1億DL超のaxiosも標的 Amazonが警告する北朝鮮発のサプライチェーン攻撃の実態主要npmライブラリ4種を標的に

北朝鮮の国家ハッカー集団がaxiosなど主要なnpmライブラリを汚染し、短時間で10%のクラウド環境に影響を与えた。脆弱性ではなく仕様を悪用し、メンテナーの信頼を奪う「産業化」された攻撃の脅威に迫る。

2026年08月01日 05時00分 公開
[Alex ScroxtonComputer Weekly]

 米Amazonの脅威調査チームは、Node Package Manager(npm)ライブラリの4つの異なる改ざんについて、北朝鮮政府が支援する脅威アクターによるものだと高い確信を持って断定した。

 バージニア州アーリントンの本社で開催されたメディア向けラウンドテーブルで、Amazonは証拠を提示した。「axios」「chalk」「debug」「typo-crypto」の各ライブラリの改ざんは、APT38、Sapphire Sleet、Stardust Chollimaなどの名称で追跡されている持続的標的型(APT)アクターによって画策されたという。同グループは、北朝鮮の偵察総局(RGB)に関連するラザルス(Lazarus)グループの傘下で活動している可能性が高い。

 2026年3月に発生したaxiosの改ざんでは、JavaScript用のHTTPクライアントで二つの新しいnpmパッケージが作成された。これらには、コマンド&コントロール(C2)インフラに接続し、第2段階のリモートアクセス型トロイの木馬(RAT)を配備する悪意のある依存関係が注入されていた。

 axiosパッケージへの攻撃については、以前から特定の脅威アクターとの関連が指摘されていた。しかし、Amazonがグループの攻撃手法をさかのぼって調査した結果、2025年3月のtypo-cryptoの改ざんや、2025年9月のchalkおよびdebugの改ざんの背後にも同グループがいたことが判明した。知名度の低いtypo-cryptoへの攻撃は、目立たずに手法をテストするためのリハーサルだったとみられている。

 Amazon Integrated SecurityのCISO(最高情報セキュリティ責任者)を務めるシージェイ・モーゼス氏は、記者団に次のように述べた。「4つの異なるサプライチェーン攻撃の背後に、同一の人物が関与していることを突き止めた。これらをつなぎ合わせると、一連の孤立した事件ではなく、国家アクターによって遂行された組織的な活動であることが浮き彫りになる」

信頼を悪用する巧妙な手法

 モーゼス氏によると、いずれのケースでも、グループはソーシャルエンジニアリングの手法を用いてパッケージメンテナーの信用を獲得していた。その上で、悪意のあるソフトウェア更新をプッシュし、汚染されたバージョンをプルした企業に被害を及ぼした。

 この手法は、2024年に発生したデータ圧縮ライブラリ「XZ Utils」への攻撃と類似している。この事案では、攻撃者が数年かけて有益な貢献を行いメンテナーの信頼を得た後、バックドアを忍び込ませようとした。研究者が発見しなければ重大な結果を招く恐れがあった。

 「なぜこれが重要なのか。OSSは共有インフラであり、1つのパッケージが改ざんされるだけで一瞬にして数千もの企業に影響が波及するからだ」とモーゼス氏は強調する。

 「数年前のXZ Utilsのバックドア事件を思い出してほしい。あの事案では、忍耐強い攻撃者が重要なオープンソースパッケージを侵害し、そこに寄せられた信頼をいかに悪用できるかを示した」(モーゼス氏)

 同氏によれば、axiosパッケージは週に1億回以上ダウンロードされている。つまりは毎週のように企業は同コードを本番システムに取り込んでいることを意味する。クラウドセキュリティベンダーWizの調査によると、chalkとdebugの改ざんではわずか2時間でクラウド環境の10%が影響を受けたという。

 「OSSを魅力的で汎用(はんよう)性の高いものにしている配布メカニズムを、攻撃者も自分たちの有利なように利用している。北朝鮮にとってこれは金銭的な動機に基づくパターンだ。少数の人気パッケージを改ざんすることで、下流にある数千の環境へほぼ同時にアクセスできる可能性がある」

 モーゼス氏は「彼らはオープンソースシステムを破壊しているのではない。設計通りに利用しているだけで、その目的が異なるだけだ」と付け加えた。実際、XZ Utilsの事案以降、ソフトウェアサプライチェーン攻撃の量と巧妙さは増している。その大きな要因となっているのが北朝鮮および関連する脅威アクターやサイバー犯罪グループだという。

Amazonによる対応策

 オープンソースのサプライチェーン攻撃による危険性の高まりを受け、Amazonは脅威インテリジェンスチームと脆弱性管理サービス「Amazon Inspector」のチームに投資し、顧客が変化する状況に適応できるよう支援している。

 同社はOpen Source Security Foundation(OpenSSF)などの業界パートナーと連携して調査結果を共有している。また、2026年6月にはLinux Foundationと協力し、AIを活用した脅威からOSSを保護することを目的とした「Akrites」プロジェクトを立ち上げた。Amazonはこの取り組みに1200万ドル以上を投じている。OSSのセキュリティは共有責任であるというのが同社の考えだ。

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