SMBのためのサーバ仮想化導入のポイント【第2回】
サーバ仮想化導入の肝、失敗しないサイジングとP2V
無計画なサーバ仮想化の導入は、後々のリソース不足やオーバースペックによる過剰投資を招く。本稿ではSMBがサーバ仮想化で失敗しないための3つのプロセスから、既存環境の現状分析と移行作業のポイントを解説する。
無理・無駄を省くサーバ仮想化のPDC(Plan、Do、Check)
一昔前まではサーバ仮想化は難しいもの、ハードルが高いものとして中堅・中小企業(SMB)では敬遠されがちであったが、今やあまたの仮想化ベンダーがサーバ仮想化を実装するためのハイパーバイザーを無償提供するようになり、個人ですら自宅でサーバ仮想化を導入できるほど、身近で簡単なものとなった。
しかし、個人環境で使用する場合はさほど気にせずともよいが、第1回の記事「クラウド時代に中堅・中小企業がサーバを仮想化する7つのメリット」でも紹介した通り、SMBがサーバ仮想化を導入する際には、マイグレーションの容易性や可用性の向上など、仮想化ソフトウェア特有の付加価値機能が往々にして求められる。それらの適切な現状分析・将来像設計を怠り、無計画にサーバ仮想化導入を推し進めると、たちまちメモリやHDDなどのリソース不足に陥ったり、逆にCPUの稼働率が低いなどの過剰投資が後々露呈することになりかねない。
そこで本稿では、サーバ仮想化前の既存環境の分析から始まり、導入中の移行作業、移行後の監視・バックアップ運用に至るまで、一連のPDC(Plan、Do、Check)のポイントとなるプロセスについて解説する。
プロセス(1)Plan:既存環境の現状分析「アセスメント」
多くのSMBでは、登記したての新興企業でもない限り、既に物理サーバによる既存環境で複数のアプリケーションが稼働中であろう。それらを無理なく無駄なく、最小限の投資コストに抑えたサーバ仮想化環境に移行することが、SMBの情報システム部門には求められる。
まず、ハイパーバイザーを導入するハードウェアのサイジングを行う際には、既存物理サーバ環境(ハードウェア、OS、アプリケーション)のうち、仮想化には向かない、または移植のできないものを除外する。例えば特殊なハードウェアデバイスを持ったサーバや、仮想化ソフトウェア側で対応していない古いOSなどである。次に、仮想化移行対象サーバを洗い出したら、それらのインベントリ情報を整理する。すなわち、CPU/クロック数、メモリ量、ネットワークポート数、HDDサイズの4大リソースである。
多くのSMBは、このインベントリ情報の単純な「足し算」だけで、おおよそのサイジングを行おうとする。例えば、2CPUの現行Webサーバでは、8コアの仮想化環境で4台分集約できると考える(参考:1つのCPUコアで運用可能な仮想デスクトップ数は?)。だが、これが過剰投資の原因であり、SMBが仮想化の導入に二の足を踏むことにつながる。無駄のないサイジングを行うためには、パフォーマンス情報の収集と分析が重要なカギとなる。
一般的に、大多数の現行物理サーバはCPUの平均使用率が低い。サーバ仮想化環境においては「遊んでいる」CPUの共有こそが、高い集約率を実現し、コストメリットの享受につながる。1個のCPUを複数の処理で共有する考え方は、近年のサーバ仮想化テクノロジー独自のものと思われがちであるが、かつてのホストコンピュータ時代でもTSS(Time Sharing System)として実装されていた技術の後継である。
特にヴイエムウェアのVMware vSphereでは、透過的なメモリのシェアリング(参考:Hyper-VとVMwareのメモリ管理の違い)や、かつては高価なストレージのみで利用できたシンプロビジョニング技術をエントリーモデルのストレージでも実装可能としており、さまざまなリソースのオーバーコミットが可能であるので、高い集約率が期待できる。
机上で各種リソースのオーバーコミットをサイジングする際には、現在の使用率の平均値を用いてアグレッシブに算出するか、最大値でコンサバティブに算出するか悩みどころであろう。例えば、「朝に忙しいサーバ」と「夜に忙しいサーバ」や、「CPU負荷は高いがメモリ消費は少量なサーバ」と「CPU負荷は低いがメモリを大量消費するサーバ」などのペアは、仮想化して同一筐体内に格納するのが望ましいが、それらの組み合わせを1台1台机上サイジングするのは、かなりの労力だ。
机上サイジングに行き詰ったら、システムインテグレーター(SIer)にアセスメントのコンサルティングを依頼してみるとよい。測定ツールを用いて、無理や無駄のない正確なサーバ仮想化サイジングをしてくれる。
プロセス(2)Do:現行物理サーバの移行作業「P2V」
適切なサイジングを施し、サーバ仮想化環境を構築できたら、次に現行物理サーバを仮想化環境へ移行する流れとなる。もちろん、仮想マシンを新規に作成してOSをクリーンインストールし、現行物理サーバからアプリケーションとデータを簡単に移植できるのであれば何ら問題はない。だが多くのアプリケーションサーバやデータベースサーバは、導入時に構築された初期状態から、長年使用しているうちに次々と設定情報が変更されていることがある。それらを新環境でトレースするのは非常に困難だ。
このような場合は、仮想化ベンダーやサードベンダーから提供されているP2V(Physical to Virtual)ツールと呼ばれる移行ツールを用いると効率的である。一昔前まではP2Vは移行に失敗する確率が高いと思われていたが、最近のツールは多数のハードウェアベンダーのデバイスドライバに対応しており、P2V移行の成功率は高まっている。
例えば、ヴイエムウェアのP2Vツールである「VMware vCenter Converter」には、Converter Standaloneという無償版も提供されており、誰でも自由にダウンロードして使用することができる。SMBがP2Vの移行試験を行うには、うってつけのツールであろう。
当社、日商エレクトロニクスでも、VMware vCenter管理サーバに付属の商用版VMware Converter Enterpriseを用いたP2V移行サービスを提供している。本稿読者には特別に、そのノウハウの一端を開陳しよう。
まず、移行対象サーバのアプリケーション稼働についてエンドユーザーとの入念な認識合わせが重要である。夜間や休日にサービスを停止してよいのか、それともノンストップ運用で調整が必要なのか。サービス停止は何時間以内に収める必要があるかなどの要件を詰め、P2V移行作業のスケジュールを策定する。
P2V移行スケジュールは、必ず試験移行と本番移行との2回を計画し、両者の期間を最低限1週間以上空けて、並行運用期間を設けるようにする。これはサーバ仮想化後、すぐに本番運用に入ると、もしも後日予期せぬ障害が発生した場合に、取り返しがつかなくなるというリスクを避けるためである。
並行運用中は、旧物理サーバ環境をプライマリ本番機とし、仮想化環境をセカンダリ試験対象機とする。P2Vツールによる移行では、対象サーバのホスト名やIPアドレスも透過的に引き継いでしまうため、試験環境での運用には工夫が必要である。さもないと、本番系の同一ネットワークセグメントに、同じホスト名・IPアドレスのサーバが2台登場することになり、衝突が発生してしまう。
仮想化された試験対象機は、もしも本番運用後にホスト名・IPアドレスを変更する予定なのであれば、並行試験の時点ですぐに変更し、既存サーバとは別のものとする。そして、エンドユーザーに試験機へテストデータを入力してもらい、本番機と同様に問題なくアプリケーションが稼働していることを確認してもらう。
仮想化後も同じホスト名・IPアドレスを使い続ける場合は、仮想化環境のネットワークを再度割り当てて、本番と同じセグメント体系ではあるが独立したクローズドな仮想ネットワーク環境にする。その環境内にエンドユーザーが使用することを想定したクライアント仮想マシンを作成し、それを踏み台としてアプリケーションの動作確認を行ってもらう。
本番P2V時は、既に試験P2Vが「リハーサル」として成功しているので、スムーズな移行が可能となる。
次回予告
今回はSMBが無理・無駄のないサーバ仮想化を実現するためのPDC(Plan、Do、Check)のうち、前編として、Plan(移行前のアセスメント)、Do(移行中のP2V)について解説した。次回はCheck(移行後の監視とバックアップ)について解説する。高価な監視やバックアップソフトを購入せずとも、サーバ仮想化ソフトウェアの標準機能を利用する、SMBにおけるコストを抑えた運用の実践方法について解説したい。
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SMBのためのサーバ仮想化導入のポイント
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