サーバ仮想化からプライベートクラウドへの道(2)
プライベートクラウド実装の鍵はサポート付きOSSクラウド管理ソフト
プライベートクラウドに不可欠なクラウド管理ソフトウェア。だが多くのIT部門にとって、OSSはよくてもスクラッチ開発はハードルが高い。OSSでありながらサポートが受けられる低コストな製品が望まれる。
前回の記事「単なる“全社仮想化”とは違うプライベートクラウドの本質的価値」では、仮想化によってシステムを統合することと、プライベートクラウドを構築することの違いを整理した。
その上で、
(1)全社共通のIT基盤にするための2つの標準化
(2)ITサービスを迅速に提供する2つの自動化
(3)ITサービスの利用量に応じたチャージバック
の3つの要素を加えることで、「なんちゃってクラウド」から脱却し、本当の意味でのプライベートクラウドの恩恵を享受できると解説した。結果的にIT部門は、プライベートクラウドを社内展開することで、ヒーローになれると結論付けた。
今回は、具体的にプライベートクラウドを実装していく上で鍵を握る「クラウド管理ソフトウェア(CMS:Cloud Management Software)」に焦点を当て解説してみたい。
コモディティ化されるハイパーバイザー
ところで、皆さんの会社の仮想化基盤は、どのハイパーバイザーによって構築されているだろうか?
2007年、米Citrix SystemsがXenSourceを買収、2008年には米Microsoftが「Hyper-V」を、米Oralceが「Oracle VM」を発表するなど、仮想化のリーダーに君臨していた米VMwareに勝負を挑んだ形となった。
あれから5年が経過し市場はどう変化しているだろうか。
数年前、Xen.orgの創設者で後にCitrix SystemsのCTOに就任したSimon Crosby氏は、「ハイパーバイザーはいずれコモディティ化する。重要なのは、どのハイパーバイザーを選択するかではなく、ユーザーフロントに来る管理ツールだ」と明言していた。現に、各社のハイパーバイザーの技術が成熟していく中、仮想マシンを作成し実行するという点に関しては、ハイパーバイザー自体に差はほとんどないと言ってもよい。
また、圧倒的にVMwareのシェアが高かった数年前と比較して、複数のハイパーバイザーを利用した仮想化基盤が増える傾向にあるといえる。
先日、話を聞いた某金融系システム子会社の情報システムシス部門の部長によると、「基本はVMwareでIT基盤の統合を推進しているが、開発系のビジネス部門ではHyper-VのIT基盤が膨れ上がり、子会社化した企業ではKVMが推奨されている」という。また、「目下の課題は、こうした複数のハイパーバイザーが混在した仮想化IT基盤を整理し、オープンなクラウド基盤を構築することだ」とのことだ。オープンなクラウドとは、ベンダーロックインされないクラウド基盤だ。つまり、特定ベンダーの製品/サービスから他のベンダーのものに変更できない状態を回避することが、第一優先となっているという。
マルチハイパーバイザーに関する記事
オープンなクラウド基盤構築のためのクラウド管理ソフトウェア
そこで注目を集めているのが、複数のハイパーバイザーに対応し ベンダーにロックインされないオープンなクラウドを実現する、オープンソースソフトウェア(OSS)の「クラウド管理ソフトウェア」だ。クラウド管理ソフトウェアとは、リソース管理やサービス管理、外部パブリッククラウドとの連携機能などを備えるソフトウェアで、CMS(Cloud Management Systems)やオーケストレーションツールなどとも呼ばれる。具体的には、仮想化基盤上のITリソースに対して、プロビジョニングの自動化やサービス管理、チャージバック(課金)に必要な情報のメータリング(計測)機能を提供する。プライベートクラウドの構築には不可欠な管理ツールだ。
OSSのクラウド管理ソフトウェアが注目される背景には、コミュニティーの活発さによる開発スピードの速さがある。多くのクラウドサービス事業者やユーザー企業、開発者がプロジェクトに参加し、オープンなコミュニティーを通じて、コード改善に貢献している。これにより、ユーザー企業は自社のニーズに合った機能を手に入れることができる。クローズドなベンダーの開発ロードマップを待つより、圧倒的にスピーディーだ。
中でもOpenStackとCloudStackの2つのプロジェクトが現在のCMSの2大巨頭と言っても過言ではない。2010年7月に発足したOpenStackプロジェクトは2012年4月、開発の母体となる非営利団体「OpenStack Foundation」を設立。米IBM、米Hewlett-Packard、米RackSpace、米Red Hat、米Cisco Systems、米Dellなど19社が名を連ねてガバナンス体制を取り、技術や財務的な支援をするなど期待感が高まってる。
一方、豊富な商用実績を持つCloudStackは、2012年4月にCitrix Systemsから、Apache Software Foundation(ASF)へ寄贈され、ライセンス形態はGPLv3からApache License, Version 2.0に移行された。これにより、ASFの能力主義的なガバナンスモデルの下で、単なるオープンソースプロジェクトから開発自由度の高いオープンコミュニティーへ進化を遂げている。
以下では、クラウド管理ソフトウェアの主な機能を挙げる。
リソース管理
ユーザーの要求に応じて、ITリソース(サーバ、ストレージ、ネットワーク)のプロビジョニングをする機能を提供。
(1)適切な物理サーバ上で仮想マシンの起動、停止、削除、再起動を実行
(2)仮想マシンのブートデバイスとは別に、新たなボリュームを追加
(3)仮想マシンへの通信経路の確立や仮想マシン間を接続するための論理ネットワークを提供
サービス管理
(1)アカウントごとに利用できるリソースの制限を管理
(2)ファイアウォールやVPN、ロードバランサなどのネットワークサービスの管理
(3)利用リソースの計測や課金に必要な情報の収集
イメージライブラリ
(1)仮想マシンやストレージなどをメニュー化したサービスカタログの提供
(2)ISOイメージを管理するライブラリの提供
外部クラウド連携
Amazon Web Services(AWS)など、外部のパブリッククラウドと連携するAPIの提供。
セルフサービスポータル
ITリソースのサービスメニューを申請できるWebインタフェースの提供。
しかしながら、実は商用版のクラウド管理ソフトウェアも市場に出そろいつつある。AWSからスピンアウトしたメンバーが設立した米Nimbulaや、もともとスペインで創業し、現在は米国カリフォルニアに本社を移した米Abiquo、米Cisco Systemsからスピンアウトしたメンバーが設立した米Cloupiaなどのスタートアップ企業が台頭し、エンタープライズ企業への浸透が始まりつつある。また、最近話題になった製品では、Citrix SystemsがASFに寄贈したCloudStackをベースに、新ブランドで展開している「Citrix Cloud Platform powered by Apache CloudStack(以下、Cloud Platform)」がある。
背景には、OSSベースのクラウド管理ソフトウェアは、IT部門が検証環境でクラウド構築のPOC(Proof of Concept)をするには良いが、実環境に導入して、運用/保守していくにはハードルが高いことがある。特にユーザーインタフェースの優劣によって運用担当者に必要とされるスキルが大きく変化するため、人件費の見積もりも慎重に行う必要があるからだ。加えて、企業のIT部門のコアコンピタンスは、OSSをベースにスクラッチからクラウド管理ソフトウェアを作り上げ、自作のクラウド管理ソフトウェアをメンテナンスすることではなく、タイムリーにプライベートクラウドを構築しビジネス部門に利用してもらうことで、ビジネスに貢献することだからだ。つまり、オープンソースを研究し、ゴリゴリと実装することに時間をかけることは、企業のIT部門が求めているソリューションとは言い難い。
商用のOSSクラウド管理ソフトのコスト感
最後に、商用のOSSクラウド管理ソフトにおけるコスト感について触れたい。
例えばCloud Platformベースで仮想化基盤ができている状態からプライベートクラウドを構築した場合、どれくらい費用が掛かるだろうか。積算してみよう。
Cloud Platformの場合、CPUソケット単位のライセンス形態を取っている。最近の汎用サーバはスペックが向上しているので、8コアのデュアルCPUで32VM(仮想マシン)を収容すると仮定した場合、定価ベースで60万円、64VMでは120万程度からスタートできる。ハイパーバイザーにOSSのXenやKVMを利用できることを考えると、他社の商用版クラウド管理ソフトウェアや統合運用管理ツールと比較してコストを大幅に抑えられる。
このように、運用の自動化をスクラッチから開発しようとするとハードルが高いが、クラウド管理ソフトウェアを活用することで、あまり肩肘張らずにスモールスタートができるのではないだろうか。
商用ソフトかOSSか
プライベートクラウドの構築を検討するにおいては、ビジネス部門からの要求の変化に追従していく必要があり、特定ベンダーにロックインされないオープンなクラウド基盤やサードパーティーを含めたエコシステムとの連携が求められる。そういう意味では、自社のニーズを十分に整理した上で、商用ソフトを利用するかOSSを利用するかを判断することになる。
OSSベースのクラウド管理ソフトウェアに対しては、サポート面での不安は拭えないが、Cloud PlatformのようにOSSであってもベンダーサポート付きの商用ソフトウェアもあるので参考にしていただきたい。
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サーバ仮想化からプライベートクラウドへの道
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