徹底解説! モバイル決済のセキュリティガイドライン【前編】
「iPhoneのPOS端末化」急増、そのセキュリティ対策は?
セキュリティ標準「PCI DSS」を策定するPCI SSCが、スマートフォンでのクレジットカード決済に必要なセキュリティ対策をまとめたガイドラインを発行した。その内容に迫る。
ここ数年、小売業界などでクレジットカード決済処理サービスが急成長している。タクシーや飲食店が、小型のクレジットカード読取機を取り付けたiPhoneを顧客に渡して支払いを受け付ける光景も珍しくなくなった。従来のような大型の有線レジや専用の無線クレジットカード端末は不要だ。
モバイル決済処理は、小売業者に革新をもたらした半面、コンプライアンスの面では混乱も生じさせた。これまでモバイル端末に関しては、クレジットカード業界におけるセキュリティの国際基準、「PCI DSS」の順守に関する明確なガイドラインがなかったのだ。
モバイル端末を使った決済処理をしている小売業者は、銀行からPCI DSS順守を要求される一方、同じ銀行からPCI DSSを順守していないかもしれない製品を売り込まれるという奇妙な状況に立たされる可能性があった。だが幸いなことに、小売業者や金融機関など、PCI DSS順守に関わる事業者がよりどころとすべきガイドラインがこのほど登場した。
本稿では、最近公開されたモバイル端末決済のセキュリティに関するベストプラクティスをまとめたガイドライン「PCI Mobile Payment Acceptance Security Guidelines(以下、新ガイドライン)」を取り上げる。
新ガイドラインは、PCI DSSのセキュリティ基準の開発、管理、教育および認知を担当するオープンフォーラム、PCI Security Standards Council(PCI SSC)が2013年2月に公表した。モバイル決済のセキュリティに対するPCI DSSの影響について、PCI SSCの解釈を示すとともに、小売業者がモバイル端末を使ったクレジットカード決済を受け付けるリスクについて啓発する内容となっている。
ガイドラインの範囲
新ガイドラインは、「決済処理専用ではなく、平文データにアクセス可能なコンシューマー向けモバイル端末(スマートフォン、タブレット、PDAなど)」(本文から引用)で決済アプリケーションを実行する際の対処法を説明する。具体的には、iPhone/iPadやAndroid端末など、決済処理専用ではないモバイル端末でクレジットカード決済を受け付ける状況を想定している。
新ガイドラインの中で、あまり考慮されていない重要なトピックが2つある。
1つ目は、私物端末の業務利用(BYOD)である。多くの組織がモバイルコンピューティング戦略としてBYODを採用しているのにもかかわらず、新ガイドラインはBYODに対して極めて慎重だ。「BYODのシナリオでは、小売業者が端末のコンテンツや設定をコントロールできないので、ベストプラクティスとして推奨しない」としている。
結局のところ、BYODのモバイル決済処理は容認されるのか。それともされないのか。PCI SSCは、こうしたケースがPCI DSSに順守しているかどうかの判断を、時として主観的になりがちな認定セキュリティ評価機関(QSA)に任せているようだ。つまり、コンプライアンス対応についての判断は、小売業者自身の端末(表面上の意味でも比喩的な意味でも)次第ということになる。
2つ目は、コンシューマーが自分の端末やアプリケーションにクレジットカード番号を入力するケースだ。例えば、小売業者がモバイル端末向けWebサイトやアプリケーションを提供しており、さらにコンシューマーが手持ちのモバイル端末で商品を購入するケースは、新ガイドラインの対象ではない。
モバイル決済のエコシステムのうち、小売業者が管理する部分(大抵の場合はモバイルアプリケーションやWebサイト、バックエンドシステム)は通常のPCI DSSの対象となるが、モバイル端末自体のセキュリティ対策についてはコンシューマーが責任を負う。
新ガイドラインは、小売業者がPOS(Point Of Sale)用途でモバイル端末を使う場合にのみ適用される。つまり、米モバイル決済企業Squareの「Square Register」や米電子決済サービス大手PayPalの「PayPal Here」をはじめとするモバイルカードリーダーなど、小売環境で急速に普及している技術が対象だ。
モバイル決済対応のベストプラクティス
モバイル決済技術の採用を検討中、あるいは使用中の組織は、新ガイドラインにじっくり目を通す必要がある。内容は、以下の主要3分野を網羅するセキュリティのベストプラクティスで構成される。
- トランザクションセキュリティ
- デバイスセキュリティ
- アプリケーションセキュリティ
後編は、各分野について詳しく見ていく。
本稿筆者のマイク・チャップル氏は、博士号、CISA(Certified Information Systems Auditor)、CISSP(Certified Information Systems Security Professional)の取得者で、米ノートルダム大学のITセキュリティマネジャー。以前は米国家安全保障局や米空軍に情報セキュリティ調査員として従事。また、情報セキュリティ関連のテクニカルエディタであり、CISSPの資格取得参考書など多数の書籍も執筆している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
徹底解説! モバイル決済のセキュリティガイドライン
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
5
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
6
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
7
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
8
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
9
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
10
「OSの選定・導入」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー