2012年米大統領選からCIOが得られる教訓(後編)
オバマ氏再選の鍵となった予測分析、日本でも通用するか?
2012年の米大統領選は投票総数1億2600万人となる一大イベントだった。ビッグデータと予測技術を巧みに使い勝利したオバマ陣営は、人口統計的な分類ではない“有権者の政治を変える能力”を測定していた。
インターネットを使った選挙運動が日本でも解禁される。前回の「日本で解禁されるネット選挙運動、米国から学べることは?」に続き、2012年の米大統領選挙において、SNSとビッグデータ分析を活用したオバマ・バイデン陣営の巧みなネット選挙運動を紹介。当初苦戦を強いられていた同陣営が再選を果たした背景を解説する。その戦略には日本でも応用できるノウハウが詰まっている。
ビッグデータと予測分析で多面的視点を獲得する
調査会社Forrester Researchでビッグデータと予測分析を担当しているアナリストのマイク・ガルティエリ氏によれば、オバマ・バイデン陣営が成し遂げたことは、まさに企業がマーケティングと製品開発の分野で成し遂げたいことだという。「企業は顧客との間で、よりパーソナライズされたエクスペリエンスを生み出したいと考えている」と同氏。
そのためには、企業は顧客や見込み客に関して「もっと多く」を知る必要がある、と同氏は言う。「かつてわれわれは顧客を360度の視点から捉えることを目指していた。だがそうした視点は、年齢や性別、民族といった標準的な人口統計に偏りがちであり、会社との関係に限定される」と同氏。「これでは、会社中心の取引ベースの視点からしか、顧客を見ることができない。もっと顧客個人に焦点を当てた視点を得るためには、顧客についてさらに多くを知る必要がある。顧客の強い願望、その時々の気分、ある時点における居場所、競合企業も含めた他社との関係といったことになるだろう」と同氏は続けている。
会社が企業中心の360度の視点ではなく「多面的な視点」から顧客を捉えられるよう、CIOは手助けすべきだ、とガルティエリ氏は指摘する。「より深い意味を見いだすためには、ビッグデータと予測分析を用いるしかない」と同氏。2012年の米大統領選では、その必要性が確固たるものになった。
ガルティエリ氏によれば、確かにテクノロジーの側に課題が幾つかある。CIOは「データの保存(Store)」「処理(Process)」「アクセス(Access)」の問題に対処しなければならない(同氏は頭文字をとって、これを「SPA」と呼んでいる)。しかも、ここでいうデータとは「全てのデータ」のことだ。「かつて企業は有益なデータとそうでないデータを会議室で判断しようとしていた。だがそんなことは分からないから、結局、全てを保存しなければならない」と同氏。データの保存に関しては、企業はHadoopクラスタなど、大規模データセットを保存するための各種のツールに投資している。データの処理に関しては、ETL(抽出、変換、ロード)ツールなどのデータ統合ツールを用いて、クレンジングやエンリッチメントなど、従来のデータ修正作業を行う必要がある。
ただし、顧客を多面的視点から捉えるためのこの新しい取り組みには、「これまで聞かなかった質問を機械学習アルゴリズムで見つけ出し、データ分析を行うことも含まれる」(同氏)という。データへのアクセスに関しては、CIOはユーザーがデータを視覚化できるよう支援する分析基盤を用意する必要がある。
だがティボドー氏とガルティエリ氏によれば、CIOにとって本当の難題は、データの蓄積でも、処理でもなく、「ビッグデータとデータ分析ツールを活用するためのマインドセットとスキルを構築し、組織統制を図ること」だという(関連記事:スターCFOに学ぶ「CIOが成功するための10の秘密」)。「企業は、顧客を個人として捉えるようにはできていない」とティボドー氏は語る。そのやり方の良き手本となるのが、オバマ・バイデン陣営だ。
ジャーナリストのアイゼンバーグ氏が指摘している通り、大統領選を除き、米国で1日に1億2600万人(大統領選の投票数)もの成人の心を動かすイベントはほとんどない。オバマ・バイデン陣営はビッグデータと分析技術の助けを借りて、まさにそれをやってのけた。「オバマ陣営が採用したのは、有権者1人ひとりを数値化するというやり方だ。ただし、その数値は有権者1人ひとりの個性を捉えたものであって、人口統計的な分類ではない。こうした数値によって測定されたのは、人々の政治を変える能力や政治によって変われる能力だ」と同氏は続けている。これが、企業のCIOが今学ぶべき教訓だ。
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