“艦これ”だってiPadでできる
iPadで“本家Office”もMacも動かす「リモートデスクトップ」6選
熱心なiPadユーザーだが、このWindowsアプリだけは使いたい――。そんな人の有力かつ手軽な解決策となるのが「リモートデスクトップアプリ」だ。主要な6種を紹介する。
リモートデスクトップ接続は重要なアプリケーションだ。その人気の高さ故か、米Microsoftの「Windows」、米Appleの「Mac OS」、OSSの「Linux」にはリモートデスクトップ接続のホストソフトウェアが同梱されている。Appleのタブレット「iPad」で利用可能なリモートデスクトップ接続のクライアントアプリも豊富にある。
リモートデスクトップアプリを使用すると、タブレットなどクライアントアプリを実行している端末から、ホストソフトウェアが稼働する他の端末へ接続できる。前者でユーザーインタフェース(UI)を操作し、後者の状態を確認して管理可能だ。
リモートデスクトップアプリは、自宅やオフィスのLANやLTE回線だけでなく、カフェの公衆無線LAN経由でも実行できる。自宅のリビングからオフィスのデスクトップPCへ接続したり、ホテルから自宅のクライアントPCへ接続したりするのに使える。
念のために補足しておこう。リモートデスクトップアプリが機能するには、リモート操作されるホスト端末の電源がオンになっていて、ホストソフトウェアのインストールと設定が完了し、実行されている必要がある。
iPadは、ホスト端末へアクセスするクライアント端末として使用できる。ホスト端末として利用できるのは、WindowsやMac OS、LinuxといったデスクトップOSの搭載端末だ。Microsoftの「Windows 8」搭載端末がホスト端末の場合、タッチ操作向けの「モダンUI」もクライアント端末から操作できる。
ただし、ホスト端末からクライアント端末を操作するのは不可能だ。管理設定を調整すれば幾つかの例外はあるかもしれないが、基本的にはiPadなどAppleの「iOS」搭載デバイスへのリモートアクセスはできない。
正直なところ、タッチ操作ベースのタブレットで、キーボード操作が前提のクライアントPCへリモートアクセスする操作は、必ずしも快適とはいえない。「Microsoft Excel」などキーボード/マウス指向のWindowsアプリをリモートで制御するのは、レインコートを着てボクシング用グローブをはめて、テーブルサッカーゲームをプレイするようなものだ。
Bluetooth接続のキーボードを持っていても同じだ。Windows 8のタッチ操作指向のモダンUIであっても、タブレットからリモート制御するのは容易でない。こうした特性により、遠隔地からのテクニカルサポートなど、リモートデスクトップが一般的に使われる作業の多くを困難にしている。
離れた場所にあるホスト端末へリモートでアクセスすると、処理や動作に遅延が生じる。これは、インターネットやリモートデスクトップアプリベンダーのクラウドを経由してホスト端末へ接続しているために発生する現象だ。クライアント端末として利用するiPadと、ホスト端末として利用するデスクトップ/ノートPCを並べて試してみてほしい。両方の端末でスピーカーをオンにして動画共有サイト「YouTube」の動画を再生すると、遅延が発生する状況を実際に確認できるだろう。
一方、離れた場所にある端末にインストールされているWindowsのオフィスアプリの実行、保存されているファイルの取得、動画の再生といった操作には、iPadからリモートアクセスしても支障はない。これらの作業ができないよりは間違いなく良い。
本稿では、iPadに対応したリモートデスクトップアプリの中から人気のあるものを幾つか紹介する。もちろん、多くのアプリでは他のモバイルOS版も用意している。
主要アプリ6種を紹介
詳細は以下の通りだが、基本的な機能は同じだ。異なるのは、価格や追加機能、パフォーマンス、使い勝手である。「リモート印刷」「ファイル転送」「ターゲットシステムにニックネームを付ける」「強力なセキュリティ」「サポート」などを得るには、有償のアプリや追加料金の支払いが必要になる場合が多い。
どのアプリも、Windows/Mac OS搭載端末へアクセスするためのホストソフトウェアを用意する。中にはLinuxや「UNIX」システムへアクセスできるアプリもある。
リモートデスクトップアプリは一般的に、ユーザー/ホスト単位で課金される。クライアントソフトウェアは無償で利用できる。多くのアプリには無料で利用できる試用版が提供されている。実際に使ってみて、最適なアプリを見極めることをお勧めする。
1.GoToMyPC
| アプリ名 | GoToMyPC |
|---|---|
| 価格 | ホスト端末1台当たり月額9.95ドル/年額99ドル(国内ではKDDIの場合、ホスト端末1台当たり月額1200円/年額1万2000円) |
米Citrix Systemsの「GoToMyPC」を使用すると、iPadからWindows/Mac OS搭載のデスクトップPCとノートPCへアクセスできる。必要な作業は、ホスト端末への「Java」ベースのホストソフトウェアのインストールとアカウントの作成、iOSアプリのインストールだ。ホストソフトウェアは、GoToMyPCのWebサイトから簡単にダウンロードできる。
iPad版のGoToMyPCは、次の機能を用意する。
- リモートファイルアクセス
- 印刷
- 音声(ホストPCで実行しているアプリの音声をiPadで確認できる)
特筆すべきなのはマルチモニターの操作機能だ。ホストPCに複数のモニターが接続されている場合、iPad側でモニターを切り替えることができる。切り替えには、画面の端にあるアイコンかキーボードのショートカットを使用する。
GoToMyPCでは、セッションの開始時に便利なジェスチャのヒントを表示する。ポインタ制御のサポートを目的とした、マウスに見立てたアイコンもある。iPad用クライアントソフトウェアの画面上部にあるツールバーも便利だ。このツールバーには、仮想キーボードや矢印キー、マウスなどの設定にアクセスできるアイコンを配置している。
2.LogMeIn Pro
| アプリ名 | LogMeIn Pro |
|---|---|
| 価格 | ホスト端末2台までの場合、年額99ドル(国内では年額1万4000円) |
米LogMeInの「LogMeIn Pro」は、iPadがリリースされる前から存在していたアプリだ。長年にわたってWindows/Mac OS搭載端末へのリモートアクセスを実現してきた。
LogMeIn ProのiOSクライアントは、タップ操作をシングルクリック/ダブルクリックとして使用できる。1本の指でタップした場合は左クリック、2本の指でタップした場合は右クリックだと見なす。ピンチ操作によるズームイン/アウトも可能だ。その他、ドラッグ、スクロール、仮想キーボードの表示/非表示の切り替えもタッチ操作でできる(全ての操作の一覧は、起動時の「ヒント」画面に表示する)。
LogMeIn Proのクライアントソフトウェアを起動したiPadのディスプレーには、カーソルの約1センチ下にマウスに見立てた画像が表示される。この画像の左右のボタンはタップ操作が可能だ。この機能により、「Microsoft Office」などのデスクトップアプリが幾分使いやすくなる。とはいえ、使いづらさが完全に解消されるわけではない。
LogMeIn Proでは、1ホスト端末当たり約50ドル(約7000円)の年間サブスクリプションを用意する。LogMeInのサブスクリプションは3種類が用意されているが、奇妙な価格構成になっている。2台までのホスト端末へアクセス可能な個人向けサブスクリプションが年額99ドル(国内では年額約1万4000円)、5台までのホスト端末へアクセス可能なパワーユーザー向けのサブスクリプションが年額250ドル(年額3万4400円)、10台までのホスト端末へアクセス可能な小規模企業向けサブスクリプションが年額449ドル(年額6万1900円)だ。
これは若干困った価格構成だ。例えば、所有しているホスト端末が1台または3台の場合、使用しない分についてもサブスクリプションの料金を支払わざるを得ない。複数のサブスクリプションを適宜組み合わせて利用すれば、ホスト端末が4台、6台、7台、8台、9台の場合でも必要な数のライセンスを購入できるだろう。ただし、サインオンが複雑になる可能性はある。1台のホスト端末しか使用しないユーザーは、年間約50ドル(約7000円)をドブに捨てる計算になる。
とは言うものの、LogMeIn Proではリモートデスクトップ接続以外にもさまざまな機能が提供されている。ファイル転送、リモート印刷、リモートでオーディオを聞きながら高解像度の動画を再生する機能などだ。
3.TeamViewer
| アプリ名 | TeamViewer |
|---|---|
| 価格 | ホスト端末1台で749ドル(国内では6万9100円)から、非商用利用の場合は無料 |
独TeamViewerの「TeamViewer」では、WindowsとMac OS以外にLinuxを搭載したホスト端末への接続が可能だ。非商用利用の場合は無料であり、オフィスや仕事で使用していないことが条件となる。外出中にホームオフィスの端末へアクセスすることも商用利用だと見なされる。
TeamViewerのライセンスは決して安くない。「Business」は、ホスト端末1台の場合749ドル(国内では6万9100円)で、1台追加するごとに139ドル(1万3700円)の追加コストが発生する。ホスト端末台数が無制限の「Premium」「Corporate」も提供し、価格はそれぞれ1499ドル(9万9700円)と2839ドル(27万5600円)だ。支払いは1回のみで、ホスト間でライセンスを譲渡できる。ライセンス番号の転売も可能だ。とはいえ、簡単に購入に踏み切れる価格ではない。
特筆すべき機能は「Wake-on-LAN」だろう。適切なハードウェアが搭載されていることが条件になるが、この機能を使用するとホスト端末をリモートで“ウェイクアップ(電源オン)”できる。
筆者はTeamViewerでデスクトップPCとノートPCへリモートアクセスして、さまざまな操作を実行してみたが、操作に問題は見られなかった。とはいえ、支払いが1回のみで転売可能であることを考慮しても、ホームビジネスや小さな企業にとって749ドル(6万9100円)というライセンス価格は購入を断念する要因となり得る。
4.VNC
| アプリ名 | VNC |
|---|---|
| 価格 | 企業用はホスト端末1台当たり44ドル、個人用には無料版も提供 |
英RealVNCの「VNC」を使用すると、WindowsやMac OS、Linux、UNIX端末へリモートアクセスできる。
VNCは、価格、機能性、複雑さの絶妙なバランスが取れたアプリだ。クライアントソフトウェアは全て無料で提供するが、ホスト端末側のサーバライセンスは有償だ。技術に明るくない平均的なコンシューマーや技術知識のレベルが中程度のユーザーには、若干ハードルが高いアプリかもしれない。
個人用には無料版も用意する。企業用と個人用の有償版では、サポートとより多くの機能が利用できる。有償版は30日限定の試用版として無料で利用可能だ。
有償版を購入すると、そのライセンスは恒久的に利用できる。価格は、ホスト端末1台当たり企業用が44ドル、個人用が30ドル。ただし、アップグレードと技術サポートの有効期間は購入から1年だ。
技術サポートはすぐ必要になるかもしれない。VNCのセットアップは、本稿で紹介している他のリモートデスクトップアプリよりも難しい。サーバソフトウェアである「VNC Server」では、必要に応じてファイアウォールとルータの設定が自動で変更される。アプリを機能させるには、オンラインドキュメントを通読し、何度かの試行錯誤が必要だった。正常にセットアップが完了するころには、挫折しそうな状態だった。
セットアップが困難であるにもかかわらず、無料版VNCの機能はあまり充実していない。
マウスのエミュレーション、Appleのゼロ構成プロトコル「Bonjour」、高解像度画面といった機能は、全てのバージョンで利用できる。最大の問題は、無料版に暗号化機能を搭載していないことだ。暗号化を実行するのは、最初のパスワードハンドシェイクのみだ。ネットワークを盗聴すれば、ホスト端末の操作内容を把握できる。これには、アプリやWebサイトのID/パスワードの入力操作も含まれる。
VNCで表示されるマウスボタンは大きい。だが個人的には、GoToMyPCやLogMeIn Proのタッチスクリーン対応マウスほど優れているとは思わない。また有償版は、「接続の暗号化」「システム認証」「テキスト転送」「拡張パフォーマンス」の機能を用意する。
簡単なテストを実施した結果、VNCは問題なく機能した。だが本稿で紹介した他のリモートデスクトップアプリよりも、セットアップと全体的な操作が煩雑だと感じた。
5.PocketCloud
| アプリ名 | PocketCloud |
|---|---|
| 価格 | 有償のiOS版「PocketCloud Pro」は14.99ドル(国内では1500円)、無料版も用意 |
米Wyse Technologyの買収で、米Dellの製品ラインとなった「PocketCloud」を使用すると、iPadからWindows/Mac OS搭載端末へリモートアクセスできる。必要な操作は、ホストソフトウェアをインストールして構成するだけだ。
RealVNCのVNCと同様、PocketCloudを構成して接続を確立するには試行錯誤が必要になる。ID/パスワードには米Googleの「Gmail」のアカウントを使用できる。また、ホスト端末の「ドメイン」名を作成しなければならないこともある。
UIに関しては、さまざまな機能のアイコンを配置したツールバーがある。このツールバーを使用すると、作業場所を切り替えたり、使用頻度の高いツールでタッチポインタを有効化したり、ポインタ精度を向上させたりすることができる。
PocketCloudには無料版と有償版がある。無料版の機能に加え、複数端末への接続機能などを備えた有償版の「PocketCloud Pro」の価格は、iOSの場合14.99ドル(国内では1500円)。リモートアクセスに加えて、オンラインストレージも無料で利用できる。
アプリ内課金でさらに機能を追加できる「PocketCloud Premium」は、3カ月7.99ドル(800円)などで利用できる。PocketCloud PremiumのiPadクライアントでは、全画面での「ファイル閲覧」、デスクトップ検索、動画のストリーミングに加え、ファイルのダウンロードやメール送信、印刷の機能を用意する。
7.Parallels Access
| アプリ名 | Parallels Access |
|---|---|
| 価格 | 月額4.99ドル/年額49.99ドル(国内では年額2000円) |
米Parallelsの「Parallels Access」を使用すると、iPadからWindows/Mac OS搭載端末へリモートアクセスできる。必要な作業は、アクセスしたい端末にホストソフトウェアをインストールするだけだ。
Parallels AccessのiPad用クライアントソフトウェアを起動すると、音声を伴わない説明の動画が再生される。おかしな話だが、この動画は一時停止もキャンセルもできない。
特筆すべきParallels Accessの便利な機能は、ホスト端末で動作するアプリをクライアント端末の画面に全画面表示できることだ。通常はWindowsのタスクバーが占有する領域にもアプリを表示できる。そのため、Windows/Mac OSで動作しているアプリなのに、通常のiPadアプリと同じように見える。もちろん、デスクトップ全体と他のアクティブな全ウィンドウを表示するオプションもある。
デフォルトの設定では、カーソル/マウスの動作は本稿で紹介した他のリモートデスクトップアプリに劣る。だが「拡大」ビューは精度をコントロールするのに役立つだろう。
結論
iPad指向の使い勝手という点で、Parallels Accessには幾つかの非常に魅力的な機能がある。だがカーソル/マウスの制御には不満が残る。価格の点では、RealVNCのVNCやTeamViewer(非商用利用の場合)、PocketCloudが無料で使用できる。
本稿で紹介した以外にもiPadに対応したリモートデスクトップアプリはある。本稿で紹介した機能や検討事項が、リモートデスクトップアプリを探すときの一助となれば幸いだ。
繰り返しになるが、iPadからリモートアクセスした場合、多くの作業の操作性はデスクトップOSを搭載したデバイスほど良くも簡単でもない。ただし、多くのタスクは問題なく実行できる。それ以外のタスクについても、リモートで全くアクセスできないよりはよいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
2
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
5
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
6
「即戦力」は幻想? 中途の3割が消えるAI時代のエンジニア生存戦略
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
9
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
10
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー