FinOpsとセキュリティの関係【前編】
結局「FinOps」とは何か? なぜコストにもセキュリティにも効果があるのか
クラウドサービスに関するコストの管理手法「FinOps」とセキュリティには、意外な関係性がある。両者の協業がもたらす効果と、企業のクラウド戦略における重要性とは。
企業のクラウドサービスのコストを管理する手法として「FinOps」がある。FinOpsは、複数のクラウドサービスの支払い内容を一元化して可視化し、IT部門と財務部門、事業部門が連携してクラウドサービスのコスト管理に取り組む手法を指す。FinOpsを実現するには、自社のクラウドサービスの利用パターンを把握する必要がある。特に重要なのが、クラウドサービスに潜むセキュリティリスクに関する洞察を得ることだ。FinOpsがセキュリティの運用にも関係するのはなぜなのか。
結局、FinOpsとは? セキュリティにも関係するのはなぜ?
FinOpsは、クラウド管理戦略の一環としてFinOpsの実践を確立し始めたばかりの企業が最初に重視すべきものだ。具体的には以下の手順を踏む。
- クラウドサービスの使用状況の測定
- コスト効率の測定
- クラウドリソースの最適化
- KPI(重要性能評価指標)の設定
- 継続的なモニタリング
財務部門と事業部門向けのレポートだけではなく、セキュリティ部門のニーズを満たすアラートとレポートの作成も必要だ。FinOpsチームは、セキュリティ部門をステークホルダー(利害関係者)として、無駄なクラウドサービスや過剰なリソース配分に関するデータを共有すべきだ。セキュリティ部門との協力によって、クラウドセキュリティのリスクを抑えることができる可能性がある。
FinOpsチームとセキュリティ部門の協業で重要な取り組みは、協力関係を毎年検証する必要がある。この取り組みを通じて、FinOpsの習熟度向上とツールの進化に合わせ、セキュリティチームがより正確なFinOps関連データを利用できるようになる。セキュリティ部門はこのデータを用いてクラウドサービスの監視、インシデント対処、フォレンジック(インシデント発生時の痕跡調査や被害解明の取り組み)を実行するという流れだ。
FinOpsとセキュリティの効果的な連携は、企業のFinOps実践の成熟度に比例して発展する。非営利団体FinOps Foundationは、企業のFinOps実践の成熟度を評価するための「FinOps Maturity Model」を提唱しているが、その中ではサイバーセキュリティに言及していない。だが実際には、FinOpsチームとセキュリティ部門の協業体制が確立している状態は、FinOps Maturity Modelで上級レベルに相当する「Run」の段階にある、成熟した企業の証だと言える。理想的には、そうした協業体制の確立は、Runの1つ下のレベル「Walk」で実施すべきだ。両チームの協業をクラウド管理に組み込み、共同での意思決定、ガバナンス、インシデント対処を通じて得た教訓をフィードバックして改善できる。
良好な関係を築くには?
FinOpsチームとセキュリティ部門の協業体制の構築は、FinOpsツールを選択する段階から始めるのが望ましい。FinOpsチームは、セキュリティ要件と制約を理解することで、より的確にコストの予測、予算配分の計画、不要なコスト削減を進めることが可能になる。このような予測はより費用対効果が高いクラウド運用につながる。
次のステップは、FinOpsチームの継続的なフィードバックを支援するコミュニケーションとコラボレーションの場を作ることだ。クラウド管理ツールのレポートや、グループチャットを活用したコスト最適化など、取り組みやすい形でよい。FinOpsチームとセキュリティ部門の定期的なミーティングを実施するよりも、両者のオープンなコミュニケーションを優先させるべきだ。
こうした初期ステップに続いて、さらなる協業を目指すのであれば、FinOpsツールをセキュリティ部門のSIEM(セキュリティ情報およびイベント管理)システムと連携させることを検討する。そうすれば、クラウドサービスのコストデータとセキュリティイベントを関連付け、クラウド運用に対する包括的な見解を提供できるようになる。
次回は、FinOpsとセキュリティ部門の連携が実際のセキュリティ対策としてどう役立つのかを解説する。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
5
オフコンからの脱却 小川建設が自社開発システムを捨てパッケージERPを選んだ訳
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
8
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
9
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
10
「有線LAN環境」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー