モバイルとの親和性も強化
クラウド時代のメインフレーム延命術とは?
メインフレーム処理とインターネットアプリケーションを連係させる新しい方法を提供するIBMの「z/OS Connect」。どのような機能を持つのか、既存ソフトウェアとどう重複しているのかを見てみよう。
米IBMは、モバイルやクラウドの普及に対応してさまざまなデバイスによるインターネットを介したメインフレーム利用のサポートに力を入れており、その一環として「IBM WebSphere Liberty z/OS Connect」を2014年4月にリリースした。
こうしたメインフレーム利用をサポートするため、IBMはモバイルデバイスからメインフレームにアクセスするための従量制の料金体系も導入し、モバイルデバイス経由のトランザクションに掛かるコストを抑えられるようにしている。また、メインフレームの主要な各サブシステムをIP通信に対応させている。
z/OS Connectは、「IBM WebSphere Application Server 8.5 for z/OS」(WAS 8.5)のLibertyプロファイル上、または「IBM CICS Transaction Server for z/OS 5.2」(CICS 5.2)のJava仮想マシン(JVM)上で動作するサーブレット。RESTfulインタフェースを提供し、ユーザーはJavaScript Object Notation(JSON)メッセージで通信する。
アプリケーションのアクセスポイントは、URLで特定されるサービスとして構成される。各サービス定義はXMLファイルを指しており、これらのファイルにはサービスプロバイダーに加え、JSONメッセージとメインフレームの言語構造体の間でのデータ変換ルールが記述されている。サービスプロバイダー定義はz/OS Connectサーブレットに、バックエンドへの接続方法を知らせる。CICSとバッチ用にz/OS Connectは「WOLA(WebSphere Optimized Local Adapters)」を使用する。「IMS」で提供される「JCA(Java Connector Architecture)」を利用して「IMS Connect」を介してIMSと通信する仕組みだ。
IBMはz/OS ConnectをWAS、CICS、あるいは「IMS Mobile Feature Pack」とともに提供している。CICSまたはIMSを持っていない場合、企業はWASまたはLibertyプロファイルのライセンスを購入する必要がある。
z/OS Connectはメインフレームに対応した各種機能を備えている。主な機能の1つが、JSONと言語構造体の間の変換だ。この変換を定義するプロセスは、CICSのために開発されたものによく似ている。ユーティリティが入力JSONメッセージまたは言語構造体を基にバインドファイルを作成するというものだ。z/OS Connectは、実行中にこのバインドファイルを使って変換を行う。CICS、IMS、z/OS Connect用のバインドファイルは相互運用が可能だ。これは、サブシステム間でポータビリティがあることを意味する。z/OS Connectは、変換されていないJSONメッセージをバックエンドシステムに直接渡すオプションも提供する。
z/OS Connectは「z/OS System Management Facility(SMF)」に、SMF 120.11レコードを書き込む。これによってz/OS Connectのパフォーマンスやデバッグの問題が追跡されるようになっている。リクエストIDでバックエンドへのクライアントメッセージが識別される。また、z/OS Connectは「z/OS System Authorization Facility(SAF)」と連係する。これにより、IBMの「RACF」や「ACF2」のようなパッケージによるサービスアクセス制御が可能になる。
メインフレームのユーザー企業は、システム出口に似た「インターセプタ」でz/OS Connectの処理を変更することもできる。インターセプタはインバウンドまたはアウトバウンドリクエストメッセージを監視し、適切なアクションを実行する。システムプログラマーは全てまたは一部のメッセージを対象とするグローバルインターセプタを定義できる。IBMはSMFおよびSAFインタフェース用のインターセプタを使用している。
z/OS Connectは開発者向けにディスカバリサービスもサポートしている。1つの呼び出しで、z/OS Connectで定義された全てのサービスが返される他、特定のサービスリクエストでそのサービスの使い方の詳細を調べることもできる。このため、プログラマーはバックエンドの詳細を全て把握していなくても、モバイルアプリケーションを作成できる。
ソフトウェアコストの削減を図っている企業を想定し、z/OS ConnectはCICS JVM上で動作していても、特定の処理の専用エンジンである「IBM System z Integrated Information Processor(zIIP)」や「IBM System z Application Assist Processor(zAAP)」でも実行される。
既存ソフトウェアとの価値比較
z/OS Connectは、メインフレームコネクタ分野の新しい重要なプレーヤーだ。IT部門はこのソフトウェアを購入する前に、そのメリットを手持ちのソフトウェアと比較検討しなければならない。
IBMが2013年4月に発表した「CICS TS Feature Pack for Mobile Extensions V1.0」は、z/OS Connectと機能的に重複しているようだ。過去の例から考えると、IBMはこのフィーチャーパックをCICSの無料版に取り込むだろう。また、このフィーチャーパックにはJSONサポートが統合されているため、顧客は既存のインフラを使ってCICSのセキュリティ、監査、管理機能を利用できる。CICSをモバイルバックエンドとして使用すれば、CICSシステムおよびアプリケーションプログラマーのスキルセットも生かせることになる。
z/OS Connectにも幾つかのメリットがある。z/OS Connectは、既存のサブシステムにソリューションを単に付加するのではなく、メインフレームから軽量サービスを提供する仕組みを刷新するものだ。また、コストを削減できる専用エンジンでも動作する他、ディスカバリサービスにより、メインフレームが非メインフレームプログラマーにとってもアクセスしやすくなり、開発がスピードアップする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
製品資料
[株式会社ウェーブスプリッタ・ジャパン] 100Gbps対応の光トランシーバーはどう選ぶ? 10分で分かる選定のポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
2
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
3
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
4
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
5
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
6
AWS障害でも補償ゼロの衝撃 サイバー保険で情シスが見落とす「細則の壁」
-
7
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
8
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
9
マンガで解説:採択率は3割台? デジタル化・AI導入補助金申請の落とし穴
-
10
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー