クラウドERP製品カタログ【第4回】NEC
老舗ERPがSaaSに、「EXPLANNER for SaaS」の新しさとは
中堅企業向けERPとして広く使われている「EXPLANNER」のSaaS版は単にアプリケーションをネットワーク経由で利用させるだけの製品ではなかった。企業のニーズを満たすその機能とは。
長い実績を持つERPのSaaS版
「EXPLANNER for SaaS」は、NEC(日本電気)が2010年にサービス提供を始めたSaaS(Software as a Service)型のERPソリューションである。もともと同社は、既に35年の歴史と2万本以上の出荷実績を持つ「EXPLANNER」というERPパッケージ製品を持っており、EXPLANNER for SaaSはその機能をそのままSaaSで提供するものである。
現在、各ベンダーから提供されているクラウドERPの多くは、低価格と導入の容易さをうたう半面、機能やカスタマイズ性に関してはオンプレミス型のパッケージ製品と比べると大幅に制限されていることが多い。しかし、EXPLANNER for SaaSはこうしたソリューションとは若干性格を異にする。
もちろん、SaaSならではの低コスト、簡単運用といったメリットはしっかり備えている。サーバなどのハードウェアが不要なため、オンプレミス型のパッケージ製品と比べると初期導入コストを大幅に抑えることができる。また、法改正対応や修正パッチ適用などのマイナーバージョンアップを含めた保守・運用管理作業の全てがNECのデータセンターで行われるため、ユーザーに掛かる運用管理コストの負担は大幅に軽減される。またEXPLANNER for SaaSではサービス利用の停止も好きなタイミングで行うことができる(利用停止日の60日前までに通告する必要あり)ため、利用者数の増減にも柔軟に対応できるようになっている。
独自要件を持つ業務もSaaS上に展開可能
しかしEXPLANNER for SaaSの最大の特徴は、上述のような運用効率化の効果以外の、「プラスアルファ」の部分にこそある。例えば、SaaSでありながらも、さまざまな業務領域や利用形態に対応できる点もその1つだ。EXPLANNER for SaaSでは会計、債権・債務、人事、給与といった、業種・業態による業務内容の差異が少ない共通業務だけでなく、生産や販売など他社との差異化戦略が必要な業務、いわば「差異化業務」に関してもSaaSのサービスを提供している。
■EXPLANNER for SaaSが提供するサービス
| 業務カテゴリ | サービス |
|---|---|
| 共通業務 | ・会計 ・人事 ・給与 ・債権 ・債務 |
| 差異化業務 | ・生産 ・販売 |
| オペレーション領域 | ・ワークフロー |
前者の共通業務については既に他社からも幾つかSaaSのソリューションが提供されているが、後者の差異化業務をSaaSで提供するソリューションはまだ数少ない。生産や販売などの業務は、各社固有の業務モデルがそのまま他社との差別化要因になる領域である。そのため、一般的には既存の業務モデルにマッチしたシステムをスクラッチ開発するか、もしくはERPパッケージを大幅にカスタマイズして対応することがほとんどであり、SaaSやクラウドでのシステム提供は困難とされてきた。
そこでEXPLANNER for SaaSでは、サービスの利用形態を大きく2つに分けることで、この両方の業務領域に対応している。1つは「共通環境」と呼ばれるもので、同一のプラットフォーム上で複数の企業がサービスを利用する形態である。異なるユーザー同士で同じプラットフォームを共有するため、各社固有のカスタマイズには対応できないが、その代わりオンプレミス型システムと比べ、極めて安価にアプリケーションの機能を利用できる。また、アドオンによる独自機能の追加も、ある程度の範囲までは可能になっている。
もう1つの形態が「プライベートSaaS環境」と呼ばれるもので、各ユーザー企業専用の環境をデータセンター上に割り当てる。この場合、カスタマイズやアドオンは基本的に自由に行うことができるため、生産や販売などの差異化業務に関しても、自社の業務モデルに最適化した形のシステムをSaaSとして実現できる。
さらに、この両者を組み合わせたハイブリッド型の運用も可能だという。共通環境とプライベートSaaS環境は共にNECが運営する同じデータセンター内で運用されているので、両者をVLANでつないで相互に連携できるようになっているのだ。NEC 製造・装置業ソリューション事業本部 EXPLANNER部 マネジャー 石渡通弘氏は、次のように説明する。
「実際、会計と販売のシステムを一緒にSaaSで提供してほしいといった要望を顧客から受けることが多いが、その場合には例えば、会計は共通環境上でコストを抑えた形で運用し、一方の販売はプライベートSaaS環境上で自社に最適化したものを載せ、その上で互いに連携させながら運用するようなことが可能だ。こうしたハイブリッドな運用が可能な点は、EXPLANNER for SaaSの大きな強みだと考えている」
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グループ経営管理の観点から導入を検討
このように、SaaSによる運用効率化やコスト削減といったメリットを享受しつつも、同時に自社の独自色も基幹システムに反映させていきたいという、2つのニーズを持つ企業にとって、EXPLANNER for SaaSはうまくマッチするソリューションだ。また、事業規模が急速に拡大している新興企業にとっても、将来的なシステム拡張の伸びしろを確保しておく上で、EXPLANNER for SaaSは検討可能なソリューションになりそうだ。事実、同製品を導入した企業の規模は、年商数十億円規模の新興ベンチャー企業から、上は年商1000億円以上の上場企業まで、実に幅広いという。
「実際の商談では、『ごくシンプルな機能構成を、とにかく安く提供します』というSaaSソリューションとコンペになることもあるが、EXPLANNER for SaaSはそうした製品とはコンセプトが異なるため、正面切って戦うつもりはない。また、海外ベンダーの中にはEXPLANNER for SaaSと似たようなコンセプトのサービスを提供しているところもあるが、EXPLANNER for SaaSは日本国内の商習慣や法改正、あるいは日本企業特有の組織構成への対応といった点で、海外製品にはない強みと実績がある」(石渡氏)
また最近では、グループ企業での導入が増えてきているという。中堅規模のグループ企業では、基幹系システムを子会社独自の判断でばらばらに導入することが多い。しかしそれでは、子会社の業務の状況を本社がうかがい知ることができず、グループ全体としてガバナンスを効かせることが困難になってしまう。四半期や半期ごとの決算報告だけでは、親会社は各グループ会社の詳細な取引状況や、グループ全体の経営状況をリアルタイムに把握することができない。
従来、こうした課題を解決する手段としては、グループ全社で同じERPパッケージ製品を一斉にビッグバン導入する方法が取られていたが、非常にコストが掛かり、またシステム構築のリスクも高いことが欠点だった。そこで、親会社の既存システムには手を加えることなく、子会社群の会計システムを効率的にまとめ上げるための受け皿として、EXPLANNER for SaaSのようなSaaSのソリューションに目を向ける企業が増えているという。
さらに、2011年3月に発生した東日本大震災以降は、事業継続や災害対策の観点からSaaSの導入を検討する企業が増えてきているという(参考記事:パブリッククラウドは災害対策で役に立つのか? AWSとGIOも検証)。
「少し前までは、自社の会計データを外部のデータセンターに託すことに対してセキュリティ上の懸念を示す企業が多かったが、震災以後はむしろ逆に、信頼性の高い外部のデータセンターに保管した方が自社内で持つより安全ではないかと考える企業が多い。事実、そうした観点からEXPLANNER for SaaSについて問い合わせてくる企業が目に見えて増えてきている」(石渡氏)
ちなみに、EXPLANNER for SaaSは関東地域にあるNECのデータセンターで運用されているが、東日本大震災の当日もサービス提供は一度も途切れることがなかったという。「データセンターの建屋に備わっている免震装置が有効に機能したため、データセンター内の職員の中には、地震があったことに気付かなかった者もいたと聞いている」(石渡氏)
運用の大幅見直しを検討するユーザーも
EXPLANNER for SaaSのベースになっているオンプレミス版製品、EXPLANNERは、独自の開発ツールによるカスタマイズ機能がそのウリの1つだが、これを使ってカスタマイズを施したオンプレミスのシステムをSaaS環境に移行するのは、やはりそう簡単ではないのが実情だという。NECでは、そうした要望をユーザー企業から受けた場合、2つの選択肢を用意しているという。
1つは、ユーザーが現状のシステム運用の形を変えたくない場合に取る手段で、純粋なSaaSではなくホスティングやハウジングの環境へ現行システムをそのまま移行するというものだ。そしてもう1つが、現状の運用のやり方を変えた上で、SaaSへ移行するという方法だ。
一般的に現場の声が強い日本企業では、ERPパッケージを導入する際にも業務をパッケージの仕様に合わせるのではなく、パッケージの方を業務に合わせてカスタマイズする方法が取られてきた。そのため、業務のやり方を変えてでもSaaSへ移行したいと考える企業はそう多くないと思われがちだが、最近では状況が変わりつつあると石渡氏は言う。
「作り込んだカスタマイズ機能が陳腐化して使われなくなっていたり、あるいはメンテナンスできる人員がいなくなって放置されていたりと、古いシステムを負の遺産として抱え込んでいる企業が少なくない。そうした企業に、『これを機に思い切って運用を見直して、シンプルなSaaSを使い倒す方向に転換しませんか?』と提案すると、意外と乗ってきてもらえることが多い。よくよく考えてみれば、そちらの方がERPパッケージの本来あるべき使い方だし、今後は各企業とも徐々にそういう方向にシフトしていくのではないかと思う」
EXPLANNER for SaaSのライセンス費用は、会計、人事、債権・債務を3ユーザーで利用する場合で月額14万円(税別)となっている(これに給与が加わると15万円)。またユーザーの追加は、1ユーザー当たり月額9000円(税別)。
初期導入時には、NECが導入のコンサルティングやシステムの初期設定作業を実施するが、これには別途費用が掛かる。その価格は導入するモジュールの数や適用業務の範囲によって異なるが、最小構成時で150万円(税別)からとなっている。
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