クラウド化を目指すSAP
SAP製品ロードマップの主要技術はモバイル、クラウド、仮想化
SAPのCTOが、仮想化、クラウドコンピューティングへの取り組みや製品ロードマップについて語った。
独SAPのCTO(最高技術責任者)によると、同社の今後の製品ロードマップの鍵となる技術は、モバイルアプリケーション、クラウド、仮想化だ。
同社CTOのビシャール・シッカ氏は、今後数年で経済活動全体のモバイル化が進み、企業はほぼ例外なく、アプリケーションをモバイル環境でも運用するようになるとの見通しを示した。そのため、こうしたアプリケーションの利用・サポート方法がますます重要になるという。
それらにかかわる技術には4つの側面がある。具体的には、アプリケーションの構築、提供、利用、および変更・ライフサイクル管理だと、シッカ氏は述べた。同氏はSAPの製品ロードマップの一環として、こうした技術を生かすフレームワークの構築と改善を、顧客を混乱させることなく継続していくというビジョンを描いている。
「わたしは、時とともに進化していくソフトウェアを頭に描いている。その進化は基本的に、ソフトウェアの信頼性、安定性、洗練性、(開発の)俊敏性の実現方法を常に追求し、融合させることで生まれる」とシッカ氏。「われわれはソフトウェアのイノベーションを、顧客を混乱させることなく提供していくつもりだ」
SAPの製品ポートフォリオの技術・イノベーション戦略を担当するシッカ氏は、広範囲にわたるインタビューに応え、SAPの今後の製品ロードマップの一端を説明した。同氏はSAPのチーフソフトウェアアーキテクトを務めていた2007年、同社の初代CTOに就任した。現在はロードマップの紹介から実験的なソフトウェアの開発まで、多様な業務を統括している。
シッカ氏の部門は、SAPアプリケーションのクラウド化に取り組む。同氏は最近、同部門にCogheadのエンジニア9人を迎えており、SAPが進めているSaaS(Software as a Service)統合の問題解決に彼らが貢献すると期待している。SAPは2009年2月下旬、PaaS(Platform as a Service)ベンダーのCogheadの知的財産権を買収している。
SAPの顧客は、アプリケーションがクラウドから提供されることを望んでいるが、オンプレミス(自社運用)型アプリケーションで得られる機能性が犠牲になるのは困ると思っていると、シッカ氏は語った。クラウドコンピューティングは、使い勝手が大きく向上しており、インフラとハードウェア管理も著しく進歩している。しかし、まだ課題も多い。
「クラウドではエキサイティングなことがたくさん起こっている。多様なアプリケーションが活発に構築されており、興味深い新たなプログラミングアプローチや新しいプログラミング言語が台頭しようとしている」とシッカ氏。「だが、クラウドによる基幹エンタープライズ機能の提供は進んでいない」
新しいプログラミング言語が台頭しつつあるのは確かだが、シッカ氏はSAPの古くからのユーザーもサポートするアーキテクチャの整備に力を注いでいる。「SAP NetWeaverの開発が進む一方で、ABAP(Advanced Business Application Programming)が切り捨てられてしまうのではないか」と心配しているユーザーは安心してほしい、とシッカ氏は話している。プログラミング言語の採用曲線と、それらの言語で作成されたアプリケーションのライフサイクルが混同されていると、同氏は指摘した。
「わたしは、SAP技術を利用するすべてのプログラマーが今後も力を発揮していけるようにソフトウェアアーキテクチャを整備している」と同氏。「ABAPは優れたアプリケーション開発言語だ。しかし、ABAPが世界で唯一のそうした言語だと考えるのはナンセンスだ。同様に、ABAPがすぐに消えてしまうと考えるのもナンセンスだ」
「あなたがABAPプログラマーなら、これからもどんどんABAPを使ってほしい」とシッカ氏。「もっとも、われわれがサポートしている選択肢はほかにもたくさんある」
一方、ますます多くの顧客がSAPを仮想環境で運用するようになっており、そうしたいと考える企業も増えていると、シッカ氏は語った。同氏の部門は、顧客がアプリケーションを仮想環境で容易に運用できるようにすることに注力している。
SAPは現在、Adaptive Computing Controllerにより、リソースを随時、任意のサーバに割り当てて実行するための集中管理ポイントを提供していると、シッカ氏は語った。
VMware、HP、Cisco Systemsといったパートナーと連携し、SAPは仮想環境の最適化、運用の簡素化、仮想環境管理の負担軽減を進めると、シッカ氏は語った。SAPは、仮想環境の稼働率が突然低下した場合のリソース配分の最適化や、SAPソフトウェアを移動してその利用率の最大化を図る方法などの課題に取り組んでいくという。
SAPはパートナーとの協力に力を入れ、SAPを仮想環境で運用しやすくするとともに、SAPアプリケーションがサービスを利用する仕組みについてパートナーへの情報提供を推進していくと、シッカ氏は語った。
例えば、仮想化されたアプリケーションのサポートは、業界全体で「対応が手薄な問題」の1つだと、シッカ氏は指摘した。変更管理のサポートと併せて、これからも取り組んでいかなければならないと、同氏は付け加えた。
「サポートの問題は非常に重要だ」とシッカ氏。「仮想環境でも、エラーが検出できなくなるのは避けたい」
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