「データ分析」をボート競技に生かす【前編】
英国ボート競技チームが「SAS」と「エルゴ」で実現した“勘と経験”からの脱却
新型コロナウイルス感染症のためリモートで練習するしかなかった英国ボート競技チームは、2021年の東京五輪に向けた選手のトレーニングプログラム策定と選手選定に、データを積極的に活用した。その中身とは。
英国のボート競技チームは2021年開催の「2020年東京オリンピック競技大会」(以下、東京五輪)で実力を最大限発揮できるようにするため、SAS Instituteのデータ分析ツールを活用した。同チームのパフォーマンス担当ディレクター、ブレンダン・パーセル氏によると、SASのデータ分析ツールはトレーニング計画とモニタリングの両面で重要なツールだった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)でチームメンバーが集まることが難しかったためだ。
英国チームが実践 「SAS」と「エルゴ」によるデータ活用法とは
パーセル氏は2020年5月、SASが開催したユーザー企業向けバーチャルカンファレンス「SAS Global Forum」の基調講演に登壇した。2020年のボート競技シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で、東京五輪も含めて「全て白紙になった」(同氏)。そのため英国ボート競技チームは、東京五輪開催の2021年にピークを合わせるためのトレーニング方法を考える必要があった。
まず実行したのは、各選手に屋内向けローイング(ボートこぎ)マシンの「ローイングエルゴメーター」(以下、エルゴ)を提供することだ。リモートで練習する各選手のデータをエルゴで収集し、企業が財務指標を見るのと同じようにSASのデータ分析ツールで分析することで、コーチ陣は選手の実力を追跡できた。
それだけではない。これまで英国ボート競技チームは、選手が集まって練習することを前提に、チーム全体に合わせてトレーニングプログラムを組んでいた。エルゴとSASのデータ分析ツールを活用することで、データを基に各選手に合わせたトレーニングプログラムを組めるようになったのだ。同チームは、2010年代半ばからSASのデータ分析ツールを利用している。
選手ごとの専用トレーニングプログラムを用意した結果、英国ボート競技チームは選手一人一人の強化を実現しやすくなった。「通常は、各選手の違いを把握するよりもチーム全体の傾向に目が行きがちだ」とパーセル氏は述べる。各選手の現在の実力を今後の予測と比較すれば、選手一人一人のトレーニングプログラムを調整しやすくなり、選手の実力を引き出しやすくなる。「これは実に重要なことだ」と同氏は指摘する。
2021年になって競技会の再開が迫ると、どの選手をどのボートに乗せ、どの選手をボートのどこに座らせるのかをコーチ陣が決める段階で、「これまでよりもデータを重視して決定を下すようになった」とパーセル氏は語る。
例えば8人の漕手(そうしゅ)と1人の舵手(だしゅ)が乗る競技の「エイト」の場合、技術が優れた漕手を船首と船尾に、力が強い選手を中央に配置することが一般的だ。パーセル氏は「選手の配置はこれまでもうまくできていた」と説明しつつ「コーチの勘や経験に頼ることが多過ぎた」と明かす。
データ分析により「現実のインサイト(洞察)を、コーチの勘や経験に組み合わせられるようになった」とパーセル氏は言う。こうしたインサイトの中には、これまでの活動の意味を否定するものもあったという。それでも「おかげで選手の実力も結束も向上している」と同氏は語る。
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