「彼らはこの問題を深刻に考えていない」(カムカー氏)
禁断のクレジットカード「MagSpoof」、誕生のきっかけは予測できる再発行番号
1つのデバイスで複数のクレジットカードに成り済ますことできる“オープンソースハードウェア”の開発者が、そのきっかけとなったクレジットカードアルゴリズム問題を発見した経緯を米TechTargetに語った。
米American Expressが使用しているアルゴリズムに問題となり得る脆弱(ぜいじゃく)性があることをネットワークセキュリティの研究者であり“実践者”でもあるサミー・カムカー氏が発見した。カムカー氏は、この脆弱性によって古いカード情報に基づいて再発行したカードの情報を予測できたという。
きっかけは、American Expressのカードを紛失したときに再発行した新しいカード番号だった。「再発行カードの番号が紛失したカードの番号と酷似していることに気が付いた」とカムカー氏は自分のブログで報告している。
そこで、カムカー氏は他に所持していたAmerican Expressのカードや友人のAmerican Expressのカードと比較してみた。その結果、既に紛失したり盗難にあったりしたカードでも、完全なカード番号が分かれば再発行したAmerican Expressのカード番号を正確に予測できる普遍的なパターンが見つかったとカムカー氏は話している。
この発見したパターンからクレジットカードのハッキングプログラムを利用できるオープンソースハードウェア「MagSpoof」を開発した。MagSpoofは、Chip&PINセキュリティを無効にし、クレジットカード情報を格納し、さらに、従来の磁気ストライプリーダーに対してワイヤレスで使用できる。
カムカー氏は、TechTargetに「攻撃者が予測したカード情報を使って実際に商品を購入するには、そのカードのセキュリティコード(CSC)が必要になる(CSCは、CIDまたはCVV2と呼ぶこともある)。だが、American Expressはセキュリティコードにも脆弱性を抱えていた」と述べている。カムカー氏は古いカードのCSCが、予測した新しいカード番号を使った電子決済でも依然として使用できることも発見している。
米Rook Securityでアプリケーションと製品開発のリーダーを務めるマイケル・テイラー氏は、「American Expressカードの脆弱性で考えられる最も危険なシナリオは、攻撃者がカードを実際に入手したときであることに変わりない。だが、カードの脆弱性によって、CSCがなくても不正行為が可能になった」と警告する。
テイラー氏は、従来のペイメントカードのように機能しながら複数のクレジットカードやメンバーズカードの情報を保存できるデバイスについて言及する一方で、次のようにも語っている。「攻撃者は、磁気ストライプの書き込みデバイスやMagSpoofのようなデバイスを使用すれば、米Coinの『Coin』のようなカードに、新しく発行したカードの情報を読み込むことができる。この手法による不正決済を見破ることは困難だ。Coin自体はCID(CVV2)の照合を行わないので、いったんデータを読み込んでしまえば攻撃者はCIDを知らなくてもCoinカードを直接使用できる。また、このような脆弱性を悪用して、Chip&PINを無効にすることも可能だ」
2015年8月にカムカー氏は、自分のクレジットカードでハッキングできたことをAmerican Expressに報告すると同時に、発見した新しいカード情報を予測するアルゴリズムを公開しないと約束した。しかし、American Expressはこの状況をあまり大きな問題と捉えていないとカムカー氏は語る。
American Expressの不正対策部門は、この問題による脅威度は限定的と捉えていて対応の優先順位を低くしているのではないかとテイラー氏は分析する。「これは新種の攻撃なので、American Expressもこれを悪用した場合に生じるコストをまだ把握していない可能性がある。カムカー氏は、アルゴリズムを公開することはないと主張しているが、攻撃者が脆弱性の存在に気付き、その脆弱性を生み出した方法を知ったしまった場合、その脆弱性を特定して公に広める危険性は高い」(テイラー氏)。
American Expressが、このクレジットカードのハッキングをそれほど大きな問題だと捉えていなくても、何かしらの対策を講じる必要があるとテイラー氏は指摘した上で次のようにアドバイスしている。「American Expressは再発行カードの番号を生成するアルゴリズムを調査すべきだ。再発行カード番号を予測不可能にして、新しいカード番号を生成するための参考データとして既存のアカウントやカード番号を利用しないようにしなければならない。さらに、カードの再発行プロセスも見直すべきだろう。盗難報告のあったカードについては、カードの再発行後に不正行為が行われていないかを継続して調査する必要がある」
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