オンプレミスと同じセキュリティ戦略をクラウドにも
巧妙なサイバー攻撃急増でもクラウドの利用を思いとどまってはいけない
最新の調査報告によると、企業でアプリケーションなどの資産をクラウドに移す動きが進む中、サイバー犯罪者は対オンプレミス環境と同じ手法を用いて、クラウド環境にも攻撃を仕掛けるようになってきているという。
クラウド型(SaaS型)セキュリティサービスのプロバイダーである米Alert Logicは、同社のIDS(不正アクセス監視システム)を利用する2200社以上の顧客からセキュリティインシデントに関するデータを収集し、調査結果をまとめた。
顧客の約80%はクラウドホスティング事業者で、残りがデータセンター事業者だ。調査には、Alert Logicが世界各地のパブリッククラウドインフラに置いているハニーポットのデータも使われている。
「アンチウイルスソフトは使いものにならない」ではない
この調査結果をまとめた2014年版の報告書「Cloud Security Report」が先ごろ公開された。この報告書からは、2013年4月1日から9月30日にかけて、クラウド環境に対する攻撃が量と種類の両方で急増していることが読み取れる。攻撃の多様性に関しては、上記期間にオンプレミス環境を狙った攻撃は平均2.5種類で2012年と変わらなかったのに対し、クラウド環境を狙った攻撃は2012年の平均1.8種類から、2013年には平均2.3種類に増加している。
例えば、脆弱性スキャンを受けたクラウド事業者の割合は2013年の調査報告では29%だったが、2014年版では40%以上に増え、オンプレミス環境での割合をわずかに上回っている。Alert Logicの脅威調査担当ディレクター、スティーブン・コティ氏によれば、「クラウド環境を狙った脆弱性スキャンの急増は、クラウドに保存される機密情報が増加傾向にあることを攻撃者が認識している表れだ」という。
さらに報告書によれば、攻撃者はクラウド環境へのログイン関連の脆弱性を利用すべく、ブルートフォースアタックへの依存も強めているようだ。ブルートフォースアタックを仕掛けられたクラウド事業者の割合は、2012年の35%から2013年には44%に増加している。オンプレミス環境では、半数弱の顧客がブルートフォースアタックの試みを検出している。またクラウド環境では、マルウェアの活動も2012年の調査時から2倍に増加し、2014年版では10%以上がマルウェア攻撃を経験している。
Alert Logicがハニーポットから収集したマルウェアサンプルからも、さまざまな差異が読み取れる。マルウェア攻撃の標的となった件数は、米国に設置されたハニーポットと比べて、欧州のハニーポットは4倍、アジアのハニーポットは2倍多くなっている。コティ氏によれば、「マルウェア作成コミュニティーやサイバー犯罪組織の多くは東欧に拠点があり、攻撃者は拠点の近くでマルウェアをテストしたがる傾向にある」という。
さらにハニーポットから収集されたマルウェアサンプルには、地域によって、量だけでなく種類にもばらつきがみられた。
「攻撃の種類で見ると、欧州のハニーポットでは、Microsoft-DS(Microsoft Directory Service)に対する攻撃を除き、全ての種類の攻撃が同じ割合で確認された。これは、攻撃者がさまざまな種類のマルウェアを試そうとしていることの表れだ。だが、アジアではConfickerによる攻撃が目立ち、Confickerの亜種が上位10位を占めた。アジアのハニーポットは、私がこれまでに確認したConfickerの全ての亜種から攻撃を受けているが、米国と欧州のハニーポットを攻撃したのは一部の亜種だけとなっている」(コティ氏)
セキュリティ戦略をクラウドにも
興味深いことに、ハニーポットに記録されたマルウェアのうち、アンチウイルスソフトが検出したのは約86%だった。コティ氏によれば、「検出されなかったマルウェアの大半は、ZeusやConfickerといった古いマルウェアの亜種を転用したものだ」という。
「ZeusとConfickerにはまだ高い実効性がある。セキュリティ対策としてファイアウォールとアンチウイルスしか持たない環境にこうしたマルウェアを拡散させる方法さえ見つければ、認証情報を入手できるだけでなく、攻撃も容易に仕掛けられる。わざわざ一から作る理由などあるだろうか」と、同氏は語る。
また、コティ氏によれば、クラウド攻撃に転用版のマルウェア亜種が使われることに関しては、特に目新しい要素はないという。従来のエンタープライズ環境はそうしたマルウェア攻撃に何年も前から取り組んでいるからだ。ブルートフォースアタックと脆弱性スキャンも、これまでオンプレミスデータセンターを標的としてきた。つまり、クラウドに移行しようという企業には、これまでとほぼ同様のセキュリティ問題への対応が求められるということだ。
「アンチウイルスソフトについては、もう使い物にならないとの指摘もあるが、今でも役に立つ。アンチウイルスは企業が社内環境で採用している多重防御セキュリティ戦略の一部であり、企業はクラウド環境でもこうした戦略を引き継ぐ必要がある」と、コティ氏は指摘する。
「たとえ攻撃が増加しているとしても、企業はクラウドへの資産の移行を思いとどまるべきではない」と、同氏は続ける。全体ではまだオンプレミス環境の方がより多くの攻撃を受けており、クラウド環境がセキュリティ面で劣るということはまだ確実な方法では立証されていないからだ。
代わりに、同氏は企業ユーザーに対し、クラウド環境に移行する際にはセキュリティ上の義務についてしっかり理解するようアドバイスする。そのためには、クラウドサービス事業者と率直な話し合いを持つ必要がある。
「例えば、基本のサービスについてはサービス事業者に100%の責任がある。ネットワーク要素の大半についても同様だ。だがアプリケーション層は100%ユーザーの責任だ。パッチ更新の設定、アクセス管理、ログの検査などは全て、ユーザーの責任だ」と、コティ氏は語る。「こうした要素はサービス事業者がユーザーに代わって対処するものと考えている向きも多い。だが、実際は違う。サービス事業者の責任範囲を正しく理解することが極めて重要だ」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー