ERP成功のヒント【第5回】
ERP導入コンサルタントとの付き合い方
ERP導入の成功に欠かせないコンサルタントはプロジェクトでどのような働きをするのだろうか。コンサルタントとうまく付き合い、その能力を最大限に生かすことがERPのスムーズな導入につながる。
前回記事「ERP導入フェーズで欠かせないユーザー部門参加の極意」はERP導入フェーズにおけるIT部門の役割について説明した。今回は、IT部門を中心とした会社側のプロジェクトメンバーが、ERP導入コンサルタントとどのような点に留意して付き合ったらよいかをお伝えする。
ERP導入コンサルタントの支援は必須
ERPの導入コンサルタントとは、ERP導入ベンダー側のメンバーとしてERPの導入をサポートする専門家である。多くはシステムインテグレーターなどベンダーの担当者だ。導入コンサルタントは、解決すべき課題を抽出し、それをERPで解決するソリューションを提案し、要件を取りまとめ、ERPによる基幹システム構築の全般を統括する。
社内にERP導入経験のある人材を確保している企業でない限り、コンサルタントが行う業務を社内の人材のみで遂行することは困難である。その意味で、ERP導入においてはコンサルタントの支援が必須と考えてよいだろう。IT部門は、コンサルタントとまさにタッグを組んでERP導入プロジェクトを推進することになる。
コンサルタントの役割をよく認識する
しかし、ここで勘違いしていけないことがある。それは、コンサルタントに任せておけば、たちどころにソリューションが提示されたり、待っていればERPがセットアップされたりはしないということである。ERPを導入して自社の課題を解決する主役は、あくまで会社側のプロジェクトメンバーである。そのためには、前回記事「ERP導入フェーズで欠かせないユーザー部門参加の極意」で述べたように、業務改革を実行するために、要件定義の過程を通してユーザー部門を中心として時間をかけた議論が必要であり、また、運用テストにも積極的に関与しないとERPのスムーズな導入は難しい。
導入コンサルタントは、導入ベンダー側の立場に立ってERP導入をサポートするのがその役割である。会社側メンバーは、コンサルタントはERP導入という大きな仕事を成功させるためのレバレッジ(てこ)であり、それを有効に活用するのは自分たちだという認識が必要だ。もし、「全てこちらでやりますから任せてください」などと言うコンサルタントでいたら、少し資質を疑った方がよいかもしれない。筆者の経験でも、会社側メンバーがコンサルタントに重要な判断を任せ、積極的に議論に参画しないプロジェクトは、結果としてスムーズなERP導入ができないことが多い。
逆に「会社が決めることなので全て会社が決めてください」などと全面的に会社側に判断を任かせるコンサルタントも要注意である。通常、会社側メンバーの多くにとってERP導入は初めての経験であり、何をどう判断していいのかさえ分からないというのが普通である。コンサルタントは、会社側メンバーが的確な判断をできるように、ERPについて十分な説明をしたり、場合によっては複数の代替案を提示したりすることでサポートする役割がある。
プロジェクトの推進役であるIT部門としては、こうしたコンサルタントの役割をよく認識して、ユーザー部門が重要な判断をコンサルタントに任せていたり、逆にコンサルタントの関与の仕方が不十分であると感じたりした場合は、両者の間を調整し、プロジェクトがスムーズに進捗するよう常に留意しなければならないだろう。
ヒアリングの前に考えること
ERP導入フェーズは、コンサルタントによる会社側メンバーへのヒアリングからスタートするのが通常である。ヒアリングに出席するユーザー部門のメンバーは、現行業務を中心に、聞かれたことを話すことになる。逆に言えば、聞かれなかったとは話さないのである。筆者の経験では、当初のヒアリングで聞き漏らした事項が、後になってプロジェクトの進捗に重要な影響を及ぼすことが度々ある。そんなとき、「どうしてそんな重要なこと教えてくれなかったのか?」と尋ねると、「聞かれなかったら」といった回答が多い。
もちろん、コンサルタントはヒアリングに漏れがないよう十分な準備をするし、経験のあるコンサルタントであれば、隠れた要求を聞き出す能力を持っているであろう。しかし、現実としてヒアリングの聞き漏れは発生する。筆者は、コンサルタントの能力に期待する以前に、会社が主導権を取って現状の会社の取引や業務の内容を徹底的にコンサルタントに教え込むという姿勢で臨むべきと考える。
会社が「ERPで何を実現するか?」を明確にイメージできていれば、最初にコンサルタントに何を伝えるべきか、自ずと明確になるはずである。また、プロジェクトの初めに計画的にコンサルタントに情報を教え込む方が、伝えるべきことが的確に伝わり、その結果、後工程での手戻りを防止できる。コンサルタントからのヒアリングは、その後に始まることになる。
よく、ユーザー部門から「あのコンサルタントは当社の業務を分かっていないから信頼できない」「業界の商慣習を知らないから話が通じない」という発言が出ることがある。「分かっていない」と考えないで、「分からせる」という姿勢でコンサルタントとは付き合うとよいだろう。さまざまな業種・業態・規模の会社で経験を積んだコンサルタントであれば、会社側が自社の取引や業務の内容を的確に伝えれば、迅速に理解するはずである。
リスク情報を共有せよ
プロジェクトはどこに落とし穴があるか分からない。しかし、経験のあるコンサルタントは、そういった落とし穴の場所や現れる時期をよく知っている。なぜなら、経験のあるコンサルタントは多くの成功体験もあるが、同時に多くの失敗も体験しているからだ。多くの失敗を経験したコンサルタントほど、潜在的なリスクを察知する能力が高いといってよい。極端なことを言えば、コンサルタントを雇うということは、こういった経験を買うことである。
会社側メンバーは、コンサルタントが経験的な能力から認識しているプロジェクト進行にかかわるリスク情報を、できるだけ共有するよう努めるべきである。具体的には「要件定義はこのペースでよいのか?」「営業部門の要求分析が甘いと思うけど大丈夫か?」など、遠慮せずにどんどんとコンサルタントに質問するとよい。経験のあるコンサルタントであれば、プロジェクトに潜むリスクを絶えず意識しているので、「自分もこの先、行き詰まると感じている。打ち合わせをしましょう」「今の段階ではこれで十分と考えている」など、的確な返答があるはずである。場合によっては、会社側とコンサルタントで大きな認識のずれが発覚するかもしれない。いずれにしても、もやもやした思いを抱きながらプロジェクトを進めるのはよくない。
コンサルタントを最大限に利用する
筆者は、駆け出しのコンサルタントのころ、先輩コンサルタントにプロジェクト成功の秘訣を尋ねたことがある。そうしたら、こんな答えが返ってきた。
「まずは、会社の人と仲良くなっちゃうことだよ」
これは、少なくとも筆者にとっては至言であった。その後、コンサルタントとしてプロジェクトに参画するときは、いつもこの言葉を思い出していた気がする。やはり、会社側のプロジェクトメンバーと良好な関係を築くことは、プロジェクトの円滑な進行の基礎になる。このことは、会社側からも同じことがいえるだろう。コンサルタントと良好な関係を築くことが、成功の第一歩といっていい。過度な緊張関係の中で進んだプロジェクトからは、結果として満足した成果が生まれないことが多いからである。
会社側と良好な関係を築くこと自体もコンサルタントのスキルではあるが、ERP導入の推進役であるIT部門としても、コンサルタントと良い関係を築き、気持ちよくコンサルティング料金以上の仕事をしてもらう方が得と考えたい。ぜひ、コンサルタントというレバレッジを最大限に効かせて、大きな改革を成し遂げてほしい。
次回は、コストを意識したERP導入について説明する。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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