
VMwareの顧客の間で、一見すると矛盾した行動をとる企業が増えている。VMware Cloud Foundation(VCF)のサブスクリプションを支払って更新しながら、そのサブスクリプションが本来提供するはずのアップグレードを拒否しているのだ。つまり、VCF 9の料金を払いながら、インストールは行わないという選択である。
これはBroadcomによる買収以降、筆者が着実に増加しているのを目にしてきたパターンだ。一部の企業が互換性の問題で足踏みしているのではない。全面的な移行と、VCF 9への全面的なコミットメントの中間に位置する、独自の顧客行動として定着しつつある。
その理由はワークロードの準備不足や互換性の問題、あるいはBroadcomのスケジュールに合わせるには移行作業が複雑すぎるといった技術的なものだと思うかもしれない。確かにそれも事実の一部ではある。顧客がよく挙げる懸念は、移行の複雑さ、代替案の想定以上のコスト、そして技術的な障壁だからだ。
しかし、それら以上に懸念されているのが「価格」である。85%の顧客がさらなる価格上昇を懸念しており、5社に3社は更新費用がすでに25%以上増加したと回答している。技術的な障壁は移行が遅れている理由にはなるが、なぜこれほどの顧客が移行自体を試みようとさえしないのかという疑問の答えにはならない。顧客がでんびんにかけているのは、VMwareが今も機能するかどうかではない。今のBroadcomのサブスクリプション契約にコミットすべきか、あるいは2027年の期限が許す限り決断を保留すべきかという点だ。
期限を巡る決断の背景
この流れには明確な起点がある。Broadcomは2023年11月にVMwareの買収を完了し、その数週間後には永久ライセンスの販売を全面的に停止した。以降、全ての製品はサブスクリプションとして販売され、主にVCFにバンドルされることになった。BroadcomはVCFの軽量版であるVMware vSphere Foundation(VVF)も提供したが、特定の市場からはすでに撤退させている。
既存の永久ライセンスが取り消されたわけではない。付随するサポートには「無期限」ではなく「固定された期限」が設定された。当時はライセンス上の事務的な変更に見えたが、いまやこの期限が顧客とVMwareの将来を巡るあらゆる議論を支配している。
公式回答としての「2027年の壁」
その期限とは、2027年10月11日だ。これは永久ライセンスで利用可能な最後のリリースであるvSphere 8のジェネラルサポートが終了する日だ。この日以降、サポートを受け続けるための唯一の公式ルートは、サブスクリプション専用のVCF 9へと移行することである。これは財務部門が計画していたものでも、インフラ部門が要求したものでもない。公式に認められた選択肢は「Broadcomのプライベートクラウドプラットフォームに移行するか、サポートを完全に失うか」のどちらか1つだけだった。
だが、それはあくまでBroadcom側が提示した選択肢にすぎず、他にも道はある。vSphere 8環境を2027年以降も安全に稼働させ続けるために、ベンダーに依存しない「独立サポート」という選択肢がある。環境をフル稼働させたまま、VCF 9を導入することなく、新たなセキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性を特定、評価、緩和し続けることができる。
顧客はBroadcomのサブスクリプションを更新して書類上の最新状態を保ちつつ、業務を担う環境は独立サポートの下でvSphere 8を使い続けることができる。これら二つのタイムラインを一致させる必要はない。サブスクリプションはBroadcomを満足させ、サポート契約はビジネスを継続させる。Broadcomが設定した期限自体は消えないが、それが「いつ予算を投じるか」を決定する唯一の要因ではなくなる。
普及する「様子見」の戦略
顧客がたどり着いたのは、この立場だ。いつか必ず来る移行までの「つなぎ」ではなく、VCF 9のビジネス価値が証明されない限り、可能な限り維持し続ける「期限の定めのない取り決め」である。
この規模はBroadcomの数字にも表れている。投資家への説明によると、VMwareの主要顧客上位1万社のうち90%以上がこのプラットフォームを採用しており、前四半期の87%から上昇したという。書類上、この「導入予定のないアップグレードに金を払う」という矛盾は少数派のように見える。
しかし同じ説明の場で、Broadcomの最高経営責任者(CEO)は「採用」と「現実」の間に線を引いている。ライセンスの購入と、大規模なワークロードの展開は同義ではないと投資家に直接語ったのだ。調査会社Forresterのあるアナリストはさらに踏み込み、表面上の採用率が上昇していても、平均的な顧客はVMware資産全体の約4分の1しか更新していないと算出している。
さらに、上位1万社の顧客は、数十万社に及ぶ全顧客層の一部にすぎない。上位リストで「ほぼ合意」に見える状況も、中堅以下の企業に目を向ければ、全く決着がついていないことが分かる。端的に言えば、サブスクリプションを更新しながらアップグレードを拒否するのはもはや特殊な事例ではない。
表面化した顧客の不満
ほとんどの顧客は、更新はしつつも展開は保留し、独立サポートの下で次の一手を検討するという選択ができる。一方で、その選択肢を強制的に奪われそうになったときに何が起きるかを示したのが、英Tescoの事例だ。
Tescoが結んでいたvSphere FoundationおよびCloud Foundationの永久ライセンスとサポート契約(2026年1月まで)は、Broadcomによる買収前のものである。その期限が切れる際、BroadcomはVCF 9の契約なしでの単体サポートの延長を拒否した。一説によると、VCF 9とメインフレームのサポートの1年間の価格は2350万ドルに達し、Tescoの試算では従来のVMware価格の175%、メインフレーム契約では350%の増加だったという。
Tescoはこれを拒否し、2025年にBroadcom、VMware、Computacenterを相手取り、英国の裁判所に少なくとも1億ポンドの損害賠償を求めて提訴した。変更によって、すでに支払済みのライセンスが事実上無効になったと主張している。
Tescoのその後の対応は注目に値する。Broadcomの条件を受け入れず、かといってサポートなしで放置することもしなかった。同社は独立系プロバイダーを雇い、2027年末を目標としたVMwareからの完全移行を進める間、既存の資産を維持することにしたのだ。これは、Broadcomのサブスクリプションなしで独立サポートがVMware環境を維持するという、先述のモデルと同じである。Tescoの場合、すでに「完全撤退」という結論が出ていたため、無期限の保留ではなく、より厳しい条件の下でこのモデルを適用している。
AT&Tの事例も似たいきさつをたどったが、結末は異なる。同社は2024年8月にニューヨークで提訴し、Broadcomが支払済みライセンスの内容を遡及(そきゅう)的に書き換え、要求していない数億ドル規模のバンドル契約を強要していると訴えた。このケースは、裁判から3カ月後に原則的な和解に至っている。
これら二つの巨大でリソース豊富な顧客は、同じ問題に直面し、同じ初期判断を下した。条件をうのみにするのではなく、異議を申し立てるという決断だ。
先延ばしではなく「主体的な決断」
顧客が選んでいる「更新はするが導入はしない」という選択を、単なる決断の先延ばしと捉えたくなるかもしれない。だが、それは違う。これはTescoが公に行っているのと本質的には同じメカニズムだ。より早い段階で、摩擦を少なく適用しているにすぎない。
すでに稼働している環境を独立サポートで維持し、それによって得た時間を使って、次の投資を本当にVCF 9に投じるべきかどうかを自分たちのスケジュールで判断するのだ。
この戦略は、最終的な決断を覆すものではない。しかし、その決断を下すタイムラインの主導権を誰が握るかを変える。独立サポートが環境をフル稼働させ続ける限り、そのスケジュールはBroadcomではなく顧客のものだ。
2027年の期限は動くことはない。しかし、その期限自体がインフラの近代化を決定づけるわけではない。Broadcomのサブスクリプション条件に従うのか、それともBroadcomが関与しないサポートの選択肢を通じて、顧客自身が主導するのか。確信が持てるまで好みのインフラにとどまるために料金を支払うという選択は、すでに現実のものとなっている。
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