ここまで来た中堅・中小企業のPC資産管理【後編】
「機能よりも使い勝手」――中堅・中小企業向けPC資産管理ツールの導入条件
このところ、企業がPC資産管理をセキュリティ対策に役立てる動きが高まっている。数あるPC資産管理ツールの中から中堅・中小企業に支持されている製品を幾つか取り上げ、それぞれの成り立ちと特徴を紹介する。
前編「500台未満では後回し」のPC資産管理に関心が集まる理由」では、PC管理の現状と課題、ツールの選び方などを紹介した。PC資産管理・運用管理に関する製品はさまざまなベンダーから提供されているが、中堅・中小企業(以下、SMB)も対象に据えている製品に共通するのは、手間が掛からず運用が簡単である、オールインワンで機能が盛り込まれているといった特徴だ。その中でも、長年ユーザー企業から支持されているものには独特の視点や優位性などが表れている。
JP1をSMB向けにパッケージし直した「JP1/Desktop Navigation」
例えば、日立製作所のシステム統合運用管理製品「JP1」。運用管理ソフトの国内市場シェアで12年連続トップ(テクノ・システム・リサーチ社調べ)の座を維持するなど大規模~中堅企業で数多く利用され、この分野のスタンダードの1つといえる。その日立製作所は、2009年9月にSMB市場に特化した「JP1 Ready Series」シリーズを発表。第一弾として、SMBのユーザーがJP1の機能をすぐに使い始められるよう、低価格でオールインワンにパッケージングし直した「JP1/Desktop Navigation」をリリースした。
ホーム画面から日々の運用状況を管理
レディーメードという意味が込められたJP1 Ready Seriesは、前述の“すぐに使える”が重要な設計ポイントとなっている。そこでJP1/Desktop Navigationは、社内に散在するPCを集中管理するため導入後の初期診断で現状を把握し、具体的な対策ポイントを明確にしたり、そのまま使えるセキュリティポリシーを標準搭載して運用状況に応じてブラッシュアップしたりできる。そのほかにも、JP1と同様にエージェントレスですぐさま運用を開始できる機能が盛り込まれている。
「ホーム画面」と呼ばれるダッシュボードは、全体のPCの利用状況やセキュリティ状況などをリアルタイムに把握するのに利用する。使われていない無駄なPCやソフトウェアライセンスの数、最近の重大イベントを時系列で表示できる。
また、脆弱なパスワードや自動ログオン設定などを検知する基本的なセキュリティ管理もカバーしており、定期的なリポート発行、運用ルールの見直しといった運用サイクルを簡単に実施できる。リレーショナルデータベースやWebアプリケーションサーバを同梱し、導入コストと手間を軽減しているのも特徴といえる。
SMBが求めているのは“コンパクトデジカメの使い勝手”
「JP1は本格的なデジタル一眼。一方、JP1 Ready Seriesは誰でも使えるコンパクトデジカメの気軽さがあるといったイメージ」。そう説明するのは、日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部でJP1マーケティング部の主任技師を務める関 芳治氏。
デジタル一眼はプロが使えばテクニックを駆使できるが、場面に応じて多機能を使い分けなければ持ち味を生かすことができない。片や、コンパクトデジカメは誰でも簡単に使えるよう設計されているものの、画質を高度に操作するような機能は備えていない。「専任の管理者がいない、SE並みの専門知識がないというSMBが求めているのは、コンパクトデジカメの使い勝手の良さ」(関氏)だという。
実はこの製品、日立製作所が2005年に発売した「JP1 Smart Series」のリベンジという形で開発された。同社は、JP1 Smart SeriesをJP1の廉価版としてリリース。機能を幾つかそぎ落とすことでSMB市場に販路を広げようともくろんだが、JP1同様に細かな設定が必要だったため、SMBにはハードルが高すぎて市場拡大は望めなかった。
同社 ソフトウェア事業部 企画本部計画部 主任技師の立原秀和氏は、「その反省を生かし、中堅・中小企業が本当に求めているものや課題を徹底的に分析し、根本から開発し直した。機能を落とした一眼ではなく、誰でも使えるデジカメにすることが重要だった」と語る。
エンドユーザーを巻き込んで画面イメージを開発
そこで同社は、マニュアルがなくても画面を見ただけで直感的に情報の意味を理解でき、次にどんなアクションが必要かを判断できるデザインが必要と考えた。エンドユーザーの意見も参考に、管理者のメンタルモデル通りに画面が動くよう画面のチェックと操作シミュレーションを繰り返したという。
「ここで作られたインデックスはマニュアル作りにも生かされている」と立原氏が言う通り、JP1 Ready Seriesでは標準マニュアルのほかに、運用までの基本操作を最短手順で記載したスターターガイドと、より効果的に利用するための機能別のクイックリファレンスを用意し、家電製品並みのユーザビリティを実現している。
今後、JP1 Ready Seriesの第二弾も予定され、サーバ管理に対する課題を解決する製品が計画されている模様だ。「ユーザーのニーズを丁寧に見極めながら、シリーズとしてパッケージのラインアップを強化していく」(関氏)という。JP1を使いたくても使えなかったSMBにいかにアピールできるか、日立製作所の本気度が注目される。
15年間機能改善した成果の「LanScope Cat6」
一方、SMBを中心に市場規模を拡大しつつあるのが、エムオーテックスの「LanScope Cat」である。1990年にネットワーク管理の専門企業として創業した同社は、国内初のデスクトップ管理ツール「LanScope FOR」を開発。その上位版として1995年にLanScope Catを発売し、現在はネットワークセキュリティ統合管理ツール「LanScope Cat6」に進化。資産管理から操作ログ管理、セキュリティ、各種リポート出力と、ネットワークマネジメントに必要な機能をワンパッケージで実装しているのが特徴だ。
毎年、新たなネットワーク管理ツールが登場しては、その多くが市場から撤退する中、LanScope Cat は15年間ユーザーの声を反映させながら機能改善に取り組んできた。その結果、富士キメラ総研の「2009ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」におけるIT資産/PC構成管理ソフトウェア部門で、2005年から5年連続トップシェアを維持。シリーズ累計で4900社380万ユーザーに利用される人気ツールとなっている。
ログ取得で現状把握・抑止・証跡管理
「LanScope Cat6が支持される背景にあるのは、その運用性の高さ」と断言するのは、エムオーテックス 取締役執行役員の高木秀人氏。ネットワークを導入目的通りに運用・活用するために必須の3大要素、つまり、「クライアントPCやサーバの利用状況の把握」「操作やアクセスの監視による禁止行為の抑止」、さらに「万一情報漏えいが発生した場合の証拠や原因を特定する証跡管理」を、ログ取得によって容易に実現できるからだという。
実際に同社は、最新版のLanScope Cat6からデータベースにOracle DatabaseとMicrosoft SQL Serverを採用し、ログデータの長期保存(5年間)やネットワーク負荷・クライアント負荷の徹底した軽減に配慮した。標準パッケージではWebコンソールによる情報分析管理、資産管理、操作プロセス管理、アプリケーション稼働管理などを可能にし、アプリケーションやパッチの配信機能も搭載。またプレミアムパッケージでは、それらに加えてアプリケーションID監査、Webアクセス監視、記憶媒体などのデバイス制御機能をサポートする。共通のオプションでは、サーバ監視や障害対応・運用指導などのリモートコントロール、不正PC監視をパッケージで用意している。
操作プロセスが一般用語で丸見えに
また、エムオーテックス 営業推進部 部長の池田 淳氏は、「ほかの管理ツールに比べて使い続けられている要因は、ログの見やすさ、分かりやすさにある」と話す。
LanScope Cat6のログ管理画面をのぞくと、例えば、「A氏が営業部のPCでおとといの20時~21時30分に共有ファイルから顧客情報を閲覧、21時40分にファイルをデスクトップにコピー、名前変更した上でUSBメモリに書き込みした」ほか、「B氏が総務部のPCで3日前の19時30分~20時30分までソリティアを使用し、ハイスコアを出した」などの操作プロセスが誰にでも分かる一般的な用語で表記され、丸見えの状態になっている。「ログから、どの部署のどのPCで、誰が・いつ、どれくらいの時間、何のアプリケーションを使用していたかなどが分かることが重要」と池田氏は言う。
また、PCの稼働状況をグラフで表示し、操作中か放置状態かも色で識別。適正な環境・時間帯に適正な操作ができているかを表示するセキュリティ診断リポート機能を備える。特にPCのセキュリティ状況の数値化は、システム担当者だけで使うのではなく、経営層でも理解できる分かりやすさに配慮したものだ。社内で決めたポリシーが守られていれば100%だが、PCにWinnyがインストールされていたり、YouTubeを閲覧していたり、深夜や土日に操作していたりするとセキュリティ値はどんどん下がる。“部署別ワースト3”や“エージェント別ワースト10”を社長自身も知ることができるのだ。
「製品ではなくサポートを売る」 保守の更新率は9割以上
さらに高木氏は「当社は製品ではなくサポートを売る会社だといってもいいくらい、サポート力には自信がある」と強調する。同社のプッシュサポートプログラムでは、ユーザー企業が製品を導入後、1カ月目、3カ月目、6カ月目、9カ月目、11カ月目、13カ月目ごとに、エムオーテックスのサポート担当から連絡を入れる。余計なおせっかいのようにも思えるが、これらタイミングはユーザーがツールの運用にくじけそうになる時期であり、それを放置すると問題が起きた場合に正しい分析や有効な対策が取れず、投資も無断になってしまう確率が高いという。
例えば、インストールは確実にできたか(1カ月目)、セキュリティポリシーは決まったか(3カ月目)、リポートがちゃんと活用できているか(6カ月目)などを問いかけ、問題があればノウハウを惜しみなく提供する。そのようなサポートのおかげで、保守の更新率は9割を超えているという。
そのほか、大阪と東京で定期的にユーザー会を開催し、最新の技術情報や活用事例を公開するなど、ユーザーの担当者が孤立せず利用企業同士の情報交換の場を用意しているのも、「サポートを売る」という同社ならではだろう。
どれがベストチョイス? そのほかのPC資産・セキュリティ管理製品
上記以外にも、安価で手間の掛からないSMB向けPC資産・セキュリティ管理製品を以下にピックアップした。自社に合った選び方、使い方を検討してはいかがだろうか。
「PC運用上手」(東芝情報機器)
アプライアンスで提供されるPCの統合セキュリティ製品。PCの操作ログを定期的に保存し、分析する「操作監視」、各種ドライブや接続デバイス、アプリケーションの実行を制限する「操作制御」、不正持ち込みPCを排除する「検疫ネットワーク」、ポリシー違反を検出し集計する「解析・通知」のほか、Active Directoryによる「ID管理」、障害発生時にデータ復旧する「PCデータ管理」、PCのハード/ソフト情報を一元管理しワークフローで実現する「資産管理」、セキュリティポリシーを管理画面から設定できる「システム管理」などで構成される。
「ICTセンサー」(ネットスター)
小型センサー端末を設置してWeb閲覧管理機能とPC資産管理機能を実現する製品。主な標準機能は次の5つ。
- ユーザーが閲覧したURLの内容をカテゴリで表示し、グラフで特定PCを把握するWeb閲覧管理
- ハード/ソフト台帳の作成、ソフトライセンス管理などを一括管理する資産管理
- PCパフォーマンス・プロセス稼働状況・セキュリティ対策状況を把握する稼働管理
- 危険信号をユーザーPCにポップアップ通知し、管理者など指定メンバーにもメール通知するアラート通知
- 一定期間のアラートの集計・比較をポータル画面で表示するセキュリティサマリー
「QND Plus」(クオリティ)
クライアントPCの構成管理ツールとして必要な機能を備え、根強い人気を持つオールインワンパッケージソフト。クライアントPCのハード/ソフト/周辺機器などのスペック、利用状況などを把握し、収集したクライアントPCの情報を利用して台帳化する。また、セキュリティポリシーの設定により、クライアントPCの構成維持・管理が可能だ。さらに、自動インストール機能で強制的にタスクを実行し、リモートコントロール機能によるクライアントPCの遠隔操作やリアルタイムでの状況監視も可能となっている。加えて、初期展開や運用管理コストを削減するための各種自動化機能を搭載する。
「WebSAMオフィス」(NEC)
大企業向け運用管理ツールとして人気が高い「WebSAM」シリーズからオフィスのシステム運用に特化した機能を抽出した、小中規模システム専用製品。管理用サーバは不要で、サーバ1台10万円からの運用管理を実現した。統合インストーラによりスムーズに導入でき、監視テンプレートの自動インポートにより即日監視を始められる。サーバ内の情報を一元管理し、シンプルな操作で異常を検知するとともに管理者へ電子メール通報もできる。また、発生した障害に対処するための復旧方法を示すガイダンス、ナレッジを利用することで、一定レベル、一定時間をキープした対処が行える。
「LogVillage 2.0」(蒼天)
資産管理機能では、ハードの台帳管理、ソフトの情報把握やソフトライセンス管理が可能。稼働管理機能では、PCパフォーマンス、プロセス稼働状況、セキュリティ対策管理が実施できる。また、Webアクセス履歴、印刷履歴、デバイス接続履歴などの記録、アラート抑止といった操作ログ管理を実現。ファイル管理機能では、HDD・USB接続された外部記憶媒体内のファイル管理が可能となっている。
「AssetView PLATINUM」(ハンモック)
分かりやすい操作性が人気の「AssetView」の最新版。2009年12月にGOLDからPLATINUMに進化した。主な機能は以下の通り。
- PCのハード情報/ソフト資産を把握するIT資産管理機能
- 社内のPCに一括導入し、PCの環境設定の自動変更も可能な自動インストール機能
- PC内の個人情報が含まれるファイルを検出し、外部流出を抑止する個人情報検索機能
- PCの操作ログの把握と問題発覚後の追跡、不正操作対策を行うPC操作ログ管理機能
- 社内のIT統合資産管理対象PC以外はネットワークから遮断し、安全を保つ不正PC遮断機能
- 遠隔地のクライアントPCを複数台同時に操作し、PCメンテナンスをサポートするリモートコンソール機能
「SKYSEA Client View」(SKYSEA)
情報セキュリティ対策に必要な機能をオールインワンで搭載する。主な機能は以下の通り。
- ハード/ソフトの情報を常に最新状態で管理する資産管理機能
- 資産データとログデータをクロス分析してリスクや無駄なコストを発見する情報収集・分析機能
- すべてのクライアントPCの操作を13種類のログで記録するログ管理機能
- セキュリティポリシーに沿ってルールを運用するためのセキュリティ管理機能
- 日々変化する状況を的確に把握するためのリポート機能
- クライアントPCを最適な状態に保つメンテナンス機能
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