量子インターネット入門【前編】
古典的なインターネットとは違う「量子インターネット」の“謎めいた世界”
「量子インターネット」は、従来使われてきたインターネットよりも高速に情報を処理できるネットワークとして期待されている。どのような仕組みなのか。その世界を解説する。
量子力学の特性を利用して情報を処理する「量子コンピュータ」が実現する一方で、今後より期待が寄せられる可能性があるのが「量子インターネット」だ。その定義についてさまざまな理論が検討される中で有力な概念となっているのが、量子情報を処理できるノード(コンピュータ)同士を接続する「量子ネットワーク」を大規模化したものだ。
どのような技術や現象を利用することで量子インターネットができるのか。従来使われてきたインターネットとは何が違うのかを踏まえて解説する。
古典的なインターネットとは違う「量子インターネット」の世界とは
量子コンピューティングや量子ネットワークは以下の量子力学の現象を利用する。
- 量子もつれ
- 2つ以上の量子が相互に密接に関連付けられた状態で、一方の変化が即座に他方に影響を与える状態。量子エンタングルメントとも呼ばれる。
- 重ね合わせ
- 量子ビット(量子コンピュータにおける情報の単位)が複数の状態を同時に表現できる量子力学の原理。これにより、計算を並行して処理できるため、通常のコンピューティングよりも高速に処理できるとされている。
量子ネットワークは現状、研究室内の限られた距離でしか実現していない。量子インターネットの研究者は、より長距離での量子もつれを実現するための実験や、量子インターネットの仕様を研究している。
従来のインターネットと量子インターネットでは何が変わるのか。
データの単位
従来のインターネットは、情報をビット(bit)という形で送受信、計算、保存する。ビットはコンピューティングで扱う情報の最小単位であり、情報を0や1で表現する。これによりテキストの文字や画像のピクセル、ビデオのフレームなどのさまざまな情報を表現できる。
一方、量子インターネットでは情報のやりとりに、光子の振動方向(偏光)や電子の自転(スピン)のような、粒子の特性を使った量子ビットを使用する。量子ビットは重ね合わせの性質から、0と1の両方の状態を同時に持つことができるため、複雑な情報処理を可能にする。
量子インターネットでは、エラー訂正や暗号化といった論理演算が、パケット(伝送するデータを小分けにした単位)内の他の量子ビットに影響を与えることなく、個々の量子ビットに対して実施される。従来のインターネットとは異なり、データの一部を変更しても全体には影響しない。
インターネットは、通信プロトコル群「TCP/IP」をベースとして仕様が定まっている。量子インターネットではTCP/IPよりもデータの配信やIPアドレス管理、ルーティング、セキュリティを効果的に実現する仕組みが研究されている。
次回は量子インターネットと現在のインターネットを比較して、通信エリアやセキュリティについて分析する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
4
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
5
「Windows 10」が入ったままの“Windows 11未移行PC”に残された延命手段
-
6
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
10
Windows 11“なぜか勝手に再起動”の真犯人は「更新プログラム」だった?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー