クラウドERP製品カタログ【第5回】インフォコム
“機能全部入り”でERPの本流を追求する「GRANDIT for Cloud」
新興のERPである「GRANDIT」は最新の技術トレンドを盛り込んでいるのが特徴。クラウドERPの展開でもその先進性をユーザーに提供し、ERPの本来の価値である統合性を追求している。
2004年に初代バージョンがリリースされた国産ERPパッケージ製品「GRANDIT」は、国内ERPパッケージ市場で最後発の存在でありながらも、短期間に高いシェアを占めるようになった異色の製品である。ミック経済研究所の調査「基幹業務パッケージソフトの市場展望 2009年度版」によると、2009年度の中堅企業(年商50億円~500億円)向けERP・業務パッケージ出荷ライセンスのシェアにおいて、同製品は既に第3位を占めている(参考記事:国産最後発「GRANDIT」が目指す「ERPのあるべき姿」)。
GRANDITの開発は、大変ユニークな体制で行われている。同製品の開発やバージョンアップ、機能強化などは、ある特定のベンダー1社によってではなく、13社のベンダーが集結した「GRANDITコンソーシアム」によって共同で行われているのだ。同コンソーシアムはインフォコムの呼び掛けで設立されたものだが、同社はコンソーシアムの発足後はあくまでも参加企業の中の1社として、他の12社と共同でGRANDITの開発やソリューション提供に取り組んでいる。
クラウドと親和性が高いERP
そのインフォコムが2010年5月に提供を始めたのが、GRANDITの機能をクラウドサービスとして提供する「GRANDIT for Cloud」である。同社でGRANDIT for Cloudのビジネスを手掛ける製品・サービス事業本部 GRANDIT事業部 営業グループ 主査 今福 浩氏によれば、GRANDITはもともとクラウドコンピューティングと非常に親和性が高い製品だったという。
「GRANDITは後発製品であるが故に、旧製品との互換性を考慮する必要がなく、よって完全にピュアなWebアプリケーションのアーキテクチャが採用されている。クライアント端末側はブラウザさえあればよく、プログラムをインストールする必要は一切ない。こうした点は、クラウドに対応する上では大きなアドバンテージだと考えている」(今福氏)
また、提供するサービスの幅や内容についても、GRANDIT for Cloudは他のクラウドERPとは異なる独自のスタンスを取っている。今日見られるクラウドERPの幾つかは、とにかく初期導入コストや運用コストが劇的に安くなることを前面に打ち出している。ただしその代わり、機能面ではオンプレミスのERPパッケージ製品に比べると、どうしても大幅に制限されることが多いようだ。
GRANDIT for Cloudはこのような他のクラウドERPとは少々異なるアプローチだ。
「もともとGRANDITは、現場の業務効率化のための業務パッケージというよりは、企業のあらゆる基幹業務を統合することで経営改善を実現するという、ERPの本来の目的を追求した製品。従ってそのクラウド版であるGRANDIT for Cloudも、業務モジュールの機能をばらばらに提供するのではなく、複数のモジュールを統合した形を基本に提供している。あくまでも、GRANDITのERPソリューションに新しい提供形態が1つ加わった、と考えてほしい」(今福氏)
事実、GRANDIT for Cloudはオンプレミス版のGRANDITと全く同じ機能を提供している。クラウド型だからといって、パッケージが本来持っている機能が制限されるということはない。また業務モジュールも、「販売」「調達・在庫」「債権」「債務」「経理」「経費」の6つがセットになった形で提供される。さらには、オンプレミス版に備わっているBI(ビジネスインテリジェンス)やワークフロー、EDIといった周辺機能も同様に提供される。
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特定業種向けテンプレートを提供
GRANDIT for Cloudは、ユーザー企業に対してそれぞれ専用の仮想サーバ環境を提供し、その上でユーザー専用のGRANDITのインスタンスを動作させる。いわゆる、「シングルテナント型」と呼ばれる形態だ。この方式は、複数のユーザーが1つの環境に同居するマルチテナント型と比べ、アプリケーションの設定やカスタマイズを柔軟に行うことができるのが特徴である。事実、GRANDIT for Cloudも、ある程度の範囲であればカスタマイズが可能になっている。しかしインフォコムでは、顧客の要件によって大幅なカスタマイズが避けられない場合には、クラウド型ではなくオンプレミス型を勧めるという。
「カスタマイズに掛かるコストや時間が膨れ上がってしまうと、短期間・低コストというクラウド型のメリットが薄れてしまう。従って、顧客にオンプレミス型かクラウド型のどちらを勧めるかは、パッケージの仕様に業務をどこまで合わせてもらえるかによって判断している。具体的には、カスタマイズの工数を5人月程度以下に抑えられるようであれば、クラウド型をお勧めしている」(今福氏)
また、カスタマイズの工数をより抑えることができるよう、業種別のテンプレートも提供される。これは、商社、卸売、サービス、情報通信の各業界向けにインフォコムが開発したアドオンプログラムで、テンプレートをうまく活用することでカスタマイズの工数を減らし、クラウドERPのメリットをより引き出せるようになるという。
逆にいうと、これらのテンプレートがカバーしていない業界向けには、GRANDIT for Cloudは提供されない。
「オンプレミス版のGRANDITは業種を問わず導入されているが、クラウド版に関してはテンプレートの活用でクラウドのメリットが生かせる商社、卸、サービス、情報通信の4つの業種にターゲットを絞っている」(今福氏)
またインフォコムでは、GRANDIT for Cloudが実際にどの程度、企業の業務にフィットするかをユーザー側で事前に評価できる無償トライアルも実施している。このトライアルの結果、カスタマイズを最小限に抑制できることが分かった時点で初めて、GRANDIT for Cloudの採用をユーザーに勧めるという。
さらに導入に際しては、インフラの設定やカスタマイズの設計・開発、さらにはユーザー教育や運用テストなど一連のシステム構築(SI)サービスがインフォコムから提供される。こうしたSIサービスは、オンプレミス版の場合は通常、要件定義から始まって基本設計、詳細設計と続き、稼働まで平均して約1年間はかかるのが通常だという。しかしGRANDIT for Cloudでは、これを一気に5カ月間にまで短縮した「短期導入モデル」が適用される。
「業務要件に合わせてパッケージをカスタマイズするのではなく、ある程度業務をパッケージ仕様に合わせられることが前提になっている。そのため要件定義はほとんど行わずにフィッティングのための設計作業からスタートする。これによって導入作業全体にかかる時間を大幅に短縮できる」(今福氏)
低価格が売りのSaaSとは一線を画す
なお、GRANDIT for Cloudのクラウド基盤としては、インフォコムが運営するデータセンターか、もしくは日本ユニシスが提供するクラウドサービス「U-Cloud」のいずれかを選択できる。これらの基盤上で、GRANDITの本番環境が稼働する仮想サーバと、テスト・検証環境用の仮想サーバの2つのサーバ環境をユーザーに対して提供する。
この仮想サーバの上に、それぞれWindows Server 2008とSQL Server 2008がセットアップされ、これにネットワーク環境とリモート保守環境、監視サービス、ウイルス対策サービスがセットになったPaaS(Platform as a Service)環境が構成される。そしてPaaSの上に、GRANDITが稼働するSaaS環境が構築されるという仕組みだ。ユーザーはこれらクラウド環境一式を、月額料金で利用する。
なお価格はユーザー数ではなく、ユーザー企業の従業員数により変動する。オンプレミス版のGRANDITと同じく従業員数100人の単位で価格帯が分かれているが、一例を挙げると300人の場合には月額78万円(税別)からとなっている。これが従業員200人、あるいは100人の場合には、前出の仮想サーバのスペックも低くなり、その分料金も安価になる。またソフトウェアのバージョンアップに際しては、追加費用は発生しない。月額料金を払っていれば、いつでも最新バージョンのGRANDITの機能を利用できる。
インフォコムの試算によれば、GRANDIT for Cloudのこうした価格体系は、オンプレミス版のGRANDITのライセンスを買い取って毎年保守費用を払い続ける場合と比べて、5年間の運用で半額程度までライセンス、保守関連コストを削減できるという。
またGRANDIT for Cloudを導入する際には、月額料金とは別に、初期導入作業に掛かるSI費用が発生する。その価格は2000万円からとなっているが、これはシステムの規模ではなく、むしろユーザー企業の要件の内容によって変動するという。この費用の中には、設計、カスタマイズ開発・テスト、インフラ設定、データ移行、教育、運用テスト、本番稼働支援といった一連のSI作業が全て含まれる。特にデータ移行が含まれる点はユーザーにとって大きなメリットだと今福氏は言う。
「他製品の中には、導入サービスの中にデータ移行作業を含めずに、別途費用を請求するものもあるが、実際にはデータ移行作業が全く発生しないERP導入プロジェクトはあり得ない。従ってわれわれは、初めからその作業を含めた上でSI費用を提示している」(今福氏)
GRANDIT for Cloudのこうしたサービス提供形態を、インフォコムでは「プライベートクラウド型」と呼ぶ。恐らくは、限定された機能を極めて安価な料金で提供する「パブリッククラウド型」のサービスとの差別化を意識してのことなのだろう。今福氏も、次のように述べる。
「SaaSやクラウドと聞くと、『とにかく安く済む』という先入観を持つ企業が多い。事実、会計や人事・給与の機能だけを、月額数千円程度で提供する安価なサービスも既に多数ある。しかし、われわれがGRANDIT for Cloudで提供するのはそうしたものではなく、あくまでもGRANDITがもともと持つ本格的な統合ERPとしての機能。ERPで基幹業務の統合を果たしつつ、同時にシステムの運用を外部に委ねることによるクラウドのメリットも追求したいというニーズを持つ企業をターゲットにしている。われわれとしては、ユーザーのさまざまなニーズに応じて、オンプレミス型/クラウド型のどちらの形態でも、GRANDITのERPとしての優れた機能を提供できるのが強みだと考えている」
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