大企業CIOの決断
モバイル端末普及で求められる新しいデータセキュリティ戦略
モバイルデータセキュリティ戦略は見直しを求められる一方で、個人の携帯からのアクセスに関するポリシーなどは緩和へと向かう傾向が見られる。
モバイル端末が普及する中でCIOは、モバイルデータセキュリティにまつわる幾つかの厄介な問題について見直しを始めている。具体的には個人所有のモバイル端末に関するポリシーの緩和、未知のスマートフォンへの予算割り当て、多様なエンドポイント端末のバックアップなどが挙げられる。
調査会社の米Enterprise Strategy Group(ESG)によると、大規模組織ではモバイル端末採用の転換点に近づきつつある。全組織のエンドポイント端末の総数で比較すると、デスクトップPCの台数はまだ、ノートPCの2倍に上る。しかし従業員数が増えるほどこの割合は変化し、大企業の場合、エンドポイント端末の半数近く(48%)をデスクトップPC以外の端末が占めていた。
こうした新しいモバイルパラダイム(小型化の進展や通信とアプリケーションの発展によって弾みが付いている)には、新しいモバイルデータセキュリティ戦略が必要になると専門家は言う。1つ意外な展開として、個人の端末を使った会社のデータへのアクセスに関するポリシーは緩和へと向かう傾向が見られる。
規制は緩和、データセキュリティは強化
「私は最初は断固としてBlackBerry以外は持たないことにしていたが、われわれは次第にそれを緩和してきた」と話すのは、毛髪製品を手掛ける米BosleyのIT責任者、マーク・ダベンポート氏。「私は手持ちのiPadを使っており、これが気に入っている。私の仕事の内容や、やり方に合っている」という。
テクノロジーのコンシューマー化(モバイル端末の普及を促進させるもう1つの要因)はまず最も消費の多い地域に到達しており、ダベンポート氏がDroid、iPhone、BlackBerry、iPadなどのスマートフォンを取り入れることになったのは想定外とはいえないかもしれない。90カ所あるBosleyのオフィスでは現在、限られた数の中核アプリケーションに、従業員が自分の好きなデジタル端末でアクセスできる。「従業員が自分のモバイル端末で何をしようと関知しないが、電子メールは(会社の)Outlookを利用している」(ダベンポート氏)
医師向けに医療情報を提供している米Schumacher Groupのダグ・メネフィーCIOもBlackBerryオンリーのポリシーを廃止したといい、次のように語った。
「『BlackBerryを使わなければならない』だったのを、9カ月ほど前に『個人の端末を使いたければ許可するが、なくしたり盗まれたりした場合にIT部門が遠隔操作で消去できることを条件とする』と改めた。iPhoneが1台盗まれたが、われわれはBlackBerry Enterprise Serverを使ってこの端末のデータを遠隔操作で消去できた」
モバイルデータセキュリティを怠るなかれ
ESGによれば、エンドポイント端末(デスクトップPCとノートPCを含む)に保存したデータは保護されていない場合も多い。全てのPCのバックアップを取っている組織は49%、全てのノートPCのバックアップを取っている組織は38%のみだった。一方で回答者の11%が、社内で保護されたデスクトップPCは25%に満たない、あるいはデータ保護のプロセスが全く存在しないと回答。これら組織のノートPCでは12%が同じ状態だった。
ESGのアナリスト、ローレン・ホワイトハウス氏によると、エンドポイント端末が盗まれたりした場合よりも、バックアップを怠った場合の方が危険は大きいという。IT部門がサポートしているエンドポイント端末はかつてなく増え、ユーザーが端末に保存する情報やファイルも増えている。一貫したデータ保護戦略が存在しない組織も多く、それが重要なデータをなくした場合の潜在的危険につながる。
しかしSchumacher Groupのメネフィー氏によれば、未知のスマートフォンのコスト管理や合理的な補償制度を設定することの苦痛に比べれば、端末の盗難により生じる危険は影が薄れるという。「(モバイル端末の)サービスには多大なメリットがあるが、コストのコントロールと管理が非常に難しいことが分かってきた。どこまで行ったら『もう十分』といえるのか」
バックアップはミッションクリティカル
ESGのホワイトハウス氏は「エンドポイントは大部分がバックアップされていないため、多くの組織にとっての弱点になっている」と話す。プロダクションサーバの場合、企業は「不測の事態についての懸念はない。データセンターは保護されている。エンドポイントで適用される保護のレベルは低いが、リスクは同じくらい大きい。例えば販売業務では、ノートPCの生産性の問題は同じくらい重大だ」(同氏)
「こうしたことを真剣に考えていない組織や話し合ったことがない組織は、それをやっておく必要がある」とホワイトハウス氏は指摘し、エンドポイント端末を保護する手段は多数あり、IT部門の中で管理することも可能だと付け加えた。重要なのはバックアップだと同氏は説き、「エンドポイントのデータを保護する場合、どこかにコピーを置かなければならない」と話す。
リモートユーザーとモバイルユーザーは、仮想プライベートネットワーク経由で会社のネットワークに接続していない時であっても、業務に支障をきたさず、かつ継続的なデータのバックアップが必要になると、ホワイトハウス氏は最近のリポートで結論付けている。転送され、保存されるデータの量は最適化技術を使って最低限に抑えるべきであり、移動中のデータのセキュリティ対策も必要だ。ローカルのバックアップは自動的に中央のリモートコピーと同期した方がいいと同氏は助言している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー