今後10年間のビジョン
IBMのCIOが語るITリスク管理、モバイル端末セキュリティ(前編)
IBMのパット・トールCIOに、iPadやスマートフォンの導入状況やビジネス目標、同社におけるCIOの役割などについてインタビューした。
米IBMのCIOを務めるパット・トール氏は、今後10年間のスパンで同社の競争力強化を目指す幾つかの重要施策を中心となって進めている。例えば同氏は、14万人のユーザーがアクセスできる世界最大級のプライベートクラウド「Blue Insight」の構築と立ち上げを統括した。また、肥大化していた同社のIT業務の整理統合も指揮している。この取り組みは、IBMのIT投資が、同社の広範なビジネス戦略と整合性の取れた形で行われるようにすることを目的としている。
米TechTargetはトール氏にインタビューし、IBMにおけるCIOの役割の進化や、ITリスク管理の面で同氏が懸念している問題、同社内のアプリケーション開発やモバイル端末のセキュリティ対策について話を聞いた。
―― リスク管理についてどのような責任を負っていますか。
トール ITリスク管理に責任を負っています。より大きな文脈では、私は企業リスク管理委員会の一員です。この委員会は私のほか、コントローラー、最高財務セキュリティ責任者、監査役などで構成されています。われわれの任務は、IBMの企業リスク管理ロードマップの策定です。私はこのロードマップのうち、データ保護など、ITに直接関連する部分を担当しています。また、このロードマップに内容が反映されるITリスク管理ロードマップも担当しています。
―― ITリスク管理の面で懸念している問題は何ですか。
トール 大きな懸念事項となっているのが、組織的なサイバーセキュリティ攻撃です。専門集団が十分な資金を基に、われわれの知的財産を盗もうと攻撃を仕掛けてきます。データ流出も懸念事項です。当然のことながら、われわれのような規模の企業は、全ての外注先とともに、データを監視し、データの行方を把握するプログラムの実施を徹底しなければなりません。3つ目の懸念事項は、もちろんマルウェア攻撃です。マルウェア攻撃は日常化していますが、スマートフォンにとって大きな脅威となっています。
―― セキュリティの観点から、スマートフォンをどのように扱っていますか。
トール 今のところ、われわれの会社では、社員が会社のVPNに接続することは許可していません。しかしわれわれは、一部の社員をユーザーとして、安全なVPN接続を介して自分のメールやカレンダー、連絡先情報にアクセスできるシステムのパイロット運用も行っています。これらは、ほとんどの社員がアクセスしたいと考えているデータです。注意しなければならないのは、どのような時点で、社員がイントラネットサイト上の幅広いデータにアクセスしたり、ファイルを添付して送信したりできるようにするかです。われわれは、そのための前提となるモバイル端末のセキュリティ対策を拡充しなければなりません。家で仕事をし、スマートフォンを使って社内データにアクセスする社員はますます増えていきますから。われわれのイノベーションチームの1つがモビリティにフォーカスしているのはそのためです。
―― IBMでは、技術的な理由や何らかの考え方から、iPadを禁止していますか。
トール いいえ。われわれは今、iPadのパイロット導入を行っています。iPadやBlackBerry用のアプリも開発しました。こうした端末でどんな生産性向上効果が得られるか、感触をつかむためです。ただし、それらは社内用です。われわれは「Whirlwind」というモバイルアプリストアを運営しており、このストアでは400のアプリを配信していますが、それらは全て自社開発したものです。
―― IBMはハイテク企業の中でも最大級の特許ポートフォリオを持っています。そうした技術の一部を優先的に、短期間で迅速に製品化する計画はありますか。
トール われわれは太陽電池技術の分野で、非常に興味深いイノベーションを達成しています。もう1つのエキサイティングなイノベーションとして、有機分解できないプラスチックボトルに関連するものがあります。われわれのカリフォルニアの研究員は、こうしたボトルの有機分解に役立つ化学プロセスを開発しました。われわれはパートナーと協力して、その化学合成を実現する低コストな製造プロセスの開発に着手しています。ただし、このプロセスは、自社製品のために利用するつもりです。
後編(1月31日公開予定)に続く。
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